文月の魔女は夕焼けに謳う

未定

モノローグ

"イソゲヤ イソゲ"


”アサ ニ ナッタラ ヒ ガ ノボル”


”ミアゲタ オメメ ガ ヤケチャッテ”


”アノコ ノ シタイ ガ ミラレナイ”


”イソゲヤ イソゲ”


”ヨル ニナッタラ ヒ ガ オチル”


”マチ ニ アカリ モ ナクナッテ”


”アノコ ノ シイン モ ワカラナイ”


”イソゲヤ イソゲ”


”アシタ ナッタラ フユ ガ クル”


”コゴエタ テアシ ジャ オソスギテ”


”ソモ ソモ アノコ ヲ コロセナイ”



「あら、下品な歌ね。まるで腐ったアリスのようだわ」


「なにそれ嫌味」


「まさか、アリスはアリスでも”不思議の国のアリス”のことよ。

貴方じゃ主人公にも慣れないわ」


「出た嫌味のミルフィーユだ」


黒髪の少女は嫌味を嗜みながら、まるで指揮者のような指先で


街を走り回る黒い影を払う。


閃光は一瞬。まるで赤子の手を払うよう。


深夜の街に奏でられた歌を一掃する。


「ちょっと待ってよ"”って言ったけど

主人公は最上級じゃない?」


「最上級ってなによ。」


「いや、だから一番いいポジションじゃないってこと!!」


黒髪の少女はこれでもかとおおげさにため息をついて答える。


「はぁ、だからなあなたはアリスなの。それに主人公は一番いいポジションじゃないわ。ちょうどよく仕立て上げられるから主人公なのよ。」


風がビューと強く吹く。3階建てのアパートの屋上。

2人の魔女が街を眺める。


「そんなにいい景色じゃないね。遠くには夜景が若干って感じかー

どうする?隣町まで足伸ばしてみる?」


「いいえ。まずはこの辺を重点的に捜しましょう。腐ったハートの女王も見つかるかもしれないわ。」


「腐ったハンプティダンプティかもよー。」


「あら、じゃあ自滅ね。」


街に静寂が訪れる。

諍いにもならない月も落ち続ける夜明けの戯れ。

これはアリスが穴に落ちる前のお話。

白いウサギを追いかける前の前。


黒い魔女はしたたかに、

金色の魔女は実直に、

自らに課した使命と約束の為に

腐ったお茶会を後にする。


2012年 波江市 

これは少女の人生ががらりと戻る物語

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る