第8話 わし ピンチ



検地から一年、有力貴族や大臣の反発も無く順調だ、まぁ特に制裁もして無いから当たり前なんだが


我が国の職人も捨てたもんじゃない、カシムや周りに聞いたらエッジと言う刀鍛冶職人を紹介された


賢い友達の友達は大体賢い奴が多い、いつの世もそうだ、メリットでしか繋がれないのが大人の世界である、チヤホヤされたいなら、自分がどれだけ相手にメリットを示せるかが重要だ


そして、やはりと言うか想像以上にエッジと言う職人は器用で物覚えも良い、お抱え職人にしよう


そんな努力の結果、ついに念願のニューコメン外燃機関が爆誕!


素人のわしでも設計出来る簡単な外燃機関だ


しかし鋳造や組み立ては無理である、設計は簡単だが机上の設計を現実にするには、高い技術や知識が必要なのだ、だからいつの時代も技術者や開発者の給与は高い、替が効かないのが大きな理由だな


本来の性能は6馬力ほどだが、わし作成ニューコメン機関は3馬力ほどだ、もう少し大型化と出力を上げたいが、今はこれが限界、しかし燃料を絶えず加えれば24時間働いてくれる優れもの


これで色々と工業化を推し進め


領内で少しづつ産業の機械化を進める


こうなると、100人で作ってた物が1人で出来てしまう、失業者が増えるが、新たな産業は新たな雇用を生み出すし、国の公共事業で失業者を雇って行く、まずは鉄道を敷設して、人も物も武器も兵站も高速で運ぶ事が可能だ


供給力が高まるし軍事にも使えて一石二鳥


今後の展開にワクワクしながら妄想を膨らませる



コンコン



カシム「カシムです」


わし「入れ」


カシム「失礼します、マルス様の事業は色々と成果は出て来てますが、金や銀の流出はやはり止まらず、大国からの食糧輸入や圧力外交での物の押し付けもあり、このままだと、数年と持ちません」


わし「計算通りだ、まぁ見ておけ、生産性200倍の力と幻想のカネの威力を見せちゃる」


カシム「そうは言っても…金や銀が枯渇すれば夢物語ですぞ…空から金や銀が降ってくる様な技術は無いのですか???」


わし「カシム大正解」


カシム「え?はぁ??」


わし「まぁジョークだ、数年国庫が持てば問題無い」


実際に金やプラチナの重元素は宇宙で作られてる、超新星爆発か、中性子星同士の衝突か、磁場を持つ高速回転してる恒星の爆発が主な重元素の供給源だ


巷で流行ってる錬金術も理論的に可能だ、原素番号80の水銀に大出力でアルファ波を当てれば陽子が1つ飛び出て原素番号79の金に変える事も出来る、まぁ当然だが、この時代の技術では無理だし、転生前の現代でも圧倒的にコストに見合わない


不安そうなカシムを他所に


花瓶に生けてるチューリップを指差しながら


わし「そうじゃ、どうしても厳しくなったら…チューリップを売ろう」


カシム「…はぁ…チューリップですか…」


わし「チューリップは良いぞ、ボロ儲け出来る」


カシム「ボロ儲けですか?私には想像も付きませんが…」


もちろんカシムはチューリップバブルは知らない、1600年初頭に起きたチューリップバブルは1637年にはSemper Augustus 無窮の皇帝と言う名のチューリップは現在の日本円で2000万くらい高騰したのだ、人類初のバブルと言われてる


価値は創造出来る


まだまだこの時代では分からんか


怪訝な顔したカシムを他所に


わし「腹減ったなカシム、アリアも飯でも食うか」


アリア「は…い…マルス…様」


ここ一年で大きく成長した…相変わらず無愛想だが…喋る様になっただけでも…父さん嬉しいぞ(感涙)


と言うか、出会った時は成長期前だったんかな、わし…身長抜かれてるんだが…


うーむ…この国と言うか、時代と言うか、飯が不味いんだよな、日本が美食過ぎるってのもあるが


余裕が出来ればな〜味噌、醤油、オリーブオイル、バルサミコとか好きな和食やイタリアンを作りてぇ


カシム「マルス様は何故?奴隷にもお優しいんですか?」


わし「人間の価値とは、何だと思う?」


カシム「考えた事もありませんな…やはり身分や学歴でしょうか?」


わし「それは偽りの価値観だな、全てとは言わないが、実際は高い技術、能力、知識、経験だ、それが物やサービスを生産する源泉になり、その技術や能力が実需とマッチすれば、お金や、より便利な物が生まれる、そう言う人間こそ価値の高い、世の中に必要な人間になる、そこに身分や学歴とか必要だと思うか?」


実際に高度経済成長の時に、世界に売れる物を作った経営者や労働者は中卒や高卒だしな


カシム「た…たしかに、技術や能力ですね」


わし「身分や学歴によって、その技術や能力や知識や経験が社会に活かされなかった場合は身分や学歴とはただの社会悪だと思わんか?そうならない様な学校作りを目指すべきじゃろ」


カシム「……言葉もございません…」


わし「まぁ、そうゆう事だ、アリアが、お前より賢ければ、お前はクビだな」(笑)


カシム「そそそ…そんなぁ!!」


アリア…キラキラ(目)


わし「勉強じゃな、計算が得意だけでは、この先は生きて行けんぞ、社会に役立つ技術や能力や知識や経験を磨け」


カシム「分かりました!!」



バン!!


わし「誰じゃ?びっくりするじゃろ!!」


アベル「大変です!!マルス様、早馬からの情報で、大国ウゴンが国境付近まで攻めて来ました」


わし「…え?!まじ??」


緩い空気に包まれてた私室に緊張が走る


アベル「至急、私兵を集めてカイン様の元に急ぎましょう」


うーん、コレはマズイ、工業化も信用創造もまだまだの時に敵国に来られては困る


秘密兵器も、まだ完成してないし


奥の手はあるけど、非人道的なので、使いたくは無い…とりあえず持って行くけど…


わし「分かった行こう」


アリア「あ……あ……わたし…も…ついてく…。」


わし「すまんなアリア…遊びじゃないんだ、緊急事態だ」


アリア「あ……あ…ちが…」


アリアは強く拳を握りしめる


急な事で頭が真っ白になる、わしはアベルと共にカインと合流する為、城を出るのであった



次回に続く…

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