第12話
安藤花さん、夢野桃さん、七瀬奈々さんの美少女ギャル達とテスト勉強会を開始してから、三日が経った。
失礼だとは分かるけど、三人はお馬鹿である。けれど、教えているうちに気づいたことがある。それは、意外にも吸収力があるということだった。勉強が出来ない人の中には、“何がわからないのかわからない”人も結構いたりする。どんなに丁寧に教えても、なんで答えがそうなるのかがわからないと頭を抱えてしまう人もいる。その所為で、勉強をやりたくなくなってしまうのだ。
今のところ、この三人にはその現象が起きていない。教えたら、ちゃんと理解している。その場凌ぎではなく、次の日にもしっかり覚えて活用していた。多分勉強が嫌いなだけで、元々のスペックはそこまで悪くないのだろう。自分だけでは理解できないけど、ちゃんと教える人がいればそこそこは出来るのだ。
少し困ったことがあるとすれば、勉強に飽きてしまった安藤さん達が、突然僕をイジってくることだ。そのイジり方も悪質で、ちょいエロな感じでからかってくる。元気になったマイサンを指して、ギャハハハと腹を抱えて笑っているのだ。多分、彼女達的にはいい気分転換になっているのだろう。
だがしかし。
陰キャオタクの僕にも、男のプライドというものがある。
いつまでも女性に下ネタでイジられ続けるのも、すごく悔しいのだ。なので言い返そうとするのだが、屈強なギャルに陰キャオタクが勝てる訳がない。秒殺されてしまった。
余りにも悔しいので、僕は夜な夜な彼女達を妄想しながらオナニーをしていた。ここ三日間でやり過ぎたのか、身体が重怠かった。
「うっしゃ、今日もやりますか」
「早くテスト終わらなかな~」
「よろしく」
放課後になり、クラスメイトが帰宅する中。僕達は机を合わせてテーブルを作る。
さあ始めようかという所で、不意に声をかけられた。
「ちょっといいかな」
聞くだけで爽やかな気分に浸れる透き通った声の主は、学級委員長の園原唯さんだった。
(園原さん――な、なんで!?)
予想外のキャラの登場に、僕は目をかっぴらいて驚愕する。
園原唯さん。清廉潔白の四字熟語を人化させたような人物で、僕が密かに好意を抱いていた人。しかしその実態は、清廉潔白どころか腹黒ビッチだったのだ。
少し前。階段から落ちた園原さんを助けた時、僕の顔は偶然彼女のお尻に埋もれた。そこでお問題が起きたのは、園原さんがノーパンだったことだ。その日の放課後に呼び出され、自分は痴女であると暴露してきて、僕にのしかかってきた上に、これからは私の奴隷ねと宣言してきたヤバい人。
その日から園原さんを極力避け、彼女も僕に接触してこなかったので、もうどうでもいい存在になったのだろうと安心しきっていた。
そう思っていたのに、まさか今になって仕掛けてくるなんて……。彼女は一体どんなことを企んでいるのだろうかと、内心戦々恐々としていた。
「委員長じゃん、どしたん?」
「安藤さん達が頑張って勉強しているのを見てて、何か力になれないかなって。ほら、教える人が黒崎君だけだと大変そうだし、手も足りないんじゃないかなって」
「委員長めっちゃイカしてんじゃん。んーでもー、それじゃあ委員長に悪くない?」
「モモはどっちでもいいよ~」
「私はいいと思う。委員長、絶対勉強できそうだし」
安藤さん達がそれぞれ口にする中、園原さんは僕に顔を向けて尋ねてくる。
「黒崎君は……どうかな?」
「ぼ、僕は……」
「……」
(ふええええええ、圧が、圧が凄いよぉぉぉぉ!!!)
園原さんから、目に見えない圧力を感じてしまう。「断るったらどうなるかわかるよね?」という台詞が聞こえてくるようだった。
僕は目線を合わせないようにして、声を震わせながら答える。
「い、いいんじゃ、ないかな」
「ありがとう!黒崎君ならそう言ってくれると思ってた」
(アンタが言わせたんだろーがーーー!!)
