魔界の発明品

滝田タイシン

魔界の発明品

 魔王は博士の研究室に急いでいた。博士が人類を滅亡に導く画期的な発明をしたとの報告を聞いたからだ。


「博士、画期的な発明品が出来たと聞いて飛んで来ました!」


 魔王は部屋に入るなり大声で博士に言った。


「これはこれは、ようこそおいで下さいました、魔王様。今回は必ず期待にお答えしますよ」


 博士は自信有り気に鼻の下のちょび髭をさすりながらにやりと笑った。


「博士その言葉は『原子力爆弾』とやらを発明した時にも聞きましたぞ。だがあれ以来大規模な争いも起きず、未だに人間どもは我が物顔に暮らしておる」

「そうでしたかのう……」


 博士は、ばつが悪そうに頭を掻いて口篭った。


「あれは直接的過ぎました。今回はもっと人間の本質に迫った発明品です。憎しみに捉えられた人間はそこから離れる事が出来ず、自ら破滅へと向うでしょう。現代版パンドラの箱と呼べる物です」

「パンドラの箱? あれは確か希望も入っていて人類は救われるのではないですか?」

「そうです。今回の発明品にも希望や夢、喜びもたくさん詰まっています。だが今回の物が素晴らしいところは人間自らが積極的に参加して憎しみをばら撒き増殖させる事です。その憎しみは更なる憎しみを呼び、希望や夢や喜びを覆い隠す事でしょう」


 博士の自信満々な表情を見て魔王は喜んだ。


「素晴らしい! 博士、今回の発明品には何と名付けたのですか?」

「その発明品はインターネットと申します」


                 了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔界の発明品 滝田タイシン @seiginomikata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