ハロウイン・お化け・少女
「素敵素敵。ここが新しいおうちね」
顔中をにこやかにして少女がいいます
そして父親が少し怖い顔で言います
「だが、ここはお化けがでることで有名なんだぞ?」
少女は笑ったまま取りあいません
「明日はハロウィンよパパ。居るなら面白いじゃなーい?」
「心配しているのだよ。荷物も片付かないまま仕事だ
またお前一人残してしばらく置いとかねばならない」
少女は一瞬だけ顔を曇らせますがすぐに笑顔になって
「大丈夫よパパ。ハロウィンなんて祝わなくても明日はくるから」
廃墟みたいな家に片付かない荷物ばかりの箱が山積み
父親はベッドだけ整えて次の日には仕事に出てしまいました
少女は箱の荷物を取り出しながら片づけを始めます
「家具がそのまま残ってるのが嬉しいよね~」
『みんな埃だらけで掃除からだけれどな』
響いた声は頭の中
少女はきょろきょろします
すくっと立ちあがると屋敷中の部屋を扉開けてまわります
どこにもいないと確信すると少女は
外に聞こえそうなほど大きな声で叫びました
「このお家にお化けでるのしってるんだから!!
でできなさいよ!
声かけたなら姿くらい見せないと無礼なんだからね」
『無礼とは難しい言葉しってるな子供のくせに』
少女はまた頭の中で声を聞きました
部屋中をぐるっと見回すけれどやはり姿は見えません
『上だよ小さいの』
少女は真上を見上げます
そして大笑いしだしました
幽霊の声もどこか和やかそうです
『そんなに何がおかしい?正真正銘のお化けだぞ
声を聞いて昼間なのにでてきてやったんだ』
「だって、君なら私でも描けるわ。絵本のお化けそのものだもの
それにとても小さい。私の肩に乗れちゃうわ」
『長いこと幽霊だったこの屋敷で自殺してな
月日が経つごとに姿は薄れ体も小さくなった
食うに困って飢え死に自殺した没落貴族のなれの果てさ』
「そのまま消えちゃっていくの?」
『いやたぶん消えない。自殺者とはそういうものさ』
「少し待ってて!」
少女は料理を作りだしました
ブイヨンスープを2皿もって来ると
お化けの前に置きます
「食べていいよ。飢えて死んだのならお腹空いてるよね?」
『あるのは目と口だけだ。胃袋も無いのに?どう食べる』
「根性無しねぇ。食べ物の匂いや味忘れちゃったの?
思いながら食べるのよ食べさせてあげる肩に来て~」
お化けが肩に来ると小さなスプーンを選んで
少女は食事を口に運びます
口に運んだスープは口から体をすり抜け少女の肩を濡らしていきます
堪らなくなったお化けはいいます
『ほら俺は食事など受け付けない』
「思ってないからよ?食べ物の味思い出して?なにが好きだったの?」
『ブイヨンスープは小間使いたちがよく食べてた
小腹が空くとよく台所に行っては食べさせてもらったよ。不味くはない』
口に運んでも運んでも少女の肩を濡らすスープを見て
お化けがいいます
『口があるのに食べれないなんて悲しいことだな』
「諦めないでちゃんと食べれるから、ほら肩なんてなんともないのよ?」
お化けが悲しい声でいいます
『泣きたくても泣けない。食べたくても食べれない
まるで飢えながら死んだ日を思い出す』
「私はおばけさん苦しめてる?」
『いや、優しさに震えそうだよ。こんなに肩を濡らして平気な顔で
俺にスープを運んでる…そうだないつも質素だと思いつつこのスープは上手かった』
お化けがそう言って口にスープをまた受けます
そうするとスープはまるで蒸発するかのようにお化けの中に溶け込みました
お化けと少女は顔を見合せます
『君は魔女の末裔か?』
「魔女なんて本当にいるものなの?」
『いたよ、昔はな』
「なら魔女でもいいわ?
Trick or Treat
いたずらはもうしないでね」
『な・・・に?』
「今日はハロウィンよ。おばけさんにもいいことがありますように」
お化けが肩を離れ宙を飛びまわる
「おばけさん?」
『小さいが魔力は強力なんだ
でも、もう人を驚かしたりはしないさ
ここには君が死ぬまで住んでくれるのだろう?』
少女が笑う
「そーだね。私も小さい時から一人寂しかったお化けさんと一緒なら寂しくないね」
屋敷はまだろうそくしか使えないはずだったのに部屋にシャンデリアの光が灯ってた
少女は変わりだねの生涯の友をみつけた
お化けは忘れることのない貴重な時間を貰うのだった
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