胸中で叫んでいる間に、園原さんは自分の机を持ってきて安藤さんと夢野さんの机に合体する。確かに、これなら教える人が分散されて効率が上がるだろう。
「よし、やるか」
安藤さんの言葉によって、今日の勉強会が開始されたのだった。
カリカリ、カキカキ、シャッシャ。シャーペンやマーカーペン、消しゴムに音が静かな教室に鳴り響く。委員長の園原さんがいるからか、今日の三ギャルは僕に悪戯をすることなく真面目に勉強をしている。分からないところは園原さんも教えるから、僕だけのこれまでよりもかなり捗っていた。
そんな時、不意に僕のスマホがブーと振動する。
(ライン?誰からだ?)
画面をタッチすると、ラインの通知が来ていた。パスワードを解いて確認すると、『ギャルに囲まれてさぞ楽しんでるでしょう、童貞君』とメッセージが送られてきている。宛名は、園原唯と書かれていた。
(~~~~~~~ッッ!!??)
咄嗟に、園原さんを見やる。彼女は普段通りの表情で、問題を解いていた。
こわいこわいこわいこわいこわい。
なんで……園原さんが僕のラインIDを知っているんだ?僕は彼女とラインを交換した覚えがないぞ。誰かから聞いたのか?いや、僕は未だに誰ともラインを交換していない。だって陰キャぼっちの僕は、未だに一人も友達がいないからだ。
ならどうやって入手したんだろうか。まさか、僕のスマホを直接触ったのか?
あり得ない。確かに移動教室や体育とかでスマホを教室に置いておくことはあるだろう。けど、僕はしっかりパスワードをかけている。
(まさか、パスワードも知っているのか?)
そんな……馬鹿な……。いくら園原さんがクレイジーサイコビッチだとしても、そんな事が出来てしまうのか?
動揺していると、再びスマホが振動する。
『今から私の言うことを聞きなさい、奴隷犬。スマホは手に持っていること』
(ぎょええええええええ!!)
そんな恐ろしいメッセージを見て恐怖に陥っていると、突然園原さんが申し訳なさそうに口を開いた。
「ごめん黒崎君、黒崎君の机の下あたりに消しゴムが転がっちゃった。取ってくれる?」
「う、うん……」
言われた通りに机の下に潜って消しゴムを探すと、足の部分に落ちていた。消しゴムを発見した僕が拾おうとしたその時、またもやスマホが鳴る。園原さんからのラインだ。その場でメッセージを確認すると、『そのままこっちを向きなさい』と書いてる。
僕は言われた通りに、園原さんの方向に視線を向けた。
「――ッッ!!!???」
喉から出そうになった絶叫をなんとかこらえる。
園原さんは足を大きく開き、スカートをややたくし上げていた。そうなるとどうなるのかというと、どうしてもスカートの奥が見えてしまう。
普通だったら、真っ先に目にするのはパンツであろう。
ただ、彼女は今日もパンツを履いていなかった。綺麗な肌が見える。最奥までは暗くでギリギリ見えなかったけど、ノーパンであることははっきりわかった。
この人頭おかしいんじゃない!?わざわざ自分の見せようとする!?
マジでクレイジーサイコビッチやん。
呆れつつ驚いていると、彼女は足を閉じてスカートを下ろしてしまう。
ドキドキしながら、僕は消しゴムを拾って椅子に座った。
「あった?」
「う、うん」
「ありがとう」
腕を伸ばして消しゴムを返すと、園原さんは笑顔でお礼を言ってくる。
本当に綺麗な笑顔だ。どこから見ても純粋無垢な笑顔だ。けど僕は知っている。この笑顔が、100%悪意に満ち溢れていることを。
ブーとスマホが振動する。
ラインのメッセージには、こう書かれていた。
『これからの二日間、楽しくなりそうね、ワンコ君』
(全然楽しくないよ……)
安藤さん達の下ネタイジりが終わったと思ったら、園原さんの道楽に付き合わせられるなんて……。
頭がおかしくなりそうで、夜しかオナニー出来ないよ。
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