ネット小説物語

さいとう みさき

第一章 趣味

第1話1-1:電車


 私は急いで駅の改札を通る。


 まだ少しだけ時間は早いけど、これなら余裕で座れる。

 改札を抜けていつもの階段を上り目的の電車が来る前にいつもの場所でスマホを見る。


 うん、いつも通りの時間帯。

 そしてあるサイトを開く。



 「今日の分来た! 早く読みたいなぁ」



 電車が来るその間に更新されたWeb小説は決して開かない。

 これは毎日の通学時のお楽しみだ。


 そわそわと電車が来るのを待つ。

 こんな地方都市でも流石に通勤通学時間は混むのでゆっくりとなんか座っていられない。

 だから私は低血圧なのに毎朝頑張って早く家を出る。

 部活の朝練でも無いのによく続くモノだと自分でも驚いている。



 だって‥‥‥



 電車が来た。

 一番混む数本前の電車。


 扉が開きいつものシートに座る。


 私と同じで他の人も毎朝似たような場所に陣取っている。

 仕事に行く人も、私と同じ学校に行く人も。



 「さてさて、あの続きどうなったかなぁ?」


 ワクワクして更新されたその物語を読み始める。


 それはほんのひと時。

 

でもこの為に私は毎朝この電車のこの場所のこのシートに座り、春先に見つけた恋愛小説をむさぼるように読み始める。




 至福の時を心地よい揺れを感じながら電車は私を運んでいくのだった。  

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