第11話『どうしてこうなった』
ここから第二部です
あの事件から2ヶ月が過ぎた
事件の詳細は極秘にされ、『なぞの奇病が流行った!』等と一時期地元の新聞紙で少し取り上げられる程度だった。
市長は利権にまみれた汚職が発覚し、解任となり、今は新しい市長が取り仕切っている。
そう言えばあの後すぐに盛大な祭事が催され、厳かに神の座を用意されたとの事だ。まぁ、あいつらちゃんと神様やってるのかと少し不安になったが…
それ以降はどんな些細な事でも必ず神様へと報告し五穀豊穣の祈願を行っているようだ。
この街は桜の名所であり、そこかしこで桜が気持ち良さそうに花を広げていた。久しぶりの満開の桜が揃う公園などは、家族がお花見を楽しんで居るのだろう、まさに平和!あいつらのおかげ様々なのだろう。
なのに俺は…
警察所の取調室に居た…
休日にまったりと惰眠をむさぼっていると、玄関をノックする音が聞こえた。我が家は安アパート、チャイムなんてものは存在しない、俺は起き上がり、相手の名前も聞かずそのままドアをあけたのが不味かった。すぐさまドアの内側に入り込まわれると。
「八神健さんですね?私は五泉警察署刑事課、鷲尾と言います」
「八神さんあなたには、警察署への同行をお願いします」
藪から棒に言ってきた
「はい?」
その後、身支度を整える時間を貰い、パトカーに乗せられ、警察署へと連れられ、手荷物全てを取り上げられ、取調室に連れて行かれ現状に至る。
「八神さん、アンタねぇ今傷害罪の疑いで訴えかけられてるんだよ」
鷲尾と名乗る刑事はそう言って来た
「はぁ!?」
「俺は何にもしてませんよ!?」
「まっ、やった人は皆んなそう言うよ」
「決めつけないで!?」
「まぁ俺も、ある程度の事は下調べしてある、だからこそこんな事は言いたかないんだよ」
「アンタ、2ヶ月前やったね」
そう言えばそうだった、でもあの時の俺はヒエと呪いに侵されていて。何処まで自分自身だったかよく覚えてない、が説明した所で解ってはくれないか。
もしかして、あの時の声が言った『あなたの罪になりますが宜しいのですね』その時俺は言った、別に良いですよと、あの時の意味は
これかぁああああぁ。
そう思い俺は顔を下に向け
「はい…やりました」
「その件について御家族から、アンタを訴えかけられてるんだよ」
「でも一発殴っただけでしょう?」
「そうなんだよ、一発殴った位じゃ、こっちもそこまで相手にしてない」
「だけれども相手の病状がね、殴られた傷は大した事は無い」
「だが毎日、高熱にうなされ、ガタガタと毎日震えて、夜になると突然大声を出したりしているそうだ」
「心当たりは?」
「殴った事しか認めません!」
「だよな!」
そう言うと刑事は笑った。
「いやぁスマンかったねぇ、あんたの事はある程度調べてある、2ヶ月前の事件アンタ関わってるんだろう?」
そして、机の上に資料を投げ出す
「まぁこの資料は、所謂トップシークレットだと思ってくれ、俺はあの時、野次馬を追っ払うのに駆り出されててな」
「だから、その時の事はもう調べが付いている」
「まぁ、その家族が余りにも五月蝿くってしょうがない、だから建前上な、アンタにご同行となった訳だ」
「なぁ呪いなんてものは本当にあったのかい?」
「さぁ?」
「もう終わった事ですよ…」
「今はもう働いて?」
「派遣社員ですけど今はこの街の会社で働いて居ます」
そう俺は、何とか生活保護を抜ける為に日々頑張っている。
「資料通りっと」
「そんな事まで調べてあるんです?」
「まぁ仕事柄ね」
鷲尾刑事が警官に呼び出される、俺の方を向いて
「スマン来客だ、お茶でも飲んで待っててくれ」
そう言うと取調室を出ていった。
お茶を飲んで待つ、せっかくの休日なのにもう半分無駄になった。
別にする事無いけれどね!
30分程待たされた、いい加減イライラが募って行く。
それから5分後、やっと戻って来た。
「いやぁスマンスマン手続きに手間取ってな、アンタもう帰って良いよ、迎えが来てる」
「迎え?」
心当たりが無い
「それとアンタの傷害の件だけど、此方で上手く処理しとくから。心配すんな、まあ万が一の場合がある、これ持ってけ」
紙切れを渡された、電話番号が記されている
俺はため息をついて
「これはどうも」
とだけ言って取調室から出て、手荷物を返してもらう。
そしてロビーに向かうと、塚田さんと、何故かヒエとヤエのカップルが興味深そうにあちらこちらを見ながらそこに居た。
さっと身を隠す、あんまり出て行きたくない。少し観察して見る事にした。
塚田さんはいつも通りだ、仁王立ちで俺を?待っている。
それよりも驚いた事がある、ヒエとヤエが普通に警察官に挨拶している!
何で!あいつら一応神様だろ、何でそこに居る!しかも洋服姿だ、どうなってるんだあの神様達は!
