甘すぎる恋

zero

「お泊り会ってことで…♡」

学校が終わり、家に帰る途中、雨が降ってきた。

「ああもう、いきなり過ぎて傘もって来てないじゃん…。」

もういいか、と僕はつぶやき走って帰った。

「ただいま。」

そう言い僕は自分の部屋に向かう。

ピンポ~ン

「しずく〜いる〜?」

……居留守でいいかな……。

「おい〜。無視か〜?」

早く帰れ……。頼むから…。

「じゃあ……。」

おっ、帰るのかな…?

「強硬手段だ!」

「やめろ!合鍵はやめろ!」

彼は蓮。弥上蓮だ。僕の家の合鍵を持っている唯一の人だ。そして…。

「も〜。お前、僕に厳しくない?幼馴染だろ?」

「お前家に入れると変なことするだろ。僕は一人の時間がいいんだ。」

まったく…ここのところ毎日家に来るんだよ…。しつこくて断れないけど。

「まったく…。それだから昔からしずくは友達が少ないんだよ?」

「ッ…。余計なお世話だ…。」

友達は蓮だけでいいなんて、言えないよ…。

「………………。」

「な、なんだよ…。近いんだけど…。」

「顔、真っ赤だよ?」

な、ななな…。昔から表情が、顔に出てしまうやつだとは、言われていたが……。

「そそそ、そんなことないッ!」

「ふーん……。」

な、なんだそのにやけた顔は……。やめろ…そんな顔しないでくれっ…。理性が…負ける…。

「お前をからかうのやっぱおもしろいな〜。」

「うぅ……。ひどいよ〜。」

涙が出る……。涙腺はとても緩いほうなんだ……。

「あ~、すまんすまん。な、泣くなって。なぁ。」

「ひぐっ…。ううっ…。」

蓮は、僕の涙に弱い。昔から僕が泣くと蓮はうろたえてどうしていいかわからなくなった。

「あぅ……。なぁ、泣き止んでくれません……?ほんとに…。せっかくのお泊り会なんだからさ…。」

そう、僕は今日、蓮とお泊り会をすることにしたんだ。今日が金曜日で、明日、明後日と二泊三日泊まることにした。これを提案したのは、蓮だ。急に学校で、

「なぁ、今日お前んち泊まりに行ってもいいか?」

「は!?急になにいって……。」

言われたときはすごく驚いた。なんせ、あまり関わりはなかったし…。強いて言うなら、一緒に美化委員やってることくらいかな。でもあまり関わりがないのは学校でだけ。学校以外では、関わりまくりなのだ。

「なぁ、いいだろ?僕たち幼馴染でしょ?」

「うぅ…。わかったよぉ。」

このとき、許可を出さなければよかった。本当に。

「じゃあさ、今日と、明日明後日土日で休みでしょ?僕たち部活やってないから、土日もいいか?」

な、なんてやつだ。と思ったね。計画的犯行だったのだ。注意深くいろんなことを確認しなかった僕が悪い。

「わ、わかったよ。もぅ…。あ、先断っとくけど、一緒に風呂は入らないぞ?」

「ええっ!?マジかぁ…。」

期待してたのかよ。もう中学生なんだ。いくら幼馴染だからって一緒に風呂は入らないよ…。

「はぁ、あのとき断っとけばよかった…。」

「そんなこと言うなよ。久しぶりのお泊り会だよ?楽しんでいこうよ。」

……よくそんなこと平然と言えるな。こっちは、君のせいで心臓バックバクなんだけど………。

「まぁ、昔っからしずくの泣き虫は変わらないな。」

「な、なんだと!僕だって、僕だって……ふぇ…ぐすっ…。」

「あぁ…悪かった、僕が悪かった!だから泣かないでくれぇ…。」

もぅ……。君のせいで泣きっぱなしだよぉ…。

「まぁ、とりあえず荷物の整理、しようか。」

「……うん。」

蓮は持ってきたかばんを整理し始めた。そこに僕も加わって、一緒に整理を始める。

「…よし。着替えはオッケー。あ、タオル貸してね。」

タオル持ってこなかったのか…。もしかして、僕と一緒のタオル使うのが目的なんじゃ…。

「…今、良からぬこと考えてたでしょ。」

「えっ、い、いや…そんなこと…。」

「正直に言いな。」

…うぅ、そんな目で見つめないで…。心がドキッとする…。

「はい…。蓮と同じタオル使うのハズいって思ってました…。」

「正直でよろしい。でも、そんなことを考えていた君には、お仕置きが必要みたいだねぇ?」

と、蓮が顔を近づけてきた。

(ダメッ…。そんな近くに…。ってか、近いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。)

いや…僕…ファーストキス残ってるのに…。

「と、思っていたが、おあずけだな。」

「えっ?」

「あははっ、お仕置きは夜、布団のなかでね♡」

ぞくっと、寒気がする。これは今夜、まともに寝れないな…。

そう、昔からそうだ。蓮は、悪魔的な性格なのだ。顔は、いかにもショタっ子というふうで可愛くて、モテるのだが、僕といるときの性格はこうだ。いや、僕が自意識過剰なのかもしれないが、なんか…皆にはツンツンしてて、僕にはデレデレなようにしか見えないのだ…。まぁ、そんな蓮が好きなのだが…。

