68作品目

09話.[なんかいまから]

「はい、あーん」

「あむ、やっぱりここの甘いものは美味しいね」

「うん、だから翔太君と来たかったんだ」

　しょっぱい系も甘い系も好きだから値段にさえ目を瞑れば幸せな時間を過ごせる。

　あ、もちろんこのことは一成に言ってあるから大丈夫だ。

　その一成は友達に誘われたとかで遊びに行っていた。

「翔太君は変わらずに優しくしてくれて嬉しいよ」

「それはこっちが言いたいことかな、最初なんか佳代は一成といてほしくないとぶつけるために近づいてきていたと考えていたぐらいだからね」

「はは、そういえばそんなことを言ってたね――あ、もしかしてそのときから一成のことが好きだと考えていたとか？」

「うん、だってふたりは本当に相性がよさそうだったから」

「なるほどね～」

　その後も観察を続けたうえでの発言だから相性がいいのは間違いなく確かなことだ。

　それでも惹かれ合う可能性はそう高くないことを考えると不思議な気持ちになる。

　敢えて僕みたいな感じの人間を選んだりするところがね。

　自分が優れているからこそ相手にも同じレベルを求めるわけではないらしい。

　まあただ、ふたりの場合は物好きとしか言いようがないから一般的ではないかと片付ける。

「でも、私が好きなのは翔太君だから」

「あれ、気になっているってだけじゃなかったの？」

「ううん、私が好きなのは翔太君だから」

　この発言を聞くと一成のあの必死さは正解なのかもしれない。

　休み時間とかもすぐに側に来てはそのポジションを守っているわけだし。

「付き合うのは無理でもあーんってしてほしいな」

「あーん」

「あむっ――あ゛ぁ゛……頭がぁ」

「え、そこまでだった？　って、こっちはかき氷だからか」

　頭を押さえていたと思ったら「頭も撫でてほしいな」と頼んできた。

　これは冷たさで痛んでいる頭を癒すという理由で撫でさせてもらった。

　全部一成には言うつもりだから喧嘩にはならないはず。

　これを隠して佳代の口から吐かせる方が喧嘩になるだろうから絶対にその方がいい。

「そろそろ退店しようか、長居してもあれだから」

「うん」

「僕が払ってくるから佳代は外に行ってていいよ」

　スムーズに済ませて外へ。

　佳代と色々と話しながら帰路に就く。

「もう終わりかあ」

「これからも一成の用事があるときは付き合うからそれで満足してもらうしかないかな」

「……分かった、そもそも学校では一緒にいられているわけだからね」

「うん、佳代とも普通にいたいからね」

　お礼と別れの挨拶をしてひとり帰路に就いた。

　なんかいまから一成から嫉妬攻撃を食らいそうだなと予想できてしまったのだった。