第10話
キャロル様から離れるとアイシャがニヤニヤとデイヴに囁くような声で話しかけました。
「おめでとうはよかったわね。あれでもう誰も表立ってサリーを貶めることはできないわ。」
「だろう?下手なことを言うより祝いにしてしまおうと思ったんだ」
ヒヒヒッ…と声が聞こえてきそうなほど悪そうな顔をした二人が話しています。
なんというか、同じような性格をしている2人なのよね。
「アイシャもデイヴも本当にありがとう。どうせこれからも陰ではいろいろ言われるんでしょうけど、あんなふうに言ってもらえて嬉しかったわ」
そう素直にお礼を口に出すとふたりともなんだか照れくさそうに頷いてくれた。
ほんとに似ているわね。
それからは想像していたよりもかなり落ち着いて生活をすることができました。
学校でも私の見える範囲では噂をする人たちもいなくなりました。これは偏にアイシャのおかげであり、デイヴのおかげです。
そしてなにより、勝手に自滅してくれた元婚約者のおかげでもあります。
あれから元婚約者はというと、何度か校舎の前で待ち伏せをしていたようだけど周りの目に耐えられなくて帰って行っていたとアイシャが教えてくれました。
2週間後にようやく婚約破棄の書面が交わされました。
あんなに大々的に婚約破棄を宣言したのに、よく2週間も粘ったなと感心してしまう。
ドルマン侯爵は周りの家に支援を求めているも、ナシェルカ伯爵とは業務提携が終了していること、全ての取引が停止していることは周知の事実でありこれからの財政状況を考えるととても手を差し伸べられる人はいないとのこと。
特にドルマン侯爵家には子どもがロディ様しかおらず、後継者があれでは未来はないと烙印を押されてしまったため、なおさらです。
それともうひとつ、この騒動の中心人物の家、ロシェンカ男爵家です。
ロディ様とピーチル令嬢はとある貴族のガーデン・パーティーで知り合ったそう。
ピーチル令嬢は高位貴族の令息にばかり、取り入ろうとしてすり寄っていたらしい。ですが、あの婚約破棄のパーティーで見たようなまるで娼婦のような服装に高位貴族には相手にもされなかったとのこと。しかし、それを広い心で受け入れてしまったのがロディ様。
それからはパーティーのたびにエスコートして行くようになっていたんだとか。
あの方パーティーなんて行けたのね。
そして、私との婚約破棄をしてロシェンカ男爵令嬢と婚約を結びなおしたかったんだそうです。
その事実はロシェンカ男爵も知らなかったそうだけど、ロシェンカ男爵家の財政は元々火の車。男爵になれたのも前当主のある研究が認められて、2代限りの爵位を叙爵したのだそう。要するに今の当主がなにか功績を上げられなければお取り潰しが決まっている。だからピーチル令嬢も焦っていたのかもしれないけれど、お粗末としか言えないこの結果はまさに自業自得。パーティーのあと知人にその内容を知らされ、娘を勘当しても後の祭り。ロシェンカ男爵は慰謝料の支払いをすると、爵位を返上して逃げる様にどこかに越してしまわれたそう。
一番の被害者はロシェンカ男爵かもしれないわね。
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