第24話 わし E=mc2を知る

大砲20門の斉射


↗︎ ↖︎


この交差する部分が1番殺傷能力が高くなる


敵側にも大砲があるが、攻城戦仕様で砲弾は石だ


こちらの大砲が敵右翼側に当たり、さっきまで人だった物が肉塊となり弾け飛ぶ


固まった陣形はただの的だ


わし「次弾装填!!てぇぇぇぇ!!」


わし「左翼すすめ!!それに続いて右翼前進!!」


わしの号令に旗手が旗を振り、その通り行動して行く規律正しい部隊


戦争とは独特な高揚感があるな…


脳内麻薬が止まらない…ナルホド中毒になる奴もいる理由が分かる


敵兵は、大砲の威力に怖気付いたのか、進軍速度が遅い


大砲を間髪入れず撃ちまくる


アベル「凄まじい威力ですね…」


カイン「たった20門でこの威力…1つの砲弾に多数の子弾を考えたマルス様は軍神の生まれ変わりの様だ」


アベル「あの方は、この国の英雄として語り継がれるでしょう」


カイン「歴史は勝者が作るとマルス様が仰っておられた、後世で残虐非道と伝わらない様に、この戦勝つぞ」


アベル「お任せあれ!!」




マルクス軍中央




わし「凄い威力だな…人が…ゴミの様だ…」


本来なら某大佐の様な言葉が嬉々としてる出るハズだが…冷静になる


ホウトク「全くやべーな、予想以上でしたな」


わし「E=mc2」


ホウトク「いーいこーる?えむしーじじょう?」


わし「あ…いや何でもない」


ボソっとアインシュタインの等式が出てしまうE=mc2はエネルギーと質量は等価だと言う等式だ、しかし、単純な物理エネルギーでも、人は簡単に死ぬ、エネルギーと人の命は等価で無いのだ、広島に投下された原子爆弾で核分裂を起こしたのは、爆弾に詰められていたウラン235(約50 kg)だが、実際に消えた質量は たった0.7 g 程度だったと推測されている…冗談でもウランを濃縮して爆縮レンズを作ろうなんて考えてはダメだ…高揚感は消え酷く現実に戻されてしまった



聖カトレイア軍




聖カトレイア兵「右翼陣形乱れてます」


カンビ将軍「怯むな進め!!」


なんだ…あのデタラメな長射程と命中精度と威力は…


カンビ将軍「敵に弓兵はいない、今まで鍛錬した成果を敵に味合わせてやれ!!弓の射程圏内まで突撃」


大砲による死屍累々を越えて来る


味方の左翼と敵側の右翼が300メードにまで接近、味方右翼はまだまだ600メードほど離れてる


味方の大砲が雨霰の様に敵陣に降り注ぐ


大砲の発射音が鳴るたび、敵兵の進軍速度が遅くなる


1分間で200人単位で死んで行き、その砲弾を食らった味方の凄惨な肉の塊は絶望と言う恐怖を植え付ける、それを踏み越えて進めるのは、人間として中々越えられない一線だな


ほどなく味方左翼と敵側右翼が激突


敵側の膨らんだ右翼に、左翼側の大砲は容赦なく砲弾を浴びせて行く


斜線陣で遅れて来た味方右翼銃歩兵は、敵を射程圏内に捉える


ホウトク「漸進斉射戦術用意、構え!!てぇぇぇぇぇぇ!!!」


ドパパパパパッパパパパパパパッパパパパパパパン パパパパン!!


前列250の銃が火を吹く


ホウトク「その場で弾込め、後列は前進」


ザッザッザッザッ


ホウトク「構え!!てぇーーーーー!!!」


ドパパパパパッパパパパパパパッパパパパパパパン パパパパン!!


まだ有効射程からは少し遠いが、敵左翼側の包囲網の足を止めるには十分だ


ドン!!ドドドン!!ドドドン!!


味方右翼の大砲の援護射撃もあってか、敵左翼側は完全に足が止まってる


自慢の長弓兵は射程圏外なので、どうすれば良いか分からず


一方的に、マルクス軍に討たれて行く…


これで、味方左翼が敵右翼を抜けば…勝利なのだが


戦況図はこんな感じだ、怖いくらい予定通り



                             ○凸

  ○凸凸凸           

  ○凸凸凸凸凸

   凸凸凸凸凸

   凸凸凸凸凸

   凸凸凸凸凸凸

         凸凸凸

            凸凸凸

               凸凸凸

                  凸凸凸

(砲)  

