第8話
突然だけど、女子校生ってなんであんなにスカートの丈を短くするのかな?
長いとダサいから?短いと可愛いから?
でも短くすればするだけ、デメリットが起きると思うんだ。簡単に言うと、おパンツが見えてしまう。
こうふとした時に、チラっと見えてしまう。もし見えたら「ラッキー!今日の僕はついてるぜ!!」と心の中で大はしゃぎするだろう。でも幸運なことって、本当にたまに起きるから幸運に感じるのであって、それがしょっちゅう重なると、どうでもいいやと感じるばかりか、ふと萎えてしまう。
つまりどういう事かというと、女子高校生の希少価値であるおパンツを見れたとしても、見慣れてしまえば何の感情も芽生えなくなってしまうのだ。
そんな悲しい結論を、僕は高校生一年生で学んでしまった。
「ねえ花、桃、あんたらさっきからずっとパンツ見えてるよ」
「え~マジ~?また黒崎の妄想のおかずにされちゃう感じ~?」
「うわ~最悪~モモのパンツが陰キャ君に見られちゃってる~」
「……はぁ」
「「なにその反応、なんか腹立つんですけど」」
目の前の席にいる七瀬さんが注意すると、右斜め前席にいる夢野さんと隣の席の安藤さんがニヤニヤしながら僕をイジろうとしてくる。しかし僕が全くの無反応だった為、二人は揃ってオコ気味になってしまった。
そんな彼女達に、僕は大賢者のように悟った顔つきで言葉を紡ぐ。
「人ってさ、ギリギリ手に届かないものに触れた時、達成感を感じたり感動を覚えるじゃない?貯めたお金で欲しい物を買った時や、何かの記録を自分で塗り替えたり、好きな人と付き合ったり。その過程が、一番わくわくしたりするものだと思うんだよね。ひらひらと舞うスカートの中身が見えそうで見えなかったり、そのじれったいところが乙だと思うんだよ」
「何が言いたいかはっきし言えし」
「モモ意味わかんな~い」
「こいつ、いつの間にか図太くなってきてるな……」
「要するに、安藤さんや夢野さんのパンツを見過ぎて、全然トキメかなくなっちゃったんだ」
「「むっかち~ん」」
真実を告げると、二人の顔が怒りを帯びる。そして七瀬さんは、若干引いていた。
だってしょうがないじゃないか。安藤さんと夢野さんは隙だらけで、一日の中でも偶然的に見えてしまう。「え?見せてんの?」って思うぐらいガードが緩い。それだけではなく、僕をイジるために「おらおらどうだー」と自分から見せてきたりもするのだ。
最初の内はそら~ドキドキしましたよ?女子高校生の生パンツなんて、僕の人生において見れることはないと思ってたし、それが二人のような超美少女なら尚更興奮したさ。正直に告白すれば、何度彼女達をおかずにしたか覚えてないぐらいお世話になっている。
けれど人間、美味しい物ばかり食べても直ぐに飽きてしまうように、希少価値の高いJKギャルパンツも見慣れてしまえば色のついた布でしかなくなってしまうのだ。
「陰キャの癖に生意気なこと言ってんじゃねーし」
「モモの可愛いパンツ見れて興奮しないとか~、陰キャ君もしかしてイーディーなんじゃな~い」
恐い顔して迫ってくる二人に、陰キャの僕は顔を俯かせる……こともなく、反撃を仕掛ける。
「男はパンツ見せておけばいいなんて時代は、もう終わったんだよ」
「「がーん……」」
そう告げると、二人は石化したように動かなくなってしまった。
勝った……勝ったぞ、勝ったんだ!!陰キャオタクの僕が、ついに美少女ギャル達に勝利したんだ!!
わーいわーい!やったぞー!!僕は初めて安藤さん達に勝ったんだー!!いえーいブイブイ!!
「このままじゃムカつくし。黒崎なんかに調子乗られるとかあたしのプライドが許さない。桃、ちょっと作戦会議しよ。奈々も来て」
「そうだね~陰キャ君如きに調子乗られるとか~モモの沽券に関わる問題だし~」
「はぁ、分かったよ」
安藤さんは二人を連れて、教室から出て行ってしまう。
作戦会議だって?大賢者になった僕は、いかなる手段を用いられても動揺しない自信がある。明鏡止水を体得したと言っても過言ではないのだ。
安藤さん達が戻ってくるまで、アニメのネットサーフィンでもしていようかな。
(なんか最近、女の子が主人公のアニメが多くなってる気がするんだよなー)
恋愛系やファンタジー系や転生系とかでも、女主人公のアニメが増えている気がする。全然構わないんだけどね。普通に面白いし、百合っぽい演出とか萌えるし。きっと、需要があるんだろう。でも僕としては、男主人公が熱いバトルを繰り広げる作品とかも増えて欲しいなーとは思う。
集中しながらそんな事を考えていると、いつの間にか戻ってきていた安藤さんに声をかけられた。
「どーよ黒崎、進化したあたし達は」
「ッッッ!!??」
自信に満ち溢れている安藤さんを一瞥して、大賢者の僕は一瞬でエロガッパに退化してしまった。
いや、動揺するなという方が無理な話だ。
安藤さんはスカートをいつもより長めに履いていて、膝下に纏めていたダボダボのルーズソックスを限界まで引き上げている。それによって何が生み出されるかというと、スカートとソックスの間に“絶対領域”が創り出されたのだ。
そう来たか!と僕は不意打ちを喰らってしまう。
露出面積が狭まった太もも。面積が狭まったというのに、普段より艶めかしく見え、ついつい目で追ってしまう。
安藤さんは白のソックス、夢野さんは黒のソックス、七瀬さんは白のソックス。
特に夢野さんと七瀬さんは太ももとソックスの色が真逆なため、さらにエロく感じる。
そして三人ともいつもと違う姿のギャップに、僕はやばいくらいに興奮していた。
「あはははは!ちょっと黒崎、見過ぎだってwマジウケるんですけど~」
「男ってちょろいよね~」
「何であたしまで……」
「ねえ黒崎、何かあたし達に言うことあるよね?」
「あるよね~?」
負けた、負けましたよ。こんなんずるっこだ、勝てる訳がないよ。
安藤さんと夢野さんに謝罪を求められた僕は、素直に負けを認めて頭を下げる。
「陰キャラ風情の僕が生意気なことを言って、すいませんでした」
「あははは!!それそれ、それが聞きたかったんだって!!」
「これにこりたら~、あんまり調子に乗っちゃダメだぞ」
僕は心の底から反省した。
陰キャオタクの僕如きでは、JKギャルには一生敵わないんだって。
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