もう一度婚約したいのですか?……分かりました、ただし条件があります

香木あかり

第1話

「ララ、悪いんだけど、他に好きな人が出来たんだ。彼女は僕の理想なんだ。だから君とは婚約破棄をする!そして、彼女と結ばれるんだ!」 


「婚約破棄?承知しました。では、ごきげんよう」


気分によって言うことがコロコロ変わる「思いつき王子」こと第二王子のレナードが、私に婚約破棄を宣言してきました。


「え……それだけ?もう少し縋ったりしないのかい?」


「えっと、縋ったほうが良かったですか?申し訳ありません。でも政略結婚するより、好きな人と結ばれたほうが良いと思います。ですから応援していますわ。それでは失礼します。あ、書類は私の方で提出しておきますわ」


「え?……あ、あぁ」


せっかく婚約破棄を提案してくれたのです。こんな機会、逃す訳にはいきません。また気分が変わらないうちに、手続きを完了させておきましょう!


ララはその足で早速、婚約破棄に必要な書類を提出し、晴れて自由の身となった。


あーなんてスッキリとした気分でしょう。肩の重荷が下りたようですわ。もともと国王陛下がお決めになった婚約ですもの。結婚して「思いつき王子」をコントロールしろだなんて、どんな罰ゲームかと思っていましたの。


これからは私の好きに生きられるのね!最高だわ。さようなら、レナード。さようなら、罰ゲーム。


そう言えば、レナードの新しいお相手ってどなたでしょう?最近レナードと親しくしている伯爵令嬢のミラかしら?彼女って確か……まぁ、どうでも良い事です。レナードのお相手をしてくださって、ありがとうございます!




なんて喜んでいたのは、ほんの少しの間だけでした。レナードが一ヶ月しないうちに、再度婚約を求めてきたのですから。


「ララ……どうしてあの時、止めてくれなかったんだ!あいつは僕の理想なんかじゃなかった……!なあララ、君こそが僕の理想だったんだ。僕とやり直そう」


「お断りします」


「君と僕こそ運命の糸で結ばれているんだ!だから……」


「それは気のせいです」


「僕と結婚すれば、君は何でも手に入るんだぞ!」


「結構でございます」


毎日毎日、しつこい方ですね。どうやらレナードは、新しいお相手のミラと上手くいっていないようです。まあ、当然でしょう。


伯爵令嬢のミラは、社交界の女性達の間ではちょっとした有名人ですからね。自分の家の財産には一切手をつけず、男性にねだりまくり、奢らせまくる「敏腕の財布ハンター」と陰で呼ばれているのを聞いたことがあります。


レナードは知らずに婚約したようですが、王家の財産を好き勝手にされそうなのでしょう。だからって同情はしませんけど。これ以上言い寄ってくるなら、私にも考えがあります。まずは国王陛下にお話ししなくては……。




翌日も懲りずにレナードがやってきました。


「僕が悪かった、ミラとは別れてきたんだ!もう他の女を理想だなんて言わない。だから、もう一度婚約してくれないか?愛しているんだ、ララ」


どの口が言っているのかしら?もう断る口上も尽きてしまいそうです。仕方ないですね……


「もう一度婚約したいのですか?……分かりました、ただし条件があります」


「本当か?何でも言ってくれ!」


「では……」

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