第28話 元ドルマン侯爵のその後…


今日は仕事なんてしたくない。ヤギの世話なんて休みもないじゃないか!?毎日毎日ヤギの声で目が覚め、ヤギの世話をする。世話してやっているのに尻を噛みつかれる。なんなんだ!?


だから今日は仕事はしない!

一日放っておいたって死ぬわけじゃあるまい。


そう思いうるさい声にも耐え、家にいたのに。


次の日家の外に出たら至る所に糞尿があり、匂いがすごい…臭すぎて頭が痛くなる。一日世話をしないとこんなことになってしまうのか…


餌をやってないことが気に食わないのかいつもより尻を噛む力が強い。


おい、痛いぞ!!




なんで私がこんなことをしなければならない!!私は侯爵だぞ!

領地経営がうまくいかず行き詰まっていると、同級の伯爵家の経営が状況が良く、伯爵のままでいるには支障が出ると言われるほどだった。あいつは頭もよく要領も良く戦略家だった。伯爵家なのにいつもあいつが成績の上位に入っていた。このままいけば侯爵にもすぐなることだろう。


くそ面白くない。ならば学生の頃から情に脆いあいつに頭を下げて頼み込んでやろう。きっと断ることなく言われる分だけ支援してくれるはずだ。そうだ。そうすればもう経営なんかに頭を悩ませずとも良い。そうと決まれば早速伯爵家に行こう!!


そう思ってからはまさに勝ち組だった。伯爵の娘との婚約を勝ち取り、支援も得られた。これならばもう何があっても金の心配をする必要はない。黙っていても伯爵家が稼いでくれる。


由緒正しき侯爵家当主が伯爵家なんぞに頭を下げてやってるんだ。しっかりと稼いでくれ。



そう思っていたのに!!



ロディの奴が勝手に婚約破棄など言い渡した。


あいつにはいつも伯爵家が侯爵家に縁を求めて来たから婚約をしてやったと言っていた。それなのに礼儀がしっかりとできている私が頭を下げてやっていると。本来であれば伯爵家こそが由緒正しき我が家に頭を下げなければならないのだと言っていた。それに娘だって侯爵家に逆らうことはできないはずと言っていた。


だが、あんなことをしでかすなんて!

あの馬鹿のせいでなにもかもめちゃくちゃだ!


伯爵家に謝りに言っても冷たい目をした執事に家にさえ入れてもらえず、話しさえできない。もう支援をしてもらえないと悟り、他家へ支援を頼んでもあのパーティーの出来事を知らないものなどいない。誰からも相手にさえしてもらえない。


どうしたら………明日はもう約束の3か月の日なのに。


そう思っていたらルドルフが家にやってきた。なんだ!支援をしに来たのかと思ったら今日から自分が当主だという。


違う!!侯爵当主は私だ!!


それなのに議会での決定であり、覆ることはないという。


そんな……そんな………


でもそれならば援助金の返済と慰謝料は私ではなくルドルフの責となると思ったのに、それは半分はドルマン侯爵家から支払うが、半分は私たちの借金だという。


そんな……そんな……


そして領地の山の中に連れてこられ、ヤギの世話が仕事だと言われた。このヤギは食料にもなるし、乳も売り物になるという。


こんな仕事で借金なんていつ返せるんだ…


いやだ…いやだ……


それなのにこの山にはほかに人はおらず、自分たちで世話をするしかない。


今日休むと明日は寝る時間も休む時間もなく世話しなくてはいけなくなる。


自分で稼ぐことがこんなに大変なんて知らなかったんだ…


もう許してくれ……


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