第63話

 大型のアッパーガルムはフィールドに十体だけ出現している。無尽蔵に湧く感じではなさそうだ。それでもダーティーオーガの数倍大きいから、走ってきたときの迫力が段違い。とにかく一匹倒してステータスを確認しなければ。


「アタック!」


【92】【92】【92】【92】【92】【92】【92】【92】【92】【92】【92】【92】【92】


「あれっ?」


 先行してきた二匹に攻撃が当たったのに即死が発動しない。まさか、耐性持ち……?


「ストロングにゃ! ライジングサンにゃ!」


 ニャン汰さんの物理攻撃力は【723】、そこにストロングの効果が乗ると【1084】になる。さらに新しく覚えたスキル、ライジングサンは【LV1】でも二倍のダメージを与えるので【2168】。しかも彼女は速度にもSPを振ってるから、五回攻撃だ。


【2168】【2168】【2168】【2168】【2168】と、一瞬で一万以上のダメージを敵に与えた頼れるネコ。十三回も当てて【1196】しかダメージを与えられないこしあんとは大違いだ。


「にゃにゃ~? 削りきれないにゃ~」


 しかし、その攻撃をもってしてもアッパーガルムのHPバーは、半分も減ってない。


「エナジーバースト」

「エナジーバースト」

「エナジーバースト」

「ホーリーバースト」


《congratulations 経験値と12000Gを獲得!》

《クランポイント400を獲得!》

《討伐ポイント200を獲得!》

《経験値玉手箱(特大)を2つ獲得!》

《ガルムシールドを2つを獲得!》

《クランポイント玉手箱(特大)を2つ獲得!》

《討伐ポイント玉手箱(特大)を2つ獲得!》


「シールド!」

「シールド!」

「シールド!」

「シールドにゃ!」


 いつでもミルクティーの賢者とビショップが、立て続けに放った上級呪文の嵐で、ようやく先行した二匹が消滅した。でも、その後ろからすぐに後続が迫っている。


「ウオォォォーーン!」


 アッパーガルムの遠吠えと同時、黒い波動がパラディンたちを襲う。


【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】

【61】【61】【61】【60】


「うわっ」

「なんの!」

「ひぇ~」

「クッ……」


 属性攻撃の耐性がマックスのヴァネッサと、パラディン三人衆のダメージが殆ど変わらないだって?


 ……ああ、なるほど! パラディン三人衆はセカンドジョブがヒーラーから昇華したピショップ。そのジョブ特性は【被魔法ダメージ35%ダウン】。こと魔法攻撃に関しては、ヴァネッサより耐久力があるのか。


 それでもシールド込みでこのダメージはキツいと思う。自然回復が追いつかないし、群れで来られると回復魔法も追いつくかどうか。とりあえず敵のステータスを確認して対策を講じなければ。



 アッパーガルムLV??

 HP 40000

 MP 10000

 物理攻撃力 0

 魔法攻撃力 800

 物理防御力 0

 魔法防御力 0

 速度 20

 幸運 0


【能力】

 三回攻撃・闇属性範囲魔法・麻痺無効・即死無効


【持っているもの】

 N 経験値玉手箱(特大)

 R ガルムシールド

 UR 討伐ポイント玉手箱(特大)・クランポイント玉手箱(特大)



 ガルムシールド 防御力+0 麻痺耐性30%・即死耐性30%



 うはっ、HPがめっちゃ高い。三回攻撃までするのか。しかもやっぱり即死無効持ち。こしあん無双はここまでのようだ。


 入手したガルムシールドはナイト系専用装備だけど、すでに耐性のある僕たちには必要ない。


【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】

【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】


「きゃっ、強い強い」


【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】


「ちょ、無理! 回復ちょうだい!」


【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】


「ハイエリアヒール!」

「ギガエリアヒール!」

「賢者の石っ!」


【61】【61】【61】【60】【61】【61】【61】【60】


 厳しいけど、回復しながらだとなんとか持ちこたえられる。ここが正念場ってやつだ。


「ここまでね……」

「残念だけど、そうみたい」

「え? でも何とかなりそうですよ?」

「だって夜更ししたら、お肌が荒れてしまいます」

「そうよ、回復魔法を唱え続けてたら寝られないでしょ」

「明日はお仕事が……」


 いつでもミルクティーは女子クラン。しかも社会人も混ざってる。学生の僕と違って、朝まで無理するなんて不可能だった!


 何とか、何とかここを乗り切る方法はないものか……。

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