第13話

そしてパーティー当日。パーティーの2時間前に迎えが来ると言われており、それに合わせて待っていますの。今日のドレスは今でも主流のつるつるの生地ではなく、特別な糸で織った織物で作り出されたドレス。白のような、銀のような、場所によっては金のような色合いを出す自慢の糸で織られたドレスは驚くほど軽く風通りもいい。ですが白系統だけでは花嫁のような印象になってしまう為、その糸をこれも我が領の特産品である野菜で染め上げて色をつけています。

私のはオニオンで染め上げてオレンジの色合いのドレスに仕上げましたわ。


前々からこのドレスの構想を練っていた際、アイシャにもお願いしてプレゼントさせてもらいました。そちらは紫蘇の葉で染め上げたピンクのドレスです。元の糸も強調できるように裾に向かってグラデーションになっているドレスはとてもアイシャに似合っていたんですよ。


そんな私のオレンジのドレスを眺めていると執事が応接間に呼びに来てくれました。

お迎えが来たのだろう。そう言えば、名前は内緒ねとデイヴに言われ、明かされていません。でもデイヴとアイシャも知っている人ということで、悪い人は紹介されないだろうとそのまま了承しました。

門の前まで向かうと馬車の前に男性が立っており、私に気づくと足を進めてくれます。


「はじめまして。サリー・ナシェルカ伯爵令嬢。この度はパーティーでエスコートする許可を下さり、ありがとうございます。私フレッドと申します。正式な自己紹介はパーティー会場にてさせて頂きますので、それまでの時間、ただのフレッドとしてお話頂いてもよろしいですか?」


名前も明かせない人なのかと思ったけれど、今日のエスコート役だけの人。私には話したくないこともあるだろうとその旨を受け入れましたわ。

もしかしたら今まで女性関係で問題があったのかもしれない。


だって驚くほど綺麗な人だもの。

私は婚約者とうまくいっていないこともあり、特産品の売り込みがなければ今まであまり積極的に社交の場には出ませんでした。だからお顔を知らない方も多いです。特に高位貴族の方はなかなかお話する機会がありません。

だからかもしれませんが、それでもこんなに綺麗な顔の人は知りません。ちょっと赤みがかった茶色の髪に緑の瞳、見上げるほどの身長に細いのに鍛えているのがわかるその体格……


道端で見かければ追いかけて行ってしまいたくなるほど綺麗な男性ですわ。

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