風のフェンサー
水無 月
第1ピリオド
本物の
いつかの物語で読んだ、
「先輩たち、すごかったね」
ソフトクリームみたいな大きな雲が広がる青空の下。
制服が肌に
雅の見上げた視線の先には、同級生の
「ああ。そうだな」
いつもは
雅たちの先輩の三人の二年生は、今大会のサーブル団体戦を『優勝』で
創部二年目となるフェンシング部の
* * *
校門の桜の木が花びらを散らした頃、高校一年生になって二週間の雅は、溜め息が
引きこもりがちで白い肌、
そんなこともあって、雅は「男らしさ」に昔から
高身長に、切長の流し目。こぶがある二の腕。板チョコみたく
分かりやすいぐらい「スポーツしてます」という、自分にはないものがある人たちに、雅は
ある日の講堂、舞台上では一年生に向けた部活動紹介が
自分の欲しいものを
雅にとっては、
だから、雅は文化系の部に入るつもり。
「必ず部に入らなければならない」という、学校の
(早く終わらないかなぁ……)
けれど突然、その瞬間は
仮面を着けた、白い姿の三人。
向かい合いながら、剣を
それでいて、交える
まるで
雅の思い描いた空想の映像を、彼らが
(何これ……。かっこいい……!)
『今年創部二年目のフェンシング部です』
彼らは色々と部活動の話をしていたけれど、
雅の耳に残ったのはその言葉だけ。
今年の新入部員は、雅と響弥だけ。
初心者の雅とは違って、響弥は経験者。
彼はフェンシング界では有名人らしく、『天才フェンサー』だと、先輩たちが教えてくれた。
けれど、響弥はというと、試合に出る意思はなく、あくまで一部員として
先輩たちは
今年は「サーブル」で
来年、彼らは「エペ」で挑戦。
フェンシング三種目のインターハイ
いつからか『三銃士』と呼ばれる、二年生の三人の先輩たち。
けれど、フェンシング専門の指導者がいないことや、歴史の浅い部ということもあってか、競技経験のある今年一年生になった子たちは皆、名門校や伝統ある高校へ流れたらしい。
実力者
それでも、二年生は練習や試合で
そんな初心者の雅も、フェンシングの試合に出ることが
生まれて初めて『地区大会』というものに参加した雅は、「フルーレ個人」に出場。
響弥の指導とビギナーズラックが
部活というか運動に
それでもここは、同年代のフェンサーからしてみれば、「
それは、響弥にとっても……。
響弥は、先輩たちの出場した「サーブル」だけでなく、「フルーレ」「エペ」と三種目全てにおいて、個人では何度も全国優勝したほどの
けれど彼は今、フェンシング競技とは距離を置いている。
響弥は口数は少なくとも、フェンシングを教えてくれる時は
先輩たちも、気づいていた。
それでも雅を始め、先輩たちも、彼に直接聞くようなことはしない。
皆、彼が自分から話してくれるのを待っているから。
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