55歳のオッサンが異世界で肉を焼くだけ。のボツ展開集兼設定資料集 ※つまり上手に焼くことができなかった真っ黒焦げ肉
挫刹
焦げ🍖
take1
1周目 無職のオッサン
目の前にはトロールがいる。
深い緑色の巨体のトロールだ。俺は本を読んだだけでトロールを眠らせる。町中で暴れていたトロールは膝をつき倒れてイビキをかきはじめた。
俺はぐっすりと眠っているトロールを無視して歩き出す。
55歳の無職の俺がこの世界で生きていくにはあまりにも
この世界では魔法が使える。
若ければ冒険にも出られるだろうし、好きなこともできるだろう。
小学生から剣を振るって魔法を学び、仲間を集めてパーティをつくり世界へと旅立つ。そんな光景はこの世界では見慣れた風物詩だ。
モンスターがいて。魔王がいて。聖女がいて。精霊がいる。
そんな冒険を、今の俺の
俺は今年で56になる。他の仲間を集めるにしても全員、老けた中年しか集まらないし。いい年した加齢臭のする中年のおっさんやおばちゃんどもが集まっても今更冒険なんてできるわけがないし体が動かない(腰をやるぞ。ギックリとな)。
パーティーを作るならやはり俺一人に女子高生(15)ばかりを集めたハーレムがいいが、それをやるとマジで警告が来る。既にもう二回も警告を受けたらしい。俺ではないが。
ならば一人で居たほうがマシだし、身動きも取りやすい。
先程のトロールは町を襲ってきた一体だ。それを俺が難なく眠りに落として終わりにしたのはご覧の通りだ。あとは他の人間が対処するだろう。無職の俺に出来て、本職の
幸いなことにこの世界では、無職でも魔法が使える。無職でも勉強はできるのと同じように、無職でも剣を振るえば攻撃できるし、魔法も扱うことは簡単にできた。
この世界では、魔法は第一種永久機関現象だ。意思だけで無からエネルギーを生み出す
問題は魔法を使う際の
魔力を持った人間は主に魔族と呼ばれ、一部では神族とも呼ばれている。魔王や聖女はその筆頭だ。二人とも今は15歳の女だがな。念の為に言っておくと、この二人と俺はこれからも接点は無い。無い筈だ。それをやると警告が来ると言われている。女は極力避けるようにと強く念押しされているのだ。そんな話は今いい。
魔力を持つ魔族や神族は、体を動かすだけで直接、魔法を放つことができる。人間の魔法はこうはいかない。
人間の扱う魔法は、まず意思によって、どこに魔法を発生させるかを深く考えて狙いを定める必要がある。それをしなければ発動しない。例えば手から魔法を放ちたいのであれば、手から魔法を出すとわざわざ思考しなくてはならない。魔族や神族だと、手に力を込めただけで魔法がぶっ飛ぶ。みんな羨ましがっている。
この手間の差のおかげで魔族は人間をバカにしているし、神族も人間を哀れに思っている。
モンスターも魔力を持っていてお察しの通り、モンスターが主な標的としてくるのは魔力を持っていないか弱い人間だ。
モンスターと魔族は戦う事もあるが結局、魔族は魔力を持つ人間であるために、知能で及ばないモンスターは魔族にいつも根負けしている。時々ケタ外れの魔力を叩き出して魔族を震え上がらせる野生の本能剥き出しの龍とかも存在するが、そういうヤツらは大抵モンスターとは呼ばれないし、滅多にも出てこない。ほぼ
結局のところ、この世界での最底辺は人類であることに変わりはなく。虐げられるのもいつも人間だ。その人間はといえば、当然この世界には魔力を持たない普通の動物も存在するので自然淘汰的に、魔族やモンスターに虐げられている人間はこの普通の野生動物を犠牲にすることで鬱憤を晴らしている。典型的な弱い者いじめだな。
これは地球でも同じだろう。
自分の惑星の自然環境を自分たちだけの幸福の為に破壊して、野生動物を次々と犠牲にして滅ぼしていく。そして自分たちも文句を言いながら自業自得の自覚がないまま自滅していく。悪気があって言っているわけじゃない。
そんな話を俺は聞いているというだけだ。いや、俺だけじゃない。この世界の人間は地球や日本やそれ以外の国のこともよく知っている。
話を飛躍すると地球や日本からみて、ここは異世界ということになるのだろう。こちらから見れば、地球や日本のほうが異世界なのだが、それはひとまず置いておく。
この世界は魔法が使えるが地球は魔法が使えないそうだな。だから異世界転移や異世界転生に夢を見て、スキルやステータスなんて訳の分からないことを口走って、自分たちの取り返しのつかない不遇な境遇を呪いながら永遠に決定されてしまった決定論の現実から逃避すると。その話もよく聞かされている。
こちらの世界では逆だ。
この世界の殆どの人間は、夢の魔法が使えるがゆえに、地球には絶対に転生も転移もしたくないと言っている。地球みたいな下らない世界には夢も希望もないとな。地球に生まれた人間はよく魔法も使えないのに文句も言わずに生きてるもんだなんだ、と頻繁にそんな会話を飛び交わせている。
誤解してほしくないのだがこれらのセリフを言っているのは間違っても俺ではない。俺は地球など眼中にない。これは俺ではなく、主に殆どのモンスターや一部の性格の悪い魔族、神族が言っていることは念の為に念押ししておく(念々)。
俺がこれからモンスターと会う機会があったらそんな話も出てくるかもしれない。気を付けてくれ。ヤツラは簡単にそんな話をし始める。先程のトロールは喋る前に眠りに落としたのでそんな暇はなかったが、大体モンスター達は地球という世界やそこに住む人間たちを毛嫌いしている。まったく困ったのモノだ(全然困っていない)。
まあ、それも仕方のないことだ。この話はしただろうか?
実はこの世界の最底辺である人間たちが虐げているのは、魔力の無い普通の動物たちだけではない。人間は
告白するなら、俺も同じ人間たちから迫害される側の一人だ。
氷河期世代という言葉を聞いたことはあるだろうか?
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