第8話





――はぁはぁはぁ…………


…………

訪問者の恒常性維持機能が戻ったことを確認いたしました

…………


――びっくりして……

――ごめん……

 

申し訳ありません 

説明手段を考慮するべきでした 

連邦法ではAIによる個人霊体に対しての危害は 

管理知能のデフラグと該当箇所の圧縮消去が定められていますので わたくしの自我領域の約0.097%の削除を開始し


――わああ!……

――ノー!……


………………

 

――単に吃驚しただけだから……

――大事じゃないから……

――ね…… 

 

………………


――大丈夫だから…………


了解しました 

削除作業をいったん保留とし 

訪問者への説明と登録作業を優先させます


――ああ……

――よかった……


では説明を続けてもよろしいでしょうか


――はい……

――どうぞ……


開拓事業についてですが

アヴァタールはノア・プロジェクトに基づく第七期改造対象惑星です


――………………

 

ノア・プロジェクトは 第二次星間戦争エンケラドゥスの戦いにより 

荒廃した太陽系から銀河各地に人類を繁殖させるため 

連邦議会によって策定された入植計画です

現在は アカシックレコード全宇宙的記憶の情報ですが 

時間にして17,460年後 

距離的には地球からは141.3光年離れています

惑星アヴァタールの回転周期は364.9日 

一日は約24.2時間で 地軸の傾きは24.3度 

四季があり 緯度により気温の変化があります


地球とおなじなのね……


播種にあたっては

旧世界と似た環境を再現することが厳格に適用されます 

人類の外観および内部の環境順応以外の著しい極端化矮小化とならないことが法律で義務付けられています

惑星改造テラフォーミングは16,537年前に第23期工事が完工 現在はメンテナンスを伴う運用中です


――信じられないアンビリバボー……

――でも……

――事実なんだね……

 

環境についてはご納得されましたか


――うん……


それは良かったです ではバックアップについてご説明してもよろしいですか?


――いいわ……


では バックアップに関しても3点ございます

1点目はレベリングです


――レベリング?……


はい 

個人の能力をレベル判定により可視化することで成長を促し 

また他者から評価を一定水準に纏めることで 開拓事業をスムーズに運営できます

また 環境に対する最適化と精神性の向上が作用します 

開拓事業への貢献度合いにより最小はGから 

一般の方はDからです 

最大はSSダブル 特殊な場合にはSSSトリプルが付与されます 

 

――ふーん……


2点目は分類化カテゴライズです 

バックアップのために精神的可塑性を分類化カテゴライズすることにより 

成長方向を個人に合った適正化ができます

大別して九種類に分けられますが 

人格 レベル 家系など

諸条件の補正により 実現すると個人差が生じます


――へぇー……


3点目は多様な特性と称号の付加です 

レベルの上昇に従い より高度の能力評価が行われ 

下地となる個人ステータスを上昇させることが可能となります 

それにより特性を反映させる称号が付与されますと

開拓社会での権威あるいは階級的特典を獲得できます

 

――なるほどねー……

――グラミー賞をとった受賞歌手ってわけよね……

 

はい 

例えば外部からの移民の場合 

咽喉発声部を使用しての意思交流がほとんどの場合ですので 

開拓事業社会へのスムーズな溶け込みのために 

自動的に大脳言語野へ現地語の入力および咽喉発声機能の適正化が行われます

一通りご説明いたしましたが どうでしょうか?


――OK……

――大丈夫ノープロブレムよ……


ではご納得いただけたと受け取り 登録作業を開始いたします 

個人情報アクセス許可ならびに一時的に霊体のメインコントロール権を代行しますのでご容赦ください


――あれ……

――なんだか……

――意識が……………………


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