第25話
そして最後はドルマン侯爵家についてです。
ドルマン侯爵家は1階級降爵ということになりました。援助金の返済と慰謝料の支払いを行えば、それだけで多額の借金しか残らず、今後の領地経営は見込めず、税さえ支払えない状態になります。お取り潰し止むも無しだったのですが、領地もあるということを考慮し、1階級降爵とすることになりました。そして援助金の返済と慰謝料は半分は公爵家への借金とし、本人たちからの返済とすることとしました。それでも経営は難しいだろうということでドルマン伯爵家の領地の半分はナシェルカ公爵領の領地となります。
当たり前ですが、当主交代は免れません。もちろんロディ様にも継がせるわけがありません。遠縁の25歳の男性が継ぐことになりました。その方は3男で継ぐ家もないとのことで財務官として働いていたようですが、その才覚を認められ、王家からの推薦もあり当主となることが決まったようです。ドルマン侯爵、いえ、元ドルマン侯爵夫妻は犯罪を犯したわけではありませんが、それでも領地経営の失敗はさることながら、支援を頼んだ家への裏切り行為。貴族としては許されることでなく、平民としてドルマン伯爵領にて仕事を斡旋され、働くことが決まったようです。その給与も自分たちで作った借金の返済にあてられるようですが。
仕事の内容は山で飼育されているヤギの世話。そのため家も山の中にあるそうです。
ヤギは見てる分にはいいのですが、お世話をするとなると、ちゃんと糞尿の世話をしないと匂いがすごいし、すぐに逃げ出すし、毒草と知らず草を食べてしまうとお腹を壊してしまったり、最悪死に至ることもあります。そしてなによりうるさい!メェーーーーーーーーーーと毎朝毎朝鳴かれては起きるしかないんだという。なんというか大変な仕事だけど、頑張ってという感じですね。
そしてロディ様の身柄はナシェルカ公爵領預かりとなりました。
婚約破棄の騒動の中身を知ったフレッド様がどうしたいかとお聞きになるのです。正直私は関りがなければそれでよかったのですが、それでは自分の気が収まらないと罰を与えようとするのでそれならばとその身柄を引き渡して頂きました。
実は我が領地には特殊なお店があるのです。男性が男性を好きになったり、ただ女性のように着飾ったりがするのが好きな方々が集うお店です。私が市場に顔を出したりするようになった時いつもおまけをしてくれる野菜屋さんの息子さん、ダニエルさんから相談されたのです。話を聞くと少なからずそういう悩みを持つ方がいるようで、それならお店を開いてはどうかとお父様に掛け合いました。当初はかなり渋っていましたが、我が領の中だけならば問題にはならないだろうと認めていただきました。
その店の店長であるダニエルさんから普通だけど可愛い男の子を紹介してとずっと言われていました。私からすれば可愛くはないのですが、まぁ見た目は普通だと思いますし、ロディ様も働かなければいけないのでお互いにメリットがあると思い、こちらに預けることにしました。
ダニエルさんには大変喜んでいただいたので、これでよかったのだと思います。
王家と話し合いをして1月後には婚約を公表し、私が卒業するのを待って、フレッド様と結婚いたします。
フレッド様はすでに週に3日はナシェルカ公爵となった我が家で暮らし始め、父と一緒に領地を見て回っておられます。先に手を加えるのはドルマン伯爵領だった場所。今まであまりお金をかけてもらえなかったであろう場所が多く、その領地改革を進めようとしてくれています。公爵になった我が家はまだまだ問題山積みです。それでもみんなで協力して素敵な領地にしていきます。
そうそう、あの後すぐに王妃様の元へ伺い、デザインなどを決めたドレスはとても綺麗なものに仕上がりました。
なんでもこのドレスの話しは王妃としてではなく、ただの女としてほしかったと、我儘を言ってしまってごめんなさいと謝ってくださいました。でも私は正直どちらでも構いません。それにもし公の場で使ってもらったとしたら私としてはものすごいビジネスチャンスが広がるだけです。
胸元と腰回りには宝石をちりばめ、裾に向かって濃くなる紺のドレスは私たちの婚約パーティで注目されておりました。それからドレス産業は大忙しです。次の隣国訪問の際のドレスを新しく注文されたのと、隣国の王妃へのプレゼントも注文され、新しく職人を雇い入れ、場所を拡大しながら織りあげています。
まだまだ先は見えませんが、素晴らしい領地であることは間違いありませんね。
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