まおうとかみさま→まおう は しちりん を てにいれた !
ム月 北斗
しちりんの けむりによばれ とおりあめ
さて・・・どこから話そうか。
まずは、ほんの少し前の話をかいつまんでゆこうか。
この国にはちょっと前、正確には30年前位になる、「魔王」と呼ばれていた存在がいた。魔王は各地の魔物や魔獣を使役しいくつもの村や街、城に魔物たちをけしかけ・・・あー、なんだ・・・その・・・「引っ越し」いや、「住み込み」で働かせていた。
ここまでだけなら「それが何?悪いことなの?」となるだろう。
うん、
実際、働いている魔物たちはホントーによく働いている。腰の悪い老人の代わりに荷物を持ち家まで運ぶ、資材の調達が遅れて工期が伸びている大工のために巨躯な魔獣が大きな資材を持ってくる―――
いや、まーじーでいい子たちしかいない。じゃあ魔王って何さ?今聞きたいのはそれだろう?いいだろう、答えよう・・・ズバリ、「ペットの飼い主」である。
もはや、威厳なんて無い。増えすぎて多頭飼育崩壊と化し派遣よろしく魔物達に仕事を与える。普段から殺伐とした社会を持ったイメージを抱かれていた彼らだがフタを開けるとその実、大人しいものだ。花畑で花冠を作ったり川原で釣りをしてたりと至極平和そのものである。
そんな魔物達の主にしてオレの親である魔王よりオレは魔王の王位を譲られた。魔王となり本来のイメージ通りの存在になるべくこの国の国王を騙し(カジノで一生遊べるほどのコインを渡しただけなのだが)成り代わり現在に至る。
しかしだ・・・この城の食事情がおかしいのだ。基本的に肉、右手にチキン左手にポークなどというジョークが素なのだ。それというのも先代、オレと代わった国王が大の肉好きだったというのが発端らしい、なんと迷惑な—――こんな食事では栄養が偏り体に悪影響を及ぼすではないか!
肉ばかりでそのうち余分な脂肪がつきゆくゆくは生活習慣病まっしぐらだ。
いかん、これはいかん!そう思いオレは城中の家臣たちを集めて緊急会議を開いた。
「単刀直入に言う。なぜだ?なぜ食卓に肉ばかり並ぶのだ!野菜も摂らんか!」
声を大にして会議室に響かせる、少しの沈黙の後に家臣たちはドッっと笑い出した。ほんの少し・・・ちょっと魔法で数人頭を吹き飛ばして黙らせようか位としか思わないほど少しイラッと頭に来たがオレも大人だ、それに魔王だとバレては意味がない。心を落ち着かせオレは家臣たちに聞いた。
「なぜ笑う?なにがおかしいのか。」
聞かれた大臣がふくよかな腹に両手を当ててまだ笑いその腹を揺らしていた。
「いや、だって・・・フフフ、陛下がおっしゃたではないですかぁ。」
なに?
「ん?・・・あぁ、そうであったな。いや、自分で言っておいて忘れるとはな—――はっはっは、オレも歳か?」と、とぼけたようにジョークを一つ。いまだ笑いが微かにこぼれる会議室は再び大きな笑い声に包まれた。
それから少し時間がたち夕食(当然、肉とパンだけ)を終えたこの日の夜、今宵も日々の日課である深夜の
このままでは気になりすぎて眠れん!そう思いオレは歩を調理場へと向けた、さすがに何かしらの例えばそうだな・・・
調理場へ向かう道中何度か見回りの兵士とすれ違うも魔法でオレを感知できないようにしてあるので難なく通り過ぎる・・・それでももう少し警戒心というのを持った方がいい、オレは兵士の足元にわざと羽織っているマントの裾を広げ踏むのと同時に思いっきり引っ張った、見事に兵士は足を滑らせ顔面からずっこけた―――うむ、すまんちょっとやりすぎた・・・こいつの給料だけちょっと上乗せしておこう。
ようやく調理場へたどり着き真っ先に瓶詰の入った棚を探る、これはピクルス・・・違う、こっちはオリーブか・・・違う、てか野菜あるじゃねーかちょっと拝借・・・ピクルスの瓶を懐にしまい他の棚を探る。しかし、どの棚を探れども何処にも香草がない。なぜだ、今日の夕食のステーキからはほんのりとローズマリーの香りがしたのに・・・。ふと、最後に見た棚の隣に目をやると重そうな木製の扉があった。ふちを鉄でしっかりと囲いまるで何かを外に出さないようにしているとさえも見える。もしやこの中か・・・扉の取っ手に手を掛け引く、密閉に近かったのか気圧差で内部の空気が一気にオレを通り過ぎる、そして鼻にかかるこの匂い・・・間違いない!これは肉の「貯蔵庫」だ!さらにその中にあった肉からは多種多様な香草の香りがする、ローレル、タイム、セージにオレガノ、そして・・・ローズマリー。
肉の香りとそれがどういう状態で保存されているのか、その真相を知り愕然とする。見る限りでは肉は城下町の肉屋で
なんという・・・神よ、救いは無いのか?!魔王が言うのもなんだがな!!
