第2ピリオド
駅まで続く
右手に「公園」の文字が見えて、大きな
「寄っていかないか?」
そう言ったのは、響弥だった。
彼からの誘いなんて
雅と響弥は近くあった
足元のアスファルトは、熱を
視線の先の噴水では、子どもたちが暑さをものともせず、楽しげな声を上げながら、服を着たまま水浴びをしている。
聞こえてくる水の音が、少しだけ
雅はペットボトルの
炭酸の
一口飲んだ
急な
「どうしたっ? 大丈夫か?」
「ごめん……。ジュースが、変なところに、入っちゃっただけ。……大丈夫」
響弥がベンチに背中を
彼は
雅も
大きな
響弥はいつもの寡黙な彼に戻っていた。
けれど、雅は何も話さなくても「気まずい」と感じたことはない。
不思議な感覚。出会ってから三ヶ月と少しぐらいだけれど、彼とは幼い頃から一緒にいたように
「……雅。ありがとな」
空を見つめながら、不意に響弥が
今日雅は、お礼を言われることなんてしていない。
思い当たることと言ったら、響弥の公園に寄る誘いに乗ったぐらい。
雅は背もたれから起き上がると、首を
「えっと、どういたしまして……?」
響弥が小さく声を
「分かってないな?」
こちらに視線を向けた響弥に、雅は言葉の代わりに
再び空を見つめた響弥は、目を閉じながら深呼吸をするように静かに息を吸う。
熱風が、細い枝ごと緑の葉を揺らす。
蝉が鳴く音量を上げて、
「今日、雅と一緒に、先輩たちの試合を観てよかった」
響弥はベンチから背中を離すと、雅へと体を向けた。
「俺は、今まで勝つことだけのフェンシングしかしてこなかった。それが全てだったし、それでよかった」
不意に、響弥の顔が
「でも、俺は、なんのためにフェンシングをしているのか、分からなくなったんだ」
初めて響弥が自分のことを、胸の内を話す姿に、雅も自然と
「フェンシングが好きなのかも
響弥は静かに
「今日、俺にも見えたよ。……お前がいつも言ってる、『
音も熱も、一瞬消える。
言葉でしか知らなかった『
再び、響弥がベンチへ背を預ける。
「俺さ、フェンシングが好きなお前と一緒に部活してるうちに、もう一度フェンシングがしたくなった」
雅は途端に、ベンチの
「それじゃあ、響弥……」
響弥の顔を覗き込むように、雅は彼の言葉を待った。
不意に、響弥の口元が緩む。
雅は
響弥は今度は表情を緩めて、雅へと視線を合わす。
「今日から、よろしく」
彼の心からの言葉に、雅は笑みが
「うん、うん! 今日からよろしくね!」
響弥は照れを隠すように、
雅も笑顔のまま、彼に釣られるようにして自分のペットボトルの蓋を開けて、ジュースを一口飲む。
夏空が、いつもより青く、
雅は蓋を閉めると、響弥の横顔を見た。
ジュースを喉に流し込む響弥が、ようやく
同年代の子に感じて、雅は自然と頬が緩む。
「……響弥」
不意に見知らぬ声が聞こえて、雅は視線を
隣に座る響弥の前に、他校の校名の入っているTシャツとジャージを着た人がいる。
響弥が呟いた。
「ハルト……」
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