もうだめ…耐えられない…
「その時の母の顔は忘れられない…にやにやとして『でもあなたいいの?たしか「どの女もしなだれかかり、隙さえあれば迫ってこようとする妖怪にしか見えない。そんな女とは婚約も結婚もしない」のじゃなかったの?』 って。さっき見たようなあの顔でそう言ったんだ。きっと僕の気持ちを全て見透かしてたんだと思う。でも、それでも父と母の協力が必要だった。
そして、翌日ここに来たんだ。サリーの父と母に好かれたくて手土産までもって。」
あぁ、、あの手土産…父が顔を緩ませて受け取った高級なお酒と皇室御用達のスイーツ。
あれは賄賂のつもりだったのですね…
「だけどサリーは頑なに断ろうとするし、帰ったことも自分の意志だったという。正直もうどうしたらいいのか悩んだよ。だから必死に考えて、、その………まるで王命のように伝えたんだ。政略的な部分ももちろんある結婚ではあるけど、実はそれは後付けでしかなくって。それどころか必死になって理由をつけたサリーに魅かれた理由も後付けでしかないんだ。……ただ婚約することを断られないように必死に考えた理由だったんだ……
でもそんな始まりにしてしまったから、今度はいつそんな雰囲気にしてしまっていいのかわからず、サリーが喜ぶことをしようと思ったらまず、領地をもっと栄えさせないとと思って。サリーが僕との結婚を決めてくれた一番大きな理由はそこだったから……」
なにそれ……
なにそれ…………
「ふふっ、ふふふふっ!」
私は耐えられずに笑ってしまいました。
「サリー?」
「ふふっ、申し訳、、ふっ、ありません。ふふふっ。」
「えと……」
フレッド様が困ったようにこちらを見ておられますが、もうだめ...こらえきれないんです。
もう一年ですよ?婚約して一年。
それなのにバツが悪そうに隠していた内容がこんなことだなんて。
しかもそれを真っ赤な顔をしながら言い訳するように話しているなんて。
第2王子殿下がなさることではないでしょう。
王子殿下なら基本的にその要望は叶うと言うのに、こんなことを隠して必死に領地経営をやっているだなんて。
こんな可笑しくて可愛らしいこと、もう堪えられませんわ。
「ふふふふっ、そんなことをずっと隠していらしたのですか?ふふふっ、しかもそれっていつまでそのままになさるつもりだったのですか?ふふっ、あと数か月もしたら私たちの結婚式ですよ。まさかその時もそのままで結婚式が終わったらそのまま領地へ行くご予定でしたか?ふふっ」
「そんなことは……その、、、もしかしたらしてたかもしれない…」
「もういやだ、あまり笑わせないで下さい。ふふっ、そんなに必死になっておっしゃって下さるくらいならどこかのタイミングで言ってくださればよかったのに」
私がこの話を聞いて感じたことはただそれだけ。そしてなんて愛おしい方なのかしらってこと。だってただ一言好きだ、愛してるって言えばいいだけなのに1年間も隠すなんて。これお義母様が言ってくれなかったら本当にどうなってしまっていたのか。
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