 わしとホウトク→   凸

           凸凸凸


○が神聖隊、左翼中央にカインとアベル




聖カトレイア軍


カンビ将軍「ええい、押されてるぞ、数では、まだまだ圧倒している、怯むな!怯むでない!!」


聖カトレイア兵「しかし…前線の維持がもう難しいです」


カンビ将軍「我が軍の左翼は何してる!!死をも恐れない最強の聖職兵は!!押し込まんか!!」


聖カトレイア兵「それが、足止めを食らっておりまして」


カンビ将軍「ええええい!!」


その時、遊撃部隊の神聖隊が最左翼から突撃してくる


シルビア「あら〜勇ましい殿方ね、敵じゃ無かったら惚れてたかもよ〜♡」


カンビ将軍「何だ貴様は!!」


シルビア「神聖隊の隊長シルビアよ」


カンビ将軍「雑魚に構ってられるか」


聖カトレイア兵「ええい邪魔だじゃ…ぐはっ!」


神聖隊員「姐さん、ほぼ片付きましたぜ」


シルビア「前に出過ぎじゃ無いのぉ?でも前線で指揮官自ら采配とかカッコ良いわぁ〜ご褒美に、一騎討ちしてあげる♡」


カンビ将軍「はははは、常勝将軍と言われた、わしに挑むとは、命知らずめ」


シルビア「じゃあ常勝も今日で終わりね、私に今日で殺されちゃうから♡」


カンビ将軍「舐めるな!!」


シルビア「うふふふふふ、遊んで あ・げ・る♡」


数合打ち合う


シルビア「あらやだ、意外とやるじゃな〜い」


神聖隊員「姐さんイケイケー!!」


カンビ将軍 なんなんだ…あれだけいた兵士達も砂塵の様に消えて行き…気付けば、周りは俺だけ…そうか…我が軍の右翼主力は抜かれたのか…


シルビア「ざんねん…相手が悪かったわね〜♡」


シルビアの鋭い斬撃がカンビ将軍の左肩から肺に達し大量の出血が流れる


カンビ将軍「ぐぐぐぐ…まだだ、まだ…」


シルビア「しつこい男は嫌われるわよ♡、じゃあね」




アベル「シルビア待て!捕縛しろと命令だ」




シルビア「アベルちゃ〜ん♡そうなの?良かったわね、生きてれば、また会いましょ」



ドシャ!!馬から崩れ落ちるカンビ将軍


カンビ将軍「まさか…こんなハズでは…」


乾いた発砲音と重厚な大砲の音を聞きながら、薄れ行く意識…




敵右翼を抜いた、味方左翼は、右回りに敵を包囲殲滅して行く


味方右翼歩兵は、ここぞとばかりに突撃する


敵左翼側は急に後ろからマルクス兵が現れたのと、カンビ将軍が討たれたとの情報で完全にパニックになっていた


こうなっては、規律正しい行動など出来ず、緊張と恐怖で糸が切れた様に我先に逃げ出して行く


作戦通り敵を包囲殲滅…


終わってしまえば、完全勝利だった…


普通は少しくらいピンチになって後世に描かれるであろう、わしの英雄譚も盛り上がるってモンだが…


何だろうこの全能感…と罪悪感が同時に襲ってくる感じは


また不思議な感覚が襲う…およそ転生前では味わえない感覚だ


アリア「マルス様、完全勝利おめでとうございます」


わし「ああ…」


ホウトク「拍子抜けでしたな、実験にもなりませんな、敵が弱かったのか、味方が強かったのか、計りかねますなぁ」


わし「ああ…」


アリア「マルス様?」


わし「あ…いや…もっと嬉しいかと思ったんだが、そうでも無いんだな」


戦場に漂う火薬の匂いと血の海…無惨に散らばる多くの敵兵の死体とは対照的な我が軍の喜び様


とんでも無い事をした感覚と、全能感でぐちゃぐちゃになってる


興奮さめやらぬ戦場に、後方のサイマール砦からの歓声が聞こえる


わし「ホウトク…後は任せて良いか?」


アリア「マルス様!!まさかお怪我でも?」


わし「大丈夫だ、とりあえず、先に砦に帰還する、ホウトク、兵達を労ってやってくれ、敵兵は逃げる者は追い討ちをかけるな、投降者は丁寧に扱うよう、よろしく頼む」


ホウトク「おっけー!!任されたぜ、マルスの旦那はゆっくり休まれた方が良いんじゃねーか?顔色も悪いし」


わし「ああ…すまぬ…」


アリア「マルス様!!待って下さい」


1人戦場から離れ、サイマール砦に帰還するのであった


次回に続く…


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