隠された学問について(魔術について) 抄訳

第一部 第十五章 ものの力を類似によって、どのように見つけ出して調べる必要が有るか

　ものの隠された性質は、四大元素の性質からの物ではなく、上から吹き込まれている、と明らかに成ったし、

ものの隠された性質は、人の感覚から隠されている、と明らかに成ったし、

人の思考力は、ものの隠された性質を、最終的には、かろうじて知る事ができる、と明らかに成った。

　ものの隠された性質は、実に、「星の光」を経由している、「命」、「世界の魂」からの物である。

　人は、経験と推測によってのみ、ものの隠された性質を調べる事ができる。

　そのため、ものの隠された性質の学問に参入したい人は「全てのものは、動いて、自身を類似のものに向けて、隠された力という性質において、四大元素の力という性質において、類似のものを自身に全力で傾ける」と考える必要が有る。

　また、時には、「全てのものは、動いて、自身を類似のものに向けて、実体において、類似のものを自身に全力で傾ける」。

　人が塩において理解しているように。

　なぜなら、長時間、塩と共に存在したものは全て塩味に成る。

　全ての仲介者、代行者にとって、全てのものは、作用し始めると、自身より下のものを創造しようとせず、多分に、自身に類似のものを創造しようとする。

　また、人々は「健康的な動物の栄養の力は、肉を薬草や植物に変えるのではなく、肉を健康な(人などの他のものの)体に変える」事を明らかに理解している。

　このため、全てのものの中には、熱さ、冷たさ、大胆さ、恐怖、悲しみ、怒り、愛、憎悪や、その他の感情や、力といった、性質の過剰さが存在する。

　全てのものの中には、性質が、自然によってであろうと、時には人為によってであろうと、不測の事態によってであろうと、存在する。

　淫らな女性には、大胆さが存在する、ように。

　全てのものは、とても大いに動いて、類似の性質、感情、力を招く。

　そのため、「火」は「火」へ動くし、

「水」は「水」へ動くし、

大胆な人は大胆さへ動く。

　「脳は脳を改善するし、肺は肺を改善する」と医者に良く知られている。

　(中国では「動物の脳を食べると人の脳が改善されるし、動物の肺を食べると人の肺が改善される」と言われている。)

　また、そのため、「カエルの自然な色の布に包んで首に掛ければ、カエルの右目は人の右目の炎症を改善するし、カエルの左目は人の左目の炎症を改善する」と言われている。

　カニの目でも類似の事例が報告されている。

　カメの右手は右手の、左手は左手の、右足は右足の、左足は左足の、痛風を改善する。

　同様に、「不妊の動物は他の者を不妊にする」と言われている。

　特に不妊の動物の睾丸（こうがん）、子宮、尿（にょう）は他の者を不妊にする。

　このため、「毎月ラバの尿（にょう）やラバの尿（にょう）に浸（ひた）された全ての物を飲んでいる女性は不妊に成る」と人々は報告している。

　(現在でも水の入手が困難な場所では家畜の尿（にょう）を飲む人々が存在する。)

　そのため、何らかの性質や力を獲得したい人は、類似の動物や類似のものを探求しなさい。

　類似のものの中には類似の性質が、類似していないものより、優れた様相で存在する。

　類似のものの中の類似の部分を取れば、性質や力が最も強い。

　いつでも愛を育（はぐく）みたい人は、ハト、カメ、スズメ、ツバメ、セキレイといった最も愛を示す動物を探して、心臓、睾丸（こうがん）、子宮、男性器、精液、経血といった性欲が最も強い部分を、動物が愛を最も激しく抱（いだ）いている時に、取りなさい。

　そうすれば、愛を引き寄せる。

　同様に、大胆さを増すには、ライオンやオスのニワトリを探して、心臓、目、額（ひたい）を取りなさい。

　また、このために、プラトン主義者のプセルロスの「犬、カラス、オスのニワトリは、用心深さを大きく助ける」という言葉を理解する必要が有る。

　鳥のナイチンゲール、コウモリ、ミミズクの心臓、頭、目は特に用心深さを助ける。

　そのため、「カラスやコウモリの心臓を携帯する人は、カラスやコウモリの心臓を退けるまで眠れない」と言われている。

　「起きている時に乾燥したコウモリの頭を右腕に縛（しば）りつけた人が眠ると、乾燥したコウモリの頭をはずすまで起きれない」と言われている。

　カエルやフクロウは人の口数を多くする。

　特にカエルやフクロウの舌や心臓は人の口数を多くする。

　水生カエルの舌を眠っている人の頭の下に置くと、眠っている人は寝言を話す。

　オオコノハズクの心臓を眠っている女性の左胸の上に置くと、眠っている女性は自身の秘密を寝言で話す。

　同様に、「ミミズクの心臓、ウサギの腰の脂肪を眠っている人の胸の上に置くと、眠っている人は自身の秘密を寝言で話す」と言われている。

　同様の理由で、長生きしている動物は長生きを助ける。

　「『自分で自身を再生する力を持つ者は人の肉体の再生と若返りを助ける』のは真実であると知っている」と医者はよく明言している。

　毒ヘビやヘビによって「自分で自身を再生する力を持つ者は人の肉体の再生と若返りを助ける」事は明らかである、ように。

　「オスのシカはヘビを食べて若返る」事は知られている。

　同様に、フェニックスは自身のために作った火によって再生する。

　ペリカンには自身を再生する力が存在する。

　ペリカンの右足を暖かい肥（こ）やしの下に置くと、三か月後、ペリカンが再生する。

　ある医者達は毒ヘビ、ヘレボルスという植物、ペリカンなどの動物の肉による糖剤（とうざい）によって若返らせた。

　ギリシャ神話で魔女メディアが老いたペリアスを若返らせ(る嘘の方法をペリアスの娘達に教えて殺し)たように。

　「クマの傷の血を吸えば、肉体の強さを増す」と信じられている。

　なぜなら、クマは最強の生物である。