第3話 元凶帰宅
父さん達が帰ってくるまで、俺は自分の部屋で漫画やラノベを読んで時間を潰していた・・・なんて事はしない!!!!
確かに普段の俺だったら家に帰った後、流れるように家にあるお菓子を手に取り、冷蔵庫にある飲み物を用意し、完全武装をしたまま、華麗にベッドにダイブをするだろう。しかし、今日に限ってはそんなことはしない。出来るわけがないだろう!だって目の色変わっちゃってんだもん!!試さずには居られないでしょ!!
と言うことで、学校指定の運動着に着替え、超能力を使う準備をした。格好のダサさについては言及しないでもらいたい。
よし、何から始めよう。。。まず目の色が変わったわけなのだから、目から何か出るだろうか。取り敢えず試してみるしかないな。
「うぉぉぉおおおお!!!!目からびぃぃぃいいいっっっむむぅぅぅうう!!!!」
・・・・
「ふぅ、まぁこんなものか」
(なんも出ねぇじゃねえか!!!クッソ恥ずかしい。。。いや、これまでも出ると思ってやってたけどさ、今回は違うじゃん。目の色変わってるし、ほんとに出るかもしれないって期待しちゃうじゃん、、、)
そうやってしょんぼりしていたら、柊の頭に一つの案が浮かんだ。
「そうだ!!帰ってきたら父さんに聞いてみればいいか!」
そして、時刻は18時。家の外から車の音が聞こえ、父と母が帰ってきたことを悟る柊。仕方ない。今日は玄関まで向かいに行ってやるか。
「父さん、母さんおかえり。」
「あぁ、ただいま」
「わざわざありがとねぇ」
と、父と母が返す。父の名前は白石
「父さん、帰ってきたところ悪いんだけど見てもらいたいものがあるんだ。」
「なんだ?そんな顔を下に向けて。何かやましいことでもしたのか?」
父さんは俺を睨みつけながらそう言った。
「母さんは先にご飯作ってるわね」
そして、玄関には父と息子の二人きりになった。しかし、その場に流れる空気は家族間に流れるような穏やかな空気ではない。その場の空気を叩き切るように、顔を上げながら柊が言葉を放った。
「父さん・・・俺とうとう覚醒したかもしれない!」
・・・・
「まじか!!!!」
こんな厳格そうな父親に、柊は一体何を聞くのだろうと思った者も少なく無いはずだ。しかしこの反応を見れば明らかだろう。何を隠そう、この厨二病が出来上がったのは実の父である智が原因だったのだから。
「そういえばさっきは顔を下に向けてたから分からなかったが開眼したのか!まさか写r...」
「そこまでだ父さん!それ以上は踏み入れてはいけない領域な気がする!この先の話はご飯を食べてる時にしよう!お風呂も沸いてあるから先に入ってきたらどうかな!?」
俺は片方の手のひらを父さんに向けながらそう言った。
「そうだな。少し取り乱してしまった。しかし後で詳しくその目について教えてもらうからな。」
「分かったって。カバン預かるから行ってきなよ。」
「あぁ、助かる。」
そして、料理ができあがり、家族全員で食卓に着いた。
柊は自分の身に起きた事を、茜に話した内容と同じ通りに父と母に伝えた。
「確かに、学校でも生徒たちが急に外が明るくなったと言っていたな」
と、父さんが呟く。
「カラーコンタクトじゃないのぉ?」
「茜と同じことを言わないでくれ!」
俺は机を叩きながら、茜と全く同じことを言う母さんに抗議した。
「そりゃ、そうなるのが普通でしょ!当たり前のように受け入れてるお父さんがおかしいだけだから!」
「自分の息子の瞳の色が変わって興奮しない親がどこにいる!」
「あんた以外だよ!!バカ!」
茜の有無を言わせない迫力に、俺と父さんは借りてきた猫のように静かになってしまった。
「・・・柊。明日は土曜日なんだから眼科に行ってきなさい。」
「父さん...!・・・はい。」
その後は誰一人として口を開くことなく、食事が進むのであった。
____________________
次の日、俺は眼科に行くため、朝早く起きた。
「丁度いい時間だな。準備するかぁ」
俺はそう言いながらベッドから降りようとした。
「いてっ!あれ?どうなってんだこれ・・・」
俺はいつも通りベッドから降りたはずだったが、何故か体に力が上手く入らず、床に顔面からダイブしてしまった。
「なんだよこれ。自分の体じゃないみたいだ。。。」
体を上下逆にした、アホみたいな体勢のままそう唸ってしまった。
そんな事があってから10分程、ようやく思い通りに体を動かすことができるようになった。
「昨日のことで疲れてんのかな」
俺は手を閉じたり、開いたりしながら自分の身体の調子を確認した。
いつも通りに体が動かせるようになった俺は、改めて準備を始めた。
「行ってきまーす」
「はぁい。保険証と診察券ちゃんと持った?」
玄関まで見送りに来てくれた母が、忘れ物がないよう確認してきた。
「ちゃんと持ってるよ。もう子供じゃないんだから。」
「そう。気をつけて行ってきてね。」
「はーい」
眼科が家から近いこともあり、眼科まで徒歩で行くことにした。
「うーん。なんかいつもより体の調子が良い気がするんだよなぁ」
俺はこれでもかと言うくらい、肩をぶん回しながら自分の体の調子の良さについて、不思議に思っていた。
(もしかしてこれは瞳の効果か?いや勘弁してくれよ!目からビームとか期待してたんだぞ!それなのに効果が健康促進だと??俺はまだ健康を気にするような歳じゃないのに!)
そんな妄想をしながら眼科までの道を歩いていたら、曲がり角から自分よりも一回り大きい男が急に飛び出してきた。
それに驚いた俺は体を瞬間的に捻り、その男との衝突を回避することに成功した。
(あっぶねぇ!!急になんだあの男。ていうか、今のよく躱せたな俺。やはりこの瞳には身体能力向上の効果が!?ふふふふ...)
「あの男引ったくりよ!!避けてる暇があるならさっさと追いかけてちょうだい!」
恍惚とした表情で妄想をしていた俺の邪魔をしてきた若干、いや、かなりふくよかなタンクみたいなおばさんが膝に手を付けながら、俺に対してそう叫んだ。
「え?あ、はい!」
普段のへっぽこ癖がある柊は怒鳴り声に対して反射的に反応してしまった。
(いや、でも追いつくわけないだろ。もう結構距離離れちゃってるし...うわぁ、このおばさん顔怖ぇ。取り敢えず追いかけるだけ追いかけて、後で謝るか)
幾多もの死線を越えてきたと言わんばかりに、おっかない顔をしているおばさんの圧力に負け、柊は男を追いかけることにした。
「ん?この男遅くないか。なんか普通に追いつけそうなんだけど。」
俺はどんどん差が縮まるその男に対して、そんな感想を抱いた。
そして、追いついた男の足に自分の足を引っ掛けて転ばしてやった俺は、男が抱えている女性用のバッグを取ろうとした。
そして、その時に男の表情が一瞬見えてしまった。
「!?」
まるで焦点が合ってないような、常軌を逸した表情をしている男を見て、俺は怖くなって全速力でバッグを持ったまま、タンクおばさんの元に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます