第30話 ピーチル令嬢のその後…②


そして平民街を歩いてて男性にぶつかったの。


「なんだ。お嬢ちゃん娼婦かい?店教えてくれよ。今度行ってやるよ」


ですって!


………貴族が通うような娼婦があったはずよね。確かそこでうまくいけば娶られることもあるって聞いたわ!そうよ、どうして思いつかなかったのかしら!


「ちょっとあなた、ここらへんで一番いい娼婦のお店はどこ?案内してほしいの」


そう男に尋ねると、男にニタニタと笑って私の腰を抱くと歩き始めました。たまにお尻に触ったりと無礼な奴だったけど、まぁちゃんとお店に連れて来てくれたからいいわ。


「ちょっと責任者はどこ?ここらへんで一番いいお店だっていうから来たの。今日からここで働きたいのだけど責任者を呼んで」


そう言えば奥に通され、背の小さなおばさんが入ってきたわ。


「ここで働きたいのかい?ふぅん…見た目はそこそこだね。いいよ、今日から働きな。でもあんたは一番下っ端だからお姐さんたちのいうことはしっかり聞くんだよ」


「いやよ。私は下っ端なんていや。こんなに綺麗な子がお店に入ってくれるならお店も繁盛するでしょう?だから下働きなんてしないわ」


私ははっきりとそう教えてあげたわ。

それなのに……


頬を叩かれた。


「何甘ったれたこと言ってんだい。ここにはあんたよりきれいな人なんて山ほどいるんだよ。大体そのくらいできなかったらどこの娼婦でも働けないよ。そんなことすらできないなら店から出てきな。」


なによそれ、なによ、なんなのよ!!

その場で下を向いて、怒っている意思表示をしていたのに、また早くしなと言われてしまった。


だから仕方なく従ってあげるふりをした。

そしたらお姐さんと言われるような人たちの部屋に連れていかれた。


ほんとにそこには私より綺麗な人たちがいた……


なによ!なんで私が一番じゃないのよ!!


そこではお姐さん達のお茶くみをさせられて、洗濯もさせられて、お風呂だって一番最後だった。


なんでよ!!

むかつくむかつくむかつく!!!


でもさぼったりしたらまた頬とぶたれた。

そしてその店で知ったのは人気があるのは必ずしも綺麗な人ではないということ。


それなら私だってやっぱり人気になって貴族に娶られるかもしれないじゃない。


だから私は従ってるふりをしてお姐さん達のお世話をした。


そして、初めてお客さんについて…


なによ……


なんなのよ……


こんな平民丸出しの人なんて嫌!

どうしてこんな男に抱かれなきゃいけないの!


それなのにベッドに組み敷かれるともう逃げられなかった。


それからも何人も客を取ったのに、誰も貴族には見えなかった。


なんで、なんで貴族がいないのよ!

こんなの娼婦に来た意味がないじゃない!!!!!


早く、早く誰か私を迎えに来なさいよ!!!!!!





****

ピーチルが男にぶつかり『ここらへんで一番いい娼婦を教えなさい』と言った場所は平民街だった。平民街の娼館までくる貴族はなかなかいない。もしいたとしてもお店の人気の子しかつけてもらえず、なによりも貴族街の娼館で問題を起こしたものばかりだった。そして何よ問題だったのは聞いた男にとって”いい娼婦”とは安くてわりかしいい女が揃っているお店だった。もしピーチルが本当に貴族に娶って欲しく娼館に身を寄せるのなら、貴族街の娼館に行くべきだったのである。



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