5、出撃《ソーティ》

 それは、思いも寄らない出来事だった。


 あらかじめ伏せてあった多数の兵士達が数人で組になり、広げた『投網とあみ』を持って、俺たちに波状攻撃を仕掛けてきたのだ。


 奴らは瞬時に、幾重いくえもの投網とあみで俺たちを簀巻すまきにした。 絡みつくあみの僅かな隙間からのぞくと、細河ほそがわと家老が、にんまりとわらっていた。


 必死で藻掻もがくが、藻掻もがけば藻掻もがほど動けなくなる。


 家老が勝ち誇った声で…


 「ふ、この投網とあみは特別あつらえでな、鍛鉄たんてつを細く引き伸ばした糸を編み込み、殿との御自おんみずから工夫なされた編み方でこしらえた『細兵さいびょう投網とあみ』じゃ。下手に動かぬほうが身の為ぞ。」


 謀ったな!


 「くっそぉ〜! 俺は、怒ったぞぉ!」


 …怒り心頭で、気の利いたセリフが思い浮かばない。


 俺と背中合わせに、一緒に巻き込まれた少女が、冷静な声で


 「これは、明らかな協定違反だ。…『同盟破棄』と見做みなして良いのだな?」


 細河ほそがわが「…其方そちらはいまだに時世じせいはんじてらぬようだな。…今は『永禄えいろく』の世ぞ。 約定やくじょうなど、片腹痛い!」…と、吐き捨てるように言った。


 …俺の背中に、震えが伝わって来た。それと同時に『ギリッ、ギリッ』という妙な音がした。


 …歯ぎしりだ!


 少女の怒りは頂点に達しているようだ!


「…情報…参謀」…少女が、怒りを必死でこらえながらつぶやいた。



 「はっ」


 …え?声ちかっ。…あのバカ、一緒に捕まってたのか…。


 少女が「…フォーメーション・コード蜘蛛の子“B・S”出撃ソーティ!」と、雄叫おたけんだ!


 「御意ロジャー!」


 そうだ…


 今こそ、衛鬼兵団えいきへいだんの力を…解き放て!

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