第13話
ナナさんは冒険者ギルドで戦闘職を探していたらしい。そこに僕が現れたので、哀れみから思わず声をかけてしまったようだ。その優しさに報いたい。
他にふたりパーティメンバーがいるらしく、街の入口で待っているとのこと。僕はこしあんを操作して、彼女の後をついて行った。
「ナナ、こっちこっち」
「ナナ、どうだった?」
「うーん、シーフの人を誘ってきたよ」
声をかけてきたのは、さっきもこの辺りにいたオカンとオトン。オカンさんは鉄装備で固めてるからナイトだろう。オトンさんは杖を持ってローブを羽織っているのでメイジかヒーラーかな。ナナさんがレンジャーなので、なるほど火力が不足しているわけだ。
「こしあんです、よろしくお願いします」
「ああ、よろしくね。アタシはオカン、ナナの母親でナイトだよ」
「俺はオトン。ナナの父親でヒーラーだ」
「え、リアルファミリーですか?」
「そうだよ、悪いかい?」
「いや、理想的だなと思って」
家族で同じゲームを遊ぶなんて、最高に素敵だ。時間も合わせられるし、何より友だち以上に気兼ねなくプレイできる。僕も兄貴を誘ったことがあるけど、『音楽以外は興味ない』と断られた経験があった。お前、ミュージシャンでもないし、アイドルソングしか聞いてないだろ! と思ったのは懐かしい記憶だ。
「そう言われると照れるな」
「うちは家族全員、ゲーム好きなのよ」
「なんか憧れますよ、そんな家族」
「ありがとさん。でもシーフだと火力が足りないねえ」
「ナナ、もう一回勧誘してきてくれ」
「だよねー、分かった。ちょっと待ってて」
「あ、待ってください」
くるりと反転して歩き出したナナさんを止める。
「僕、これでも物理攻撃力【147】なので、火力は足りると思います」
「えっ、シーフなのに?」
「先行組の知り合いに良い武器を貰ったもので」
「へえ! いいなーいいなー」
「それなら楽勝だね。【147】なんて、どこを探してもいないだろうさ」
「よーし、じゃあこのまま行くか。さっさとトカゲを倒そうぜ」
《ナナさんからパーティに勧誘されました。 受ける/受けない》
パーティ勧誘がきたので、迷わず受諾。これで僕もナナファミリー(仮)だ。さっきまで他人だった人と、こうして一緒に遊べる楽しさ。これだからMMORPGはやめられない。
「改めてよろしくね。私はナナ、レンジャーだよ」
うん、その情報は知ってる。しかもパーティになったから、少し詳しい情報も確認できるようになった。
キャラネーム オカン
ジョブ1 ナイトLV5
ジョブ2 なし
HP 375
MP 20
物理攻撃力 10+14(鉄の槍)
魔法攻撃力 2
物理防御力 45+23(鉄の盾・鉄の鎧・鉄兜・レガース)
魔法防御力 15
速度 2
幸運 1
ジョブ特性 被物理ダメージ20%ダウン
ユニーク特性 HP25%アップ
ジョブスキル ガードスタンスLV2 タウントLV2
シールドバッシュLV1
キャラネーム オトン
ジョブ1 ヒーラーLV5
ジョブ2 なし
HP 170
MP 210
物理攻撃力 5
魔法攻撃力 21+15(鉄の杖)
物理防御力 12+7(革の盾・絹のローブ)
魔法防御力 22+3(革の帽子)
速度 4+1(革の靴)
幸運 11
ジョブ特性 被魔法ダメージ20%ダウン
ユニーク特性 回復魔法効果20%アップ
ジョブスキル ヒールLV2 ウィークLV2 キュアLV1
キャラネーム ナナ
ジョブ1 レンジャーLV5
ジョブ2 なし
HP 125
MP 130
物理攻撃力 15+12(鉄の弓)
魔法攻撃力 13
物理防御力 15+5(革の胸鎧)
魔法防御力 10+3(革の帽子)
速度 11+1(革の靴)
幸運 11
ジョブ特性 ヘイトダウン
ユニーク特性 HPオート回復力22%アップ
ジョブスキル ストロングLV2 ヒールLV1 パワーアローLV2
さすがにゲーマー一家なだけあって、みんなユニーク特性は【20%】以上になるようリセマラしたようだ。それにしてもオカンさんの物理防御力がハンパない。火力はないけど、リザードマン程度の攻撃力ならダメージを一切受けないだろう。
オトンさんも物理防御力にステータスを多少振っているので、そこそこのHPになっている。それに彼は後衛職だから、そもそも攻撃が飛んでこないはずだ。ヒールがあるのも心強い。
ナナさんは、可もなく不可もなくのステータスだ。このままだとリザードマンには攻撃が通らなさそうだけど、ストロングLV2(味方単体の物理攻撃力と魔法攻撃力を10%アップさせる)を持っている。オトンさんのウィークLV2(敵単体の物理防御力と魔法防御力を10%ダウンさせる)と合わせれば、リザードマンに【2~3】のダメージを与えられるはずだ。【HP900】のリザードマンを倒そうと思ったら果てしないけど。加えて弓職なので、彼女にも攻撃は飛んでこない。
時間はかかるけど、この三人だけでクエストを達成しようと思えばできなくもない構成だ。
それにしても【LV5】でこの強さ。こしあんは【LV10】なのにステータスがパッとしない。三人と違って新しいスキルも覚えてないし、シーフが敬遠されるのは、そんな理由もあるんだろうな。
「こしあんさん、本当に物理攻撃力が【147】あるんだね!」
「でも紙装甲だからソロじゃキツいんです」
「そこはアタシに任せておきな。キッチリ護ってやるよ」
「俺の出番はなさそうだな」
「私も見学でオッケーみたい」
「いやそんな……でも、頑張りますよ」
こうして僕はリザードマンとのリベンジ・マッチに挑めることとなった。道中、三人とフレンド登録もしてもらい、フレンドリストが四人に増えたのも嬉しい。当たり障りのない会話を続けて橋の前まで帰ってくると、宿敵リザードマンが待ち構えていた。
待たせたな、トカゲ野郎。今回こそは負けないぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。