今宵は山盛りのステーキでも見てしまうかもしれないと諦め、うなだれて調理場を後にしようとした時だった・・・大きな窓の前、月明かりを背に誰かが立っていた。オレが気配に気づかなかった?!驚き後ろに僅かに飛び退き身構える、何者だ?深夜でもあり目立ちたくない、自分で解決することなら容易いものよ、だって魔王だし。問われたその人物はゆっくりと振り返る、足元をよく見るとなぜかその人物は木箱の上に立っていた、ピョンッと飛び降りるとその背丈はとても小さくテーブルからギリギリ顔を覗かせる程であった。そしてこれまたゆっくりとオレに歩み寄りその姿を現す。白髪、膝ほどまで伸びた白い髭、真っ白なローブ、見た目は老人である・・・まじまじと見つめ観察していると老人は言った。
「ワシか?ワシは見てのとおり、神様じゃよーん。」
鳩が豆鉄砲よろしく、鳩の至近に砲弾が飛んでくる程の驚きにオレの時間が止まった。今、なんと・・・?
神がいる。頭悪そうな言葉だがいるのだ、目の前に。
「・・・おーい?もしもーし?」
呼びかけられてハッと我に返った。
「貴様・・・オレを馬鹿にしているのか?神だと?胡散臭い全体的に白いじじぃだろうが⁉侵入者め、つまみ出してやる!」衛兵を呼ぶわけにはいかない、魔法で自分の杖を手元に召喚しコケ脅し程度の電撃の魔法を放とうとした、しかし・・・
「おーコワ。最近の若いモンはすぐに力で解決しようとする・・・イカンぞ、それ。」
自称神様は気づくとオレの背後にいた、目は離していない・・・精々瞬き程度だったというのに―――即座に反転し杖を構え直す・・・が、やはり再び後ろに回り込まれていた。
「まーまー、カッカすんなや。お前さん、ちょびっと今悩みがあるじゃろ?神様がそれを叶えてやろうと思ってな、来たんじゃよー。嬉しいか?嬉しいじゃろー。」
自慢げにホッホッホと笑って見せる。悔しいがこいつ『ホンモノ』だ。
「・・・いいだろう。で―――神とやら、望みを叶えるだと?いったいオレの何を叶えてくれるというのかね?」叶えて欲しいことならいくらでもある、肉料理に野菜を付けさせること、衛兵長が毎朝の起床時刻に合わせてラッパを吹きならすのをやめさせること(上手いなら良いが聞くに堪えん)、メイド長の厚化粧をやめさせること・・・若作りもやめてもらいたい、50代で18歳を自称するのはキツイ・・・
言い出したらキリがない、多くの願いを模索していると神様は答えた。
「お前さん今・・・『肉』以外が食べたくないか?」
なん・・・だと…?突然持ち掛けられた提案に鎌でもかけられているのかと勘繰る。だが・・・だ、それでも今のオレはその提案を無下にすることはできない、求めているのだ・・・『肉』以外を―――
「それがどうした?『肉』以外?笑わせる・・・オレは別にそんなもの望んじゃいな―――」
「さっき来る前にスーパーで買ってきたサンマが二尾ほどあるんじゃが?」
「ちょっと考えてもいいですか?」マジか・・・神様が懐から取り出したトレイの中には確かにサンマが入っていた、半額シールが貼ってあるがそんなことは気にはしない。
