鬼の兵団『正史』

コンロード

第一章『出会い』

1、幸せの在庫

 「……はぁ~っ……」


 仕事の帰り道、繁華街を抜けてコンビニのかどを曲がると、途端に静けさが訪れる。


 そこで俺は、いつものように大きな溜息ためいきをついた。


 数メートル歩いたところで立ち止まって「……はぁ~~っ……」と、もう一度、溜息ためいきをつく。


 冒頭の溜息ためいきは、人混みを抜けて緊張が解けたから。二度目は、 今日も係長に叱られたのを思い出したからだ。


 あ! 前にどこかで溜息ためいきをついたら、知らないおばちゃんに「溜息ためいきをつくと幸せが逃げるわよ~」…と言われて周りに笑われたっけ!


 溜息ためいきをつくと本当に幸せが逃げるのか!? 


 まさか俺、幸せの在庫を使い果たして、来世らいせの分まで前借りして出荷してんじゃないの!?


 ……などと考えながら少し歩くと、小さい公園に着いた。


 俺のお気に入りの場所だ。

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