シナリオ41


(この魅了攻撃はマズい……おっ〇〇に視線どころか体まで吸い寄せられる……このルートのどこに自制心があるんだ……!)


 そんな時だった。ゴブリンチーフから貰った『理性の腕輪』がアグリの精神へと訴えかける。(*理性の腕輪を持ってない方はスルーしてください)

『アレは違います……まがい物です……』と。


(紛い物? どういう意味だ?)


 その意味こそ不明だったが、己の理性を取り戻したアグリ。咄嗟とっさに言い訳を思いつく。


「お、俺は……です!」

(*ノンケ=異性愛者、ノーマル)


 このアグリの返答に違和感を覚えた方は思い出していただきたい。現在のアグリは女性の姿なのだ。


「あららザンネン……それなら、なぜ、私の胸に視線が釘付けなの?」


「お、俺も、ラミア様のような豊満ボディになりたくて……」


『その発言のどこに自制心や理性があるというのですか……しかもかなりお下品です。こちらのルートへ理性的プレイヤーを誘導した私の面子が丸つぶれです』


 ピコピコには呆れられたが、話の筋は通っていた。

 しかし、ラミア様のは続いた。


「あらっ、あなたもすぐに成れるわよ? 魔王軍に入りさえすれば……」


「ええっ、マジ! 魔王軍ってどういうところっ!」


 ゴブリンレッドから貰った『マジカル変身セット・限定仕様』は外見が変わるだけで、ステータス(スリーサイズ)には及ばない。この変身アイテムに性別や体型まで変えるほどの効力はないのだ。

 しかし、ラミア様のショーの参加者は、完全に魅了されていた。まやかし以上の効力があった。

 そして何より、巨大なオークを失神させることが出来るほどの攻撃力を有していた。


(それならどうやって……もしかして魔王軍の強さの秘密がココに……)


 そう易々と教えてはくれないだろう、と考えていたら、ラミア様は簡単に教えてくださった。


「魅了は女性の武器よ。魔王軍に入隊すると手術に100%の補助金が出るわ……この胸も特殊シリコン製。昔は絶壁だったのに……Bだったのに月に一度少しずつ……今ではG……」と得意げに実体験を語るラミア様。


(美容整形かよ!)


 半ば呆れると同時に怒りまで込み上げてきた。


(戦争に勝つためにそこまでするのか!)


 そのような手段で戦場の漢たちを魅了し、あまつさえ毒牙にかけるなどあまりに無情、そして卑劣過ぎる。


(オッ〇〇は戦争の道具なんかじゃない! それにデカければ良いって問題でもないのに……魔王軍、俺は絶対にお前らを許さねぇ!)


 アグリは心の底から魔王軍に嫌悪感を抱いた。


『私はあなたのヘンタイ的思考に嫌悪感を抱きました』


  ⚡


 アグリはこのまま魔王軍に取り込まれてしまうのか?

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