「いやー、ここに来る途中でな、ふらっと寄ったスーパーであったんじゃよ。ついでにポケットマネーでこの・・・よいしょっと。」はたまた懐から何やら大きいものを取り出した。
「驚くがよい!『七輪』じゃ!・・・あ、ついでに炭もあるぞ。」—――四〇元ポケットかよ・・・
「神よ・・・まさかここで焼けなどとは言うまいな?」
「まさか、食ってるとこを城の者が見たらどうする?普段肉しか食わない王様が魚なぞ食ってたら間違いなく疑われるじゃろ、のう―――『魔王』よ。」
こいつ・・・どうやらオレの正体が分かっているようだな。まぁ、『神様』だし当然か。嘘など・・・無駄だろうな。
「ふん・・・いいだろう、城の裏にある山の開けた場所で焼くとしよう、調味料は・・・適当に拝借して行こう。」
「物わかりの良い奴じゃな、お前さん将来いい魔王になるじゃろう。」
「いい魔王が何かはよく分からんが、二尾入っているということは神よ、おまえの分もか?」聞かれた神は右手の親指を立てて突き出し「よろしくの!!」と元気のいい返事をした、調子のいい奴め。
神と共に城の裏手にある山へと転移魔法で移動し、二人で丁度いい場所を探し歩いた。少し歩くと月明かりに照らされたうってつけの開けた場所を見つけ落ちてる枝を集めた。
「なにしとるんじゃ?」神が唐突に疑問を投げかける。
「なにって・・・焚火だ。今日は月明かりが眩しいとはいえ暗いことに変わりはないからな、ケガの予防と獣除けだ。」刃物を使う予定は無いが念には念をとな、そんなオレに神は一言、「まじめじゃのー」・・・お前がいい加減なのだ。それにしても枝を拾おうとする度に腰が痛い、深夜の散歩に筋トレも追加しよう。
集めた枝を比較的草花の少ない場所を選び一カ所に集めて置く、火は・・・まぁ魔法でいいか―――指先から小さな炎の塊を放ち火を焚いた。
次いでサンマを取り出す、まな板・・・まな板・・・しまった忘れた、刃物を使う予定は無かったからな。うーむ、仕方ない。
意を決しオレは近くに転がっていた大岩の前に立つ、神は後ろでとぼけたようにこちらを見ていた。指先を突き出すように伸ばし魔力を込める、一歩足を踏み出し腰で振るように腕を力強く一振りした。空を切ったその一閃は、まるでそこだけを切り取ったかのように大岩を真っ二つに切り裂いた。大きいが高さがオレに丁度いい、まな板代わりにしよう。神はあまりの衝撃に腰を抜かしていた。
まずはサンマに塩を一振りし余分な水気を抜く、これを忘れると生臭さが残ってせっかくの風味が台無しになってしまうのだ。目安はおよそ30分ほどである。
しばらく待つことを神に告げる、すると神はおもむろに焚火近くに丸太を置き腰を掛けた、気を利かせてくれたのかオレの分もあった。
「さて、ちょいと話でもせんか?」不意に神が話しかけてきた。
「なんだ世間話でいいのか?だったらいい話があるぞ。」
「なんでもいいんじゃよ。神様とはいえ全部知っとるわけでも覚えてるわけでもないしの。昨日カミさんの作ってくれた晩飯ですら覚えとらん。」医者行け・・・いや、なんか違うな?
