聖魔惑星アヴァタール
とろん
序 遥か彼方へ、アヴァタールへ
闇黒の空間に煌めく恒星が生まれる水素とヘリウムのガス雲が極彩色に輝き、数えきれないほどの眩い星々が光りを放つ。
人類に残された最後のフロンティア。
宇宙。
遥かな未来、地球から数百光年の彼方。
数十世代にわたる星間航海の果て、発見された未開の惑星があった。
その星にたどり着くまでに人類は銀河全体に広がり、数多の植民した惑星を基に銀河連邦を形成した。拡大とともに人類は、宇宙には想像を絶するいくつもの次元界があり、様々な存在が跋扈しているということを知った。
神々とも呼べる存在。絶対不滅で気まぐれ、うかがい知れない意図を人類に及ぼす存在だ。
人類はそんな超絶の存在と接触しながらも、この惑星にやってきた。メタンと亜硫酸が渦巻く大気と、灼熱のマグマを噴き出す火山が活発に活動する大地。だがこの惑星には酸素と水素の化合物である水で構成される海洋があり、人類はこのアヴァタールと名づけた惑星で地球化工事を開始することを決心した。
地獄の様な環境から生まれ変わった惑星は、表面を覆う青い海洋と、巨大な一つの大陸といくつもの大小様々な島嶼がある豊かな世界へと生まれ変わっていた。
東西を隔てる標高一万八千メートルの高峰を主とした絶対的な山脈群が背骨となり、大きな内海と大砂漠に隔てられた大陸には、遺伝子操作され、人工進化と想像を越える変化をした不可思議な生き物たちが棲息し繁栄するようになった。
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星々の輝く狭間の大闇黒。
なにもない真空の空間に響く何かの絶叫。
闇の中に黒い輪郭が浮かぶと、途端に大きく砕け散った。
――オノレェ……、オノレェ……、忘レヌゾ……。
底知れぬ怨念に塗れている野太く重々しい声が星間空間を埋め尽くす。
砕けたなかでも最も大きな欠片は、深い憎悪の響きを、暗闇を埋め尽くす星々にまき散らしながら、宇宙の果てへと彷徨う星屑と消えていった。
呪詛の声が消え去ると、煙のように形を変える黒い塊が四つ現れた。
不思議なことに、砕け散って残っていた大小様々な欠片を包みこむと、靄のようにその不定形の物体は凄まじい速さで別の宇宙へと飛び去った。
代わって、闇を取り囲む無数に輝く星の一つが爆発するように輝くと、宇宙空間に慈愛に満ちた深い女性的な声が響いた。
――四大ヨ……。探シナサイ。
四つの光りが一際光輝を放ったかと思うと、黒い靄が飛び去った宇宙へと飛び去った。
奇しくもそれは、人類が最後に入植した辺境の惑星アヴァタールへ向かった。
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人類が降り立ったアヴァタールの歴史が始まって二千年、この物語が始まる。
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