#10




(ん?)








(人の声だ・・・!)













突然現れた家の方向とは別の場所から、誰かの声がした。














男の子「わぁー!この辺りはたくさん食べ物があるね!」





女「しっ!静かに。この辺りはもう随分と里から離れているんだから。」





男の子「うん・・・。」














(僕と同じくらいの子がいる・・・!)





(里の子かなぁ?)





(初めて見た・・・。)





(何を話してるんだろう・・・?)








初めて目にする人の里の子供、それも自分と同じくらいの年の男の子。



話しかけてみようか、どんな言葉をかけようか、



とてもワクワクしながら耳を澄ました。















女「しっ! 静かに。 


  野草を取れるだけ取ったらすぐに帰るよ」




男の子「うん・・・・。」



男の子「なんで静かにしなくちゃいけないの?


    ねぇおばちゃん、どうして?」


   「誰かに怒られちゃうの?」


   「誰もいないのに?」






不思議そうに問う男の子







女「あぁ。誰もいないよ〝人″は誰も。」








すると、女は声をひそめながら話し始めた。





女  「いいかい?ここからもう少し行った先にある赤い橋はね、


    あの世とこの世を結ぶ橋。


    決して近づいてはいけないよ。もやの奥からオニが現れて


    命を取られてしまうからね。


    そんなところには誰も住みやしないさ。

    

    いくつか変な噂はあるけどね、


    〝人″はいやしない。」







男の子「うわさってなぁに?」





女「オニの仲間がいるって話だよ。おぉ恐ろしい。


  そんな恐ろしい場所には、誰も近寄りやしないさ。」


 「今日はもうこの家の前まで来てしまっているからね。


  ここの者も何だか得体えたいが知れないって話だよ。」















(え・・・?)












人の里には、を持った彼らを知る人間は多くはいない。





身体に突然痣あざのように現れる数字は本来、目に見えるのは本人と、





同じく数字を有する者達だけなのだが、





時折強く出たあざが誰であっても見えてしまう事があり、





それを目にした里の者は、呪いのたぐいと思っている者もいる。





体にまとう白い光の波動は、オニの出てくる世とされている場所に





立ち込めているもやまとっているのだと。





人々は得体えたいの知れない物の事を





呪いやたたりなどとみ、そう呼んでいた。







(赤い橋・・・。)





(僕のお家の横にある・・・。)





(〝人″はいないって・・・?)












僕たちがいる。







僕たちは〝人”だよ。









僕たちは・・・・


























続・・・・・・






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