第7話
(7)
店を出ると僕はクロスバイクに跨りLINEで松本へ連絡をした。
――こだま君、今朝報道されとったやろ。御堂筋線で起きた遅延事故。中津駅付近の送電用電線が何物かによって切られた事件や。それやがな
なんやそれ?
コールが四回ほど鳴ると向こうで声がした。
#あ、こだま君?
そうだよ!!
#何かありましたか?
いやねぇ!!
僕は声出す。
「松本さん、あんたの言う通り中津の古書店『古風堂』に行きましたよ、そこで蜥蜴みたいな店主に会って『魔香石(ラビリンストーン)』のこと聞いたけど、それよりもなんか今朝の御堂筋線の遅延事故が『魔香石(ラビリンストーン)』と関係するとか言ってましたけど!!どういう事っすか??」
問いただす僕の声向こうで雑音が入る。よく耳を澄ますとその雑音の向こうに何かテンポのいい機械音が聞こえる。何かのアナウンスの様に聞こえるそれが何なのか。
#えっ何ですか、こだま君?蜥蜴って何ですか?
ちゃう!!
「いいよ、蜥蜴なんて。そんな事より、御堂筋の事故の事だよ!!、それが『魔香石(ラビリンストーン)』と関係していると言ってたけど、それって何なのよ!!」
語調を強めた僕の声の後にまた再び聞き覚えのある機械音が鳴る。やはりこれはどこかのアナウンスなんだが、しかし僕は今思い出せない。
#…ああ、御堂筋の事故ですかぁ
そうだよ、そう言ってるじゃん!!
クロスバイクのハンドルを握る手に力が籠る。
#古風堂の店主から聞いたのなら話が早い。さっきこだま君とLINEをきってから直ぐに魔術師組合(ギルド)からチャットが届きましてね、どうもその中津の事件に関連してるみたいなんですよ。それで僕がね、今仕事で移動中なんで古風堂の店主にこだま君に言伝をお願いしたんです。その事件が『魔香石(ラビリンストーン)』と関連しているってことを
直接言えよ!!
僕に!!
全く知らないから驚くじゃん!!
僅かに湧き上がる怒りを抑えつつ僕は松本に問いかける。
「…で、松本さん。あんたもう全体を掴んでるんでしょう?早く結論というか、知ってること教えてくよ、こちとら時間がないんだよ、時間が。休日なんだぜ!!」
僕の強い語調に暫くの間が空いた。青の間にも向こうから聞き覚えのあるアナウンスの機械音が響く。
ほんとこれなんだろう。
聞き覚えあるんだけど。
すると松本の声がする。
#あ、こだま君。悪いんですがラインを切ります。ちょっと車内なんで
車内??
#ええ、じゃ後はメールで送ります。
ちょい待て!!
おいおい!!
するとラインが切れた。
僕はスマホを手にしながら暑い太陽の下、じりじりと焼かれてゆく。
そこで僕はじりじりと焼かれながら気付いた。先程から気になって仕方なかったあの機械のアナウンス音。
あの音の正体は、
そう
新幹線のアナウンス音だという事に。
と、いうことはあいつ今新幹線なんか。
僕は炎天下の下だというのに。
舌打ちしそうになった時、
スマホが鳴った。
見れば松本からのメールだった。
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