第2話 かくれんぼ

 僕の母が心を病むようになったのには僕におおきな原因がある。


 二十年前のその日、僕は妹の葉子と近所の児童公園で遊んでいた。

 この公園で僕たちはよくかくれんぼをして遊んでいた。

 いつものように僕が鬼になり、妹が隠れた。



 もういいかい。

 まあだだよ。

 もういいかい。

 まあだだよ。

 もういいかい。

 まあだだよ。

 もういいかい。

 もういいよ。



 その声を聞いたあと、僕は妹を探した。

 しかし、その日にかぎって妹はみつからない。

 最初はすぐにみつかるだろうとたかをくくっていたが、公園中を探し回っているうちにそれはあきらかな焦りへと変化した。


 どんな探しても妹はみつからない。


 今思えば、あのもういいよという言葉が妹の最後声だったのだ。


 妹がみつからないまま、僕は家に帰った。


 そのことを両親に告げると、一緒になって探すことになった。

 だが、どんなに探しても妹はみつからない。

 必死になって妹を探す僕たちを見て、交番の警察官や近所の人たちも一緒に探してくれたが、ついにみつかることはなかった。



 僕たちは疲れきって、家に帰った。


 きっと明日になったら葉子はひょっこりとあらわれるだろう。

 そんな根拠のない楽観的な思いをたよりに眠りについた。

 そして次の日、妹はみつかった。

 しかし、それは僕たちが望んだ姿ではなかった。

 葉子は児童公園近くの廃屋でみつかった。


 その姿は死体であった。

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