第9話

「あぁ、キャロル嬢、ごきげんよう。こんなところでサリー嬢たちとどのようなお話を?」


「実は…サリー様がご婚約を破棄されたと聞きまして、心配しておりましたとお声をかけておりましたの。

先日のパーティーにてご婚約の破棄を突きつけられてしまったと聞きまして、不憫に思っていたところですわ」


なんとまぁ、人の不名誉なことならば、他の人にまで広めないで頂きたい。


「あぁ、そのことなら私も聞いたよ。

サリー嬢、婚約破棄おめでとう。」


「………は?」

キャロル様のつぶやきなど無視だ、無視!


「デイヴィッド様、お祝いのお言葉をありがとうございます。しかし世間一般では私は傷物でありますわ。おめでとうだなんてお言葉を頂いていいものか…」


そう、私とデイヴィッド様は結構仲がいい。

そして、隣でニマニマとずっと笑っているアイシャも。


元々公爵家同士ということでアイシャと交流があったデイヴィッド様。

放課後私たちが図書室で勉強をしていた時に、同じく図書室にいらっしゃったデイヴィッド様に織物のことで質問されてから話すようになりました。

我がナシェルカ伯爵領の主要の特産物は織物。そのため、私は小さいころからそれらに触れてきました。

そして同世代の人よりは特産物に関しての知識は高い。ただそれだけなのに、質問されたことにスラスラと答えたことでデイヴィッド様からさらに質問され、また翌日も質問される羽目になった。

そして、アイシャと気兼ねなく話し、呼び名もアイシャだったことから自分もそのようにするようにと言われてしまって。

さんざん固辞してきましたが、デイヴィッド様のほうが頑なで、今では人前でないときに限りデイヴと呼ぶことにしています。


そのデイヴにも婚約者の話しは今までもしていました。

だからこその「おめでとう」なのです。


「あんな婚約者なら婚約などしないほうがいいだろう。それにあちらから婚約破棄してくれるなんて慰謝料も取れていいことばかりじゃないか」


そう、その通り!


でもその一言を聞いたキャロル様は驚愕の表情をされています。

それにデイヴにこう言われてしまえば周りの生徒も今後私のことを悪く言うことはできなくなります。


きっとそれを見越しての行動。

婚約者には恵まれなかった私ですが、友人には恵まれています。


「さぁ、お祝いもかねてお昼ご飯をごちそうさせてくれ。それではキャロル嬢失礼するよ」


そう言って、颯爽と私たちをキャロル様から引き離してくれました。


できる男はスマートですね…


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