「じゃあ、今日城に来た学者の話でもしようか。」
そう、今日は面白い学者が来た。何でも天候学者らしく最近の乾燥した空気のせいで火事が起きやすくなっているんだとか、そんなものは街にでもいる魔術師に水の魔術を使って消してもらえばいいと言ったが学者は頑なに、「試したい魔術があるのです!」の一点張り。なんでも、巨大な雨雲を局所的に生み出し豪雨を浴びせて瞬時に消すんだとか。そんな話を神にすると、「やばくなったらワシが消すぞ?」・・・でしょうね。
話をしているとサンマの水気が程よく抜けていた、余計な水分を拭き取り炎と風の魔法を弱めに同時に当てて乾燥させる、焼き上がりをよくするためだ。
オレは神から預かった七輪を地面に置き炭を入れる、焚火と同じように火を点ける、見ていた神からは「風情がないのー」などと茶々を入れられたがこんな真夜中に山の中で七輪使ってサンマを焼くことには『風情』とやらは存在するのだろうか・・・
七輪に乗せた網が温まったのを確認しサンマを乗せる、ジューッという音を鳴らし今宵の晩餐の調理が始まる、辺りには香ばしい匂いが徐々に立ち込み小腹を刺激する。
「他にも何か話してやろうか?」今度はオレから切り出す、焼けるまでの暇つぶしだ。神は何も言わずにただ首を縦に振った。
「じゃあ、そうだな。オレの家族、両親の話でもしようか。」
オレの両親、父親は先代の魔王で母親は・・・現魔王である、正確に言うと―――「元勇者」であるが・・・
「ん?元『勇者』?!母親が?!」神も驚きを隠せない、当然だろう。
そう・・・オレは―――『魔王』と『勇者』の間に生まれた
そもそも父上と母上の出会いは当然の宿命的な運命らしい、勇者として一人旅をし腕を磨き魔王城へと辿り着いた母上、城門へと辿り着き門番と一戦・・・のはずがなぜか歓迎され門はいともたやすく開城、最初は罠かと母上も疑ったというがどうやらその歓迎は『
城の中へと入り案内の魔物に導かれ王座の間へと着く、もちろん王座にはオレの父上・・・先代の魔王、当時は『武に極まりし魔王』などと呼ばれていたこの大陸最強の存在だった。
王座に辿り着いた母上を見て開口一番、本当にいきなり父上が言った。
「美しい」
焚火と七輪の炭がパチパチ鳴らす音が静寂に響く。神は口をぽかんと開け「はぁ?」と気の抜けた声を漏らす。
美しい・・・そんなことを突然言われ母上も少し頭に来たらしく「ふざけるな!」と一脚し切り込んだ。しかし・・・
「おぉ!なんと早き剣戟か!その華奢で可憐な体躯からは想像もできん!」とか
「夜闇を照らす月明かりに映えるその煌びやかな銀の髪!照らされ輝く白百合の如き肌!我が愛しき『白百合』よ!私はそなたに惚れた!結婚してくれ!!」
・・・などと、父上からの唐突すぎる求婚、母上の剣を振るう腕に怒りが込められていきその力は最終的に城の一部分を切り裂くほどになったらしい。
「貴様アアアァァァ!!ふざけるなあああぁぁぁ!!戦闘中に!ましてや、その相手に求婚などと!!」
あまりにも豪快で乱暴な一撃が連続し、魔王城に仕えていた魔物たちが城中を逃げ回り命からがら逃げだしたとか。それでも・・・
「ふはははは!!愛い奴だ!我が『白百合』よ!」
振り回されるその凶刃をまるでおもちゃの剣を扱うように受け流し、いなし、掴んで返し母上の相手をしつつ求婚を続けた。
そして・・・夜が明けるころ、王座の間を残し城が崩れた辺りでついに母上が『
一通り話したあたりで神を見ると未だに口をぽかんと開けていた、開いた口が塞がらない・・・か。
話しながら途中で裏返していたサンマに綺麗なキツネ色の焼き目がついていた。
「神よ、焼けたぞ。」
ハッ!と意識を取り戻しそそくさと持ってきた紙皿を持ってきた。
一尾ずつ皿に乗せる、白い皿に映える綺麗な焼き色と香りに脳が空腹を訴える。
箸をその身に入れる。
パリッという音が心地よい、ほんのりと湯気が立ち中からは瑞々しい白い身が顔を覗かせる。