出ていくのは嫌な予感しかしない、裏口を探していると
「おおアンタそんなとこに入っちゃ駄目だよ!」
さっきの鷲尾刑事が大きな声を出す
そしてロビーへと引っ張り出された
「お待ちしてました八神さん」
「どっどうもこんにちは塚田さん」
別に久し振りの再会というわけではない、月に一度収入報告しに行ってるからな。
「ちょっと私達の方に先に挨拶しなさいよ」
ヒエとヤエに腕を引っ張られる
「すまんな、どうにも言う言葉が見当たらなくてな。まっ久し振り!」
「全く!」
ヒエに足を蹴られた
「いてぇ!」
「そこまでです、お話は市役所でゆっっっくりとしましょう、さあ!さっさと車に乗る!」
塚田さんに促され車に乗る、ヒエとヤエも一緒だ。
「まぁヒエ様とヤエ様については、改めて話をさせて頂きます」
車を走らせる塚田さん、警察署から市役所迄は10分程で辿り着く。
その間も二人の女神様は、いちゃついていた。やはり再会させて良かったのかと疑問に思う、すると頭をヤエに殴られた。
「あんた今何考えていたのかしら?」
笑顔が怖い
「いやあんたら本当に仲が良いんだねって思ってさ」
「それはもちろんよ、私とヒエは、二人で一つ一心同体!何より愛がそこにはあるのよ!」
「あんまり拗らせないで下さいね」
とだけ言って塚田さんを見る、何だか緊張してるみたいだ。
「着きました、さあヒエ様ヤエ様どうぞ先程の部屋へどうぞ」
「わかってるわよ、さっ行こうヤエ」
「塚田さん、貴女…」
「しょうがないじゃないですか、神様ですよ!」
取り乱している、何か問題でも発生したのだろうか?
二人でその部屋の前に立つ
「ここって、この前の事件の時に使った小会議室じゃないですか」
「早く入って下さい」
促されて部屋の中に入って見ると、ヒエとヤエが座っていた。
「遅いわよ!」
「はいはい、ごめんなさいごめんなさい」
「気持ちがこもってない!」
ヒエとヤエに怒られる、もういい加減にして欲しい早く帰りたい。
「いいわよ、ちゃんと話を聞いてくれれば帰してあげるから」
へっ?俺は声に出してないぞ
「残念かしら?私とヤエとあんたとの間には繋がりが出来ているの、気付いてないの?」
「あんたは私達を一度その身に宿して、受け皿となり私達に神気を分け与えたのよ、ある意味繋がりは出来て当然よね」
「俺には何にも感じないぞ?神気だとか」
「ふ〜ん、まっ私達には、あんたの考えている事はお見通しってわけ」
じゃあ更に遠慮する必要はないな、この二人には、そう心で思ってみると
「そうそう、そういう事!」
すると塚田さんが割り込んでくる
「ヒエ様ヤエ様そろそろ本題に」
「あ〜そうね」
と言うか何故コイツらは他の人間にも見えているのだろう?
「そこんところも、ついでに後で説明するわよ」
「はいはい」
「良い?この街に今!新たなる脅威が迫っているの!」
お前ふっざけんなよ、そんな物騒な話はお前等の仕事だろうが
「まっそう言われると思ったわ」
ヤッパリ読まれている
「とにかく私達では、少し力が足りないの、だから私達を救ってくれた、あなた達の力が今必要なのよ!」
お断りします、俺には明後日仕事がある。
「駄目よ」
でしょうね
「そもそも最初に、あんたの所に行ったのに、気付かなくてさ!どんだけ寝てるのかと思ったわよ」
「それで私はヤエと一緒に京子の所へ向かったのよ」
「京子!?」
「私の名前ですが何か?」
「いえ何でもありません」
塚田さんには、心が読まれないから正直に答える
「とにかく私の元へ女神様方がいらっしゃいました」
「それは気の毒…」
スパンとヤエに頭を叩かれる
やりづらい
「流石の私も驚いてしまって、声が出ませんでした」
「とまあ、そんなこんなで京子とあったんだけど条件出されてね」
まさか
「そっあんたの同席が条件って訳」
「塚田さん、俺もう頑張ったよねゴールしたよね?もう仕事もあるんだよ?」
「それについては申し訳ないと思っています」
俺の口から大きな溜め息がこぼれる
「じゃあその前に、お前等何で人間になってんだ?」
「そりゃ私達神様よ?これぐらい朝飯前よ!」
「そもそも私とヤエをあんたが認識出来ない様だから、わざわざ人の身になってあげたのよ」
「ちなみにこの服は、京子の物よ似合う?」
違う意味で泣きそうになる。
「とにかく!健あんたにも話を聞いてもらうわよ」
ヤエが言った。
「分かった分かった、聞くだけな聞くだけだぞ!」
ヤエが話を始める
「あれから、あなた達のおかげで私達には、新しく神の座が出来て、この街へと降りることが出来た。多くのものを見渡したわ、でもまだ力が及ばない地域もあるのよ」
「そこには綻びが産まれていたの、まだそれは産まれたばかり、今ならまだ簡単に払う事ができるはず」
「ちょっと待って!何でお前等が行かないんだ?神様でしょう」
「私達が対応出来る力は、この地へ繁栄をもたらす事、今はその為に力の大半を注いでいるわ」
「今までのぶんも埋め合わせる為にね」
ヒエがヤエの手を握る
「「だからお願い、もう一度力を貸して!」」
「断る」
即答した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます