第142話 わし 準備をする

     〜〜〜わし私室〜〜〜


カシム「遠征の準備できました」


わし「おお思ったより早かったな」


カシム「頼まれた物の準備が大変でしたよ、ほとんどの物が1からの製作でしたからね」


帽子…

アイウェア…

グローブ ...

フットウエア ...

バックパック ...

ピッケル ...

アイゼン…

その他…


わし「まぁ4000mm級じゃしな、4月でまだ雪が残ってるから油断は出来ない」


カシム「この簡易コンロとか軍でも使えそうですね、このスコップは何に使うんですか?」


わし「やむを得ない事情で緊急的に野営(ビバーク)する時に雪洞とか掘るのに必要じゃな」


カシム「備えあれば憂無しですか…」


わし「山を舐めるとマジ死ぬからな」


カシム「他の人を行かせる事って出来ないんですか?」


わし「うーーん…色々と考えたが、わししかおらん」


カシム「経験とかあるんですか?」


わし「無い」(笑)


カシム「めちゃくちゃ山を舐めてるじゃ無いですか」


異世界ではな…


わし「まぁ大丈夫じゃ」


カシム「その自信は何処から…他に必要な物ありますか?」


わし「そうじゃな、後は詳細な地図くらいじゃが、敵国じゃしな」


衛星電話に優秀なシェルパ(ガイド)は…無理だしな…


カシム「地図ですか…それは難しいですね…しかし本当に大丈夫ですか?」


わし「一応トレーニングもしたしな、デスゾーンと言われる8000mとかは、酸素が補充されるよりも早く酸素の蓄えを消費して、長時間滞在すると身体機能の悪化や意識の低下が起こり死ぬが、4000mなら余裕じゃ」


カシム「8000mとか…そんな高い山あるんですか?」


わし「昔は10000メートルも超えてたが、自重に耐えられず北側に崩壊したな、あと氷河バズソーじゃな、氷河の侵食は最大の高さに到達するよりも早く山を削る現象を氷河バズソーと言う、まだ仮説じゃがな」


カシム「じゃあテラでは10000m以上の山は出来ないんですか?」


わし「火山型は可能じゃな、火山の形成スピードが氷山の侵食スピードを超えればじゃが」


ハワイのマウナケアは海底からだと10000mじゃし、火星のオリンポス山は重力も軽いし大気も薄くプレート運動も無いから、とどまり続けて27000メートルまで成長してるしな


カシム「アルバートやビクトリアも訓練したのですか?」


わし「軍での激しい訓練もあるし、そもそも身体能力が高いからな、大丈夫じゃろ、それに雪山を想定した訓練してたらアリアにバレるし」


バン!!


アリア「マルス様!!」


ビクゥ!!


わし「な…なんじゃ?」


アリア「最近、何か隠してません!?」


わし「いや?何も?」


アリア「ふーーーん…マルス様もそうですが、アルバートやビクトリアもヨソヨソしいです、絶対に何か隠してるでしょ」


わし「何も無いって」


アリア「このコンロは何ですか?」


わし「おお…これか…軍で使えるかどうかの試作品じゃな」


アリア「ふーーーーん…このトゲトゲの靴は?」


わし「おお…これか…アイゼンと言ってじゃな、雪山や氷山の行軍もこれからあるかも知れんからな、これも試作じゃな」


アリア「ふーーーーーん」


おお…激しく疑われてる…


アリア「ところでマルス様、銃の照準が中々合わないんですよね」


わし「練習が足りないだけでは?」


アリア「練習はしてます!!ここが私の限界なのでしょうか?」


わし「ふーーーーむ…アリアよ両手で輪っかを作ってみろ」


アリア「こうですか?」


わし「わしの顔を両手の輪っかに入れて、左目を瞑ってみろ」


アリア「あ!!マルス様が消えました」


わし「アリアの効き目は左じゃな、右目で照準をあわしてるからじゃ、アリアのドミナント・アイ(支配的な方の目)は左目じゃな、そこを修正すれば良い、珍しいタイプじゃな10%くらいの確率で起こるが」


アリア「ありがとうございます!!確かに…違和感の正体はコレでしたか!!」


よし!!上手く逸らせた


わし「さて…公務をせねば、アリアよ練習に戻るのじゃ?」


アリア「今来たばかりですよ、やっぱり避けてません?」


わし「そ…そんな事は無い、ど…どうじゃカシム、最近の元奴隷の地位向上は?」


カシム「そうですね、職人や技術者が育って来てますからね、今度の遠せ…ゴホン…色々な現場で活躍してますし格差もほとんど無くなって来ましたね」


アリア「何か言いかけませんでした?」


カシム「いえ…奴隷の地位向上には、アリアさんの影響も大きいですね、何てったって、王子の側近中の側近ですから」


アリア「ふーーーーーん」


バン!!


ビクトリア「マルス様!!今度の遠征で行く雪山って日焼けするんですか?貴族は肌の白さが…あ…」


なんと間の悪い…


アリア「遠征?雪山?」


わし「おう、西部開拓地の雪山でな軍事訓練があるのじゃ…な!!」


ビクトリア「そ…そうですわ!!貴族は白い肌が命ですから」


アリア「ふーーーーーん…でも西部開拓地の山には、もう殆ど雪は残ってませんよ」


わし「あ…あれじゃ、備えあればと言うやつじゃ」


アリア「ふーーーーーーーーーーん」


バン!!


アルバート「マルス様!!やはり今回のレガシイ大帝国の遠征は危険すぎま…あ…」


ダメだ…コイツら…


アリア「レガシイ大帝国?危険?」


わし「プランBのチャーリー部隊侵入作戦についてじゃな」


アルバート「ははははは…そ…そうですそうです」


シュバ!!


アリアの剣先がアルバートの喉元に皮一枚で食い込む…アルバートの首筋から、うっすら血が滲む


アリア「ふふふふふふ、怒りで手元が少し狂いましたわ…アルバートが死ねば、私がマルス様の護衛になれるのかしら?」


わし「ま…まてまて!!」


場が凍りつく


アリア「ビクトリアもそんなに日焼けが気になるなら、永遠に地下で眠りますか?うふふふふふ」


誤魔化すのは無理じゃな…


わし「アリアよ…わしはレガシイ大帝国に遠征に行く、なに…危険な任務じゃないダム建設と地質を調べるだけじゃ」


アリア「ふーーーーーーーーーーーん、で?何で私は除け者なんですか?」


わし「ほれ、お前は最近、妊娠したヒャッハーとか言ってたではないか、敵国じゃし、雪山の地質調査だから過酷な任務じゃしな」


アリア「生理来ました、妊娠してません、過酷な任務とか余裕です」


わし「え?そうなの?ちょっと下っ腹出てない?」


アリア「ビールっ腹です!!ビール神を信仰してますので」


そ…そうなの?


わし「しかし、じゃな…」


アリア「大丈夫ですよ、今から1人減りますし、あははははははは」


アルバート「ヒィィィィイイ!!」


わし「分かった!!連れてく!!連れてくから剣を納めよ!!」


チャキン…


アリア「ではカシムさん、私の装備も準備してくださいね」♡


カシム「分かりました…」


わし「本当に妊娠してないのじゃな?」


アリア「そうでございます」♡


まぁバレたし仕方ないか…


わし「じゃあ連れて行くが暴走するなよ」


アリア「必ずお役に立ててみせます!!」


ああ…不安じゃ…



次回に続く…

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