ゆっくりと、その白い宝石のような身をこぼさないように口へ運ぶ。
・・・口の中に久しぶりの感覚が走る。肉とは違う噛むと溢れる潮の香り、鼻腔の奥には潮と焦げの香りが混ざり合い何とも言えない
気づくとオレの瞳から涙がこぼれていた、おかしいな…泣いてるわけじゃないのになぁ…。
それを見て神はうんうんと首を振りオレの喜びを感じ取っていた。
「さて、じゃぁワシもいただくとするかのー。いっただっきまー・・・」
神様らしく?食前の礼を言おうとしたその時だった。
まさにバケツをひっくり返したかのような、いや、それ以上の勢いの雨が降ってきた。焚火は一瞬で消え(むしろ消し飛んだ)、お互いに持っていた皿は雨の勢いに負けぐにゃりと曲がる。乗っていた焼き立てのサンマは地に落ち、泥にまみれ食べることは不可能になっていた。
大雨はそのわずかな瞬間のみらしくすぐに止んだ。
ピチャピチャと樹木の葉から滴る雫の音が今度は静寂に響いた。
「ワシ・・・帰る。」
すべてを諦めたように、もしくはいじけた子供のように神は自らの転移魔法でどこかへと消えた。
七輪と共に一人残された、被っていた王冠を逆さまにすると溜まっていた水が零れた。オレも・・・帰るか。
雨に打たれたせいか転移魔法の調子が悪く誤って城門の前に跳んでしまった。
門番の兵士は大慌て、篝火の傍に誘導され火に当たる。城の中へ給仕を呼びに行った兵士が戻ってきてタオルで頭を拭き代わりの服に着替えて寝室へと向かった。
翌日、やはり具合が悪い・・・風邪だろう。
しかし、王として政を蔑ろにはできん。少しでも仕事をするべく王座へと向かう。
「陛下、お加減はいかがでしょうか?どうかご無理なさらず。」大臣が気に掛けてくれた、どんな奴でも病人には優しくなるな・・・と嫌味すら言えんほどに具合が悪い。
王座に着くと兵士が一人やって来た。
「陛下、お会いしたいという者が来ております。昨日の学者のようですが・・・いかがいたしましょう?」
昨日の・・・?あぁ、あの天候学者か、オレは通すように言った。仕事だからな。
案内され昨日の天候学者が入ってきた。
「おはようございます陛下、早速なのですが昨日の深夜のことについて報告がござます。」
昨夜?なんだ、城下で火事でもあったのか?
「昨夜、裏山の中腹辺りから煙が上がっているのが見えたのです。双眼鏡で見たところ炎のようなものも確認できました。そこで陛下にお話ししました豪雨の魔術を使用したのです!」
オレは黙って話を聞いていた。裏山・・・煙・・・炎・・・どことなく覚えがある言葉が並んでいく―――
「そして魔術の結果・・・見事にその炎のようなものを消すことに成功いたしました!先ほど豪雨を降らせたところを確認しに行ったところやはり火事が起きていたようです。大岩がなぜか真っ二つに切り裂かれていましたが、おそらく雷でも落ちたのでしょう、そのような轟音を聞いた者が居りましたのでな。」
大岩・・・真っ二つ・・・
「そこで陛下、私からの要望なのですがこの豪雨の魔術をもっと持続させるべく研究したいのでその資金の援助をお願いしたいのです。何卒!」
話がいまいち頭に入ってこない・・・ぼーっとする。
だが、たしかにわかることがある。その前に・・・
「わかった・・・資金援助は城の会計担当に相談しておこう。」
返答を聞き、学者は礼を述べると浮足立たせ城を後にした。
その背中を見送り大臣に告げる。
「すまないがやはり体が優れない、今日の謁見は中止だ。」
かしこまりました、と大臣は急いで兵士に門を閉じるように命令した。
重い足をなんとか動かし寝室へ向かう道中、オレは心の中で思った。
・・・おまえかよ―――
まおうとかみさま→まおう は しちりん を てにいれた ! ム月 北斗 @mutsuki_hokuto
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