「僕にしか見せない君が好き……。」

「え?」

「なんでもないッ!!」

一気に顔が赤くなる。きっと僕は今、耳まで真っ赤だろうな…。

「よし、片付け終わったし、ちょっと遊ぼうよ。」

「あ、う、うん、そ、そうだね。」

あ~だめだ。言えるわけない…。蓮に好きなんて……。恥ずかしすぎるよぉ…。

「なにする?ドラゴンカードでもする?」

「あ~いいね。勝ったほうが負けた方に何でも命令できるってルールでいいよね?」

…我ながら大胆な提案したなぁ。

「フッフッフッ。これは勝って、しずく君にいやらしいことしないとねぇ。」

「………!!!」

もうこの提案を後悔し始めている…。

そして、勝負が案外長引いて、結果…。

「ライフ数は、同じ3だけど、ボーナスポイントをあわせたら僕の勝ち!」

いや、予想はできていたけど。なんせ、僕は蓮にこのカードゲームで一回も勝ったことはない。

「おい?覚えてるよな?」

「ん…何でもいいよ…。」

すると蓮は少し考えて、こう言った。

「じゃあ、僕と一緒にお風呂はいろ♡」

「ッ!?い、いや流石に…。」

いや、提案したのは僕だし…。

「わかったよ…。いいよ…。先、入ってて」

「はーい♡」

ったく…。蓮も甘えん坊なところは昔から変わらないなぁ。

そう、蓮はいつもいつも僕以外には甘えない。小学校の時によくクラスの女子が話しかけてきたり、告白も何回かあったはずだ。しかし蓮は、

「ごめん。僕そういうのよくわかんなくて…。」

とか、なかなかの塩対応だ。時には、

「そういうの興味ないんだよね…。」

などとバッサリ切り捨てたりする。今も昔も、学校で蓮と関わることはあまりなかった。ずっと美化委員一緒にやってること以外。蓮も僕もきれい好きなのだ。

「……入るよ…。」

「いいよ〜♡」

ゆっくりと戸を開けて、入る。

「おぉ!今も昔も、やっぱりしずくのスタイルは可愛いなぁ。」

「う、うるさい!」

よく言われることだが、やっぱり照れる…。

「可愛いよ。 女の子みたいで。こう…なんか…犯したくなっちゃうような♡」

「……………したい…?」

な、なに言ってんだ僕!?

「……してほしいの?だったら、しずくからおねだりしてほしいなぁ♡」

「……誰がするか…。」

蓮の悪魔の囁きみたいな言葉にドキッとしながら浴槽に入る。

「ねぇ、しずく。」

「…なに…。」

「こっち、来てくれない?」

行ったらなんかされそうだなぁ…。まぁ、行くけど…。蓮のほうに行き、僕より少し大きい蓮の足の間に入る。

「しずくって、一緒にゲームしたり、お風呂入ったりするときさ、いつもこの場所だよね。」

「なんか…すっぽりはいって…気持ちいいんだよね…。」

「でもさ、しずくが僕のところにいるってことはさ、僕、しずくにやりたい放題じゃん。」

知っていたが、なんで今言うんだ?

「……もう好きにして…。」

「じゃあ…お言葉に甘えて…。」

そこはあまえないでほしいけどなぁ。

「して…いいよね?」

「…………。」

蓮は沈黙をオッケーとみなしたようで、耳に息を吹きかけてきた。

「ひゃうッ!?」

「あはは、いい反応だね。」

と言うと蓮はさらに、首を甘噛みしてきた。

「んっ…んんぅ…。」

「…しずく…可愛いよ…。」

「ねぇ…もっと…してよ…。」

蓮は僕の発言に驚いたのか、

「…やっとそっちからおねだりしたね?」

「ん…。」

「しずく、こっち向いて。」

言われるままに蓮のほうを向くと、蓮の柔らかな唇の感触が伝わってきた。

「んっ!?んんッ!?」

舌が…絡みついて…心地いい…。

「ぷはッ…。」

「ん…蓮…僕のファーストキスが…。」

「ははっ。僕もファーストキスはしずくだよ。」

そういう問題じゃ…。しかも初めてで舌入れられたし…。

「………ぐすっ……。」

「え!?ちょっ、泣くなよ?ねえ…そんなに嫌だったのか?」

「ちがう…違うよ…ただ…。」

いきなりすぎて、びっくりしちゃって…。

「…もう…上がろっか?」

「うん…。」

と、僕と蓮は一緒に風呂を上がり、布団が敷いてある部屋に移動した。

「はぁ…。蓮…ねぇ…。」

「ん…?どした?」

どさっ、と僕は蓮を押し倒した。

「もう…我慢できない…。」

「し、しずく…。」

夢中になって、蓮にキスをした。でも、

「ぷはっ…なんでこんな…中途半端に…?」

「蓮から…してほしい…。」

そう言うと、蓮はニヤッとしながら、

「しずくは、僕よりも…甘えん坊だね…。」

…蓮の柔らかく、温かい唇…。

「んっ…んんッ…ぷはっ…はぁ…はぁ…。」

「ごめん…しずく…。僕も…もう我慢できそうにない…。」

「………ん……。」

やっぱり僕は蓮には勝てない…。というか、蓮のお願いをなんでも聞いてしまう…。

「あっ♡ちょっ…もっとやさしく…してぇ…。」

「しずく…僕…もう…。」

「いいよ…一緒に…あっ♡」

…僕のファーストキスも初めても、蓮のものになった…。でも、蓮なら…。

「蓮……。蓮?」

「……………。」

寝てしまったようだ…。僕はその寝顔を見つめながら言う。

「蓮…大好きだよ…。おやすみ…。」

そして蓮にそっとキスをした。


僕の幼馴染との甘すぎる恋の始まりだった。

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甘すぎる恋 zero @zerohotmilk

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