最後の晩餐

 夜中の2時。

 熟睡していたところを、けたたましいスマホのアラームで起こされた。


 リビングからは、TVからと思われる音が聞こえてくる。


「なんだよ、もう・・・」


 妻と一緒にリビングに行きTVを見る。

 

 そこに映し出されていたのは、信じがたい内容であった。


「あ・・・あなた、どうしましょう・・・」

「どうするって・・。まず、着替えよう。」


 あわただしく、パジャマを脱いで着替えた。

 再びリビングでTVを見ると・・・・あと20分しか猶予はないとアナウンサーが叫んでいた。


 おろおろと、うろたえる妻。

 しかし、私は逆に冷静になった。


 キッチンに行きお湯を沸かす。


「あ・・・あなた、何をしているの?」


 不安で顔をゆがませた妻に、できるだけゆっくりと声をかける。


「もう・・・間に合わないよ。腹をくくった。せめて、最後の晩餐にでもしようと思う」

「あなた!なにを・・・」


 言いかけて、妻もだんだんと理解したようだ。

 あきらめの表情になる。


 棚から買い置きのカップ麺を二つ手に取り、ビニールを外しふたを開ける。

 粉末スープを中に入れお湯を注いだ。


 たった数分・・・それが永遠のように長く感じた。


「できたよ、一緒に食べよう」

「・・・そうね」


 リビングのソファに並んで座る。

 蓋をあけ、麺をすすった。


「・・・うまいな」

「ええ・・・」


 TVでは、アナウンサーが鳴きながら叫んでいる。

 隣の妻を見ると、涙を流していた。


 そういう私の頬にも涙が伝っている。


 カップ麺をすする。

 あぁ・・・なんて美味いんだろう。


 フッと、TVの画面が消え真っ暗になる。

 そうか・・・地デジだと砂嵐にならないのか・・・なんて思う。


 外が明るくなり、カーテンの隙間から明るい光が漏れる


「貴恵・・・。今までありがとうな。おかげで幸せだったよ」

「私こそ・・ありがとう」


 明るい光が、最後に微笑む妻の横顔を照らした。






 その夜。

 某国が発射した3発のミサイルに搭載された核兵器によって、東京は壊滅した。



◇◇◇◇◇◇◇


 著作権を譲渡するという条件が無かったら応募したんですけどねえ・・・

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