第36話
【味方生存数:79 敵生存数:91】
僕のせいでもあるけど、輪をかけて味方生存数が減っている。PKじゃないだろうから、イベントで負け越してるのかな。
三日ぶりにログインして、そんなことを考えていたら……特殊イベント空間へと
《マップ中央のシンボルを目指そう!》
たったそれだけのテロップが流れただけで、他には何の情報もない。取りあえず進んでみるかと、ウロウロしてたら迷子になった。しかもこの空間内ではログアウト禁止っぽい。
ランダムワープポイントや回転床、挙句の果てに一定時間で地形が変わるから現在地すら把握できない仕様。マップ機能は使用不可設定だし、一体この状態からどうせよと。
特殊イベント空間自体は、舗装された綺麗な通路で構成されたシンプルな造り。今のところモンスターには出会ってないけど、通せんぼキャラがいる可能性もある。どこかに味方がふたりいるはずだから、運良く合流を果たしたい。
そんなことを考えてると、逆に会えない気もするけど。
逆に会えないとか思ってること自体、フラグっぽいけど。
「あっ!」
「あ……」
通路の先を曲がったところで、顔見知りに遭遇してしまった。これが味方なら最高だったんだけど、狙ったようにそうならない不思議。
「こしあんくん?」
「ボッチリオさん、久しぶり」
まさかの再会、運命の邂逅。特殊イベント空間に誘われるのは敵味方合わせて一日六人だから、約四%の確率で出会ってしまったのにはビックリするしかない。運命の女神様は本当に天の邪鬼だ。
「良かった、味方を探してたんだ。こしあんくんがいれば百人力だね」
「えーっと、まあ、そのような、そうでないような……」
「あはは、王種なんだからもっと自信を持ちなよ」
「いやその、王種とか関係なく立ち位置的に……」
「それは、どういうことだい?」
ボッチリオさんは、僕のことをメイダス人だと思っている。その前提があるからこその親しい態度。それがなくなってしまうと、彼とも戦うことになるのだろうか。
でも騙してるのは気が引ける。いや、ボッチリオさんが勝手に勘違いしてるだけなんだけど。それでも、否定しなかった僕にも、この状況を招いた責任があると思う。
「こういうこと」
装備欄からウッドフレームを外し、残像のキーホルダーをセットした。この後、何があっても対処できるように。テフロンが、ロストの選択をしてまでゲームに残らせてくれたんだ。ここで消えるわけにはいかない。
「ふえっ、本体が消えた……!? まさかそっちが本体……ということはつまり、こしあんくんは……」
「日本人だよ、生粋の。味方じゃなくて残念でした」
「……じゃあ今の僕は、敵の王種と対峙しちゃってるのか」
「バトルする? それとも見逃してもらえる?」
「…………」
ここで戦って勝てるかどうかは分からない。自信はあるけど、ボッチリオさんの実力が未知数すぎる。しかもメイダス側は日本人側より、このゲームに関しての情報量が多いようだし。
「逆に聞くけど、こしあんくんは戦いたいの?」
「まさか。このイベントはシンボルに到達するのが目的だし、バトルを回避できるならそうしたいかな」
ボッチリオさんは味方同士のPKに抵抗があったはずだ。でも日本人プレイヤーに対しては、敵だと認識していた。普通に考えたら、僕を見逃すなんてあり得ない。
「だったら僕は戦いもしないし、見逃しもしない」
「え?」
「シンボルまで一緒に行こうよ」
「はいぃぃぃ?」
おっと、変な叫び声が出てしまった。僕、敵ですよ? しかも、ボッチリオさんの仲間を何人もキルした戦犯ですよ? そんな奴と共闘なんて……思考回路が意味不明すぎる!
メイダス的な思考なのか彼独特の性格なのか。それは分からないけど、とても興味が出てきたのは確か。
ここは、お誘いに乗っておこうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。