お笑い芸人ランキング Sランク編 島田紳助
島田紳助 Sランク
ボケ 90 Sランク
ツッコミ 94 Sランク
トーク 100 Sランク+
漫才 90 Sランク
コント 89 Aランク
毒舌 100 Sランク+
ツッパリ 100 Sランク+
【解説】
笑いの神は、二人の天才をまったく同時期に笑いの世界に送り込んだ。
その二人の天才の名は、明石家さんまと島田紳助。
同期で親友のこの二人は、同時に笑いの世界では互いに強烈に意識しあうライバルでもあった。
明石家さんまの芸風を『陽』の芸風とすると、島田紳助の芸風は『陰』の芸風である。光あるところ必ず闇が生まれるように、二人の天才芸人の出現は、ある種必然だったのかもしれない(天才すぎる故の悲哀か、松本にライバルはいなかったが)。
松本をさんま派か紳助派で言うと紳助派であり、『松紳』で一緒に番組をしていたことからもわかる通り、松本はさんまより紳助の方を慕っている。
それは何故なのかと言うと、松本の芸風が紳助と同じ『陰』の芸風だからである(この辺『陰と陽』の芸風として、機会があればまとめてみたいと思う)。
さんまは『陽』の芸風なので、松本がやりたい笑いのスタイルとは決定的に乖離しているのが、松本が紳助を慕う一つの理由。
もう一つの理由は、松本がまだ売れていない、まったくの無名のド新人だった頃に、紳助に間接的に言われた言葉である。
お笑いファンには常識だろうが、紳助はコンビを解散する際、こう言ってコンビを解散した。
「このままではサブロー・シローやダウンタウンには勝てない」
当時超売れっ子の紳助が、まだ誰も知らない無名のダウンタウンに、漫才では勝てないと発言するなど、今では考えられない異例中の異例である。
勿論紳助は純粋に松本の才能を認め、漫才では勝てないと本気で思ったからこそ解散に至ったのだろうが、では何故紳助はそれをわざわざ口に出して言う必要があったのか?そんなことは自分の胸三寸に納め、粛々と解散をすればいいだけの話である。
それを紐解く鍵として、以前紳助がNSCの講師を務めた時(この様子は『紳竜の研究』というDVDで観ることができる。非常にためになる内容なので、興味のある方は是非)、紳助が語っていた言葉がある。
緻密に戦略を練り、それを確実に実行することで、自分は芸能界で成功した。願わくばもう一度、自分がまったくの無名であった頃に戻りたい。そうしてもう一度芸能界で成功できれば、自分の成功が運ではなく戦略によって達成されたものだと証明できるからだ。
自分が面白いと思う先輩芸人の漫才を全て書き起こし、それを分析、研究して成功に繋げるような、計算高い紳助のことである。
ダウンタウンの漫才を間接的に認め、松本の才能を称賛したその裏には、紳助の非常に高度な戦略があったように、筆者には思えるのだ。
以下、解散にあたり紳助が考えた(かもしれない)ことを、筆者なりに予想して書いていきたい。
『初めて見た時衝撃が走った。ダウンタウンの漫才は天才的だ。特にボケの松本は、底知れない圧倒的な才能を感じる。まだ粗削りではあるが、そのセンスは紛うことなき本物。
これから経験を積み、技術が身について洗練されれば、最高のセンスと本物の技術が融合した、誰も敵わない無敵の漫才が生まれてしまう。
このままではそう遠くない将来、紳竜の漫才は世間から隅に追いやられてしまうだろう。そうして気付くのだ。あれ?紳竜って、ダウンタウンより面白くないなと。
その事態だけは、絶対に避けなければならない。
何故なら、一度負け犬の烙印を押された芸人は、その後ずっと負け犬の芸人道を歩むことになるからだ。
ダウンタウンがこれ以上頭角を現す前に、世間に気付かれる前に解散すれば、比較されずに済む。面白かった紳竜、惜しまれつつ解散という良い思い出のままで、ずっと人々の心に残ることができるのだ。
しかし、ただ解散するのも芸がないし、人々の記憶には焼き付かない。
では、こうしてはどうだろう。
ダウンタウンはいずれ必ず頭角を現す、本物の天才。いつか世間から称賛を浴びる日がやってくるだろう。
その時に、まだ無名だった頃のダウンタウンを自分が高く評価していたことを知れば、人々はこう思うはずだ。
紳助は、無名だった頃のダウンタウンの才能を見抜いていた。
やはり紳助はただ者ではない、と』
以上は全て筆者の妄想だが、このような理由から紳助は松本を認めていることを必要以上に世間に示し、松本はそれを恩義に感じて紳助を慕っているように思えるのだ。
しかもそれを直接ではなく間接的に聞かせるところに、紳助の戦略の高度さは集約されている。
心理学では誰かに直接褒められるより、例えば又聞きなどで間接的に褒められた方が効果が高いというが、紳助はそれを応用したのだろう。
人間誰しも直接的な褒め言葉は打算など裏を疑ってしまうが、「この前〇〇さんが君のこと褒めてたよ」と言った、間接的な褒め言葉であれば無条件に受け入れてしまうものだ。
紳助はダウンタウン(特に松本)がテレビで自分の会見を見ることを確信して、会見に望んだに違いない。
そうしてテレビでダウンタウンのことを褒めれば、ダウンタウンが必ず自分に好意を持つことも、計算済みではなかったか。
一つの行動によって得られる結果の中で、もっとも大きな効果を手に入れる、紳助の非常に優れた戦略と言えるだろう。
そろそろ能力の解説に移らなければならないのだが、もう少し紳助の高度な戦略を探ってみよう。
『松紳』は紳助にとっては、視聴者に自分を大きく見せる絶好の場だったに違いない。
視聴者が天才と認めている松本が、紳助に敬語を使い、紳助を立てている。
視聴者はこう思うだろう。あの天才松本が上だと認めている紳助って、なんて凄い芸人なんだろうと。
以下、紳助がひょっとしたら考えていたのかもしれない、筆者の妄想である。
『松本は恐ろしいほどの笑いの天才。絶対に敵に回してはならない奴だ。
漫才やコントといった笑いの領分では、到底敵う気がしない。漫才やコントは全て潔く諦め、松本が来ていない違った領分(司会業やプロデュースなど)で、自分の芸人としての幅を広げよう。
よし。仕事も軌道に乗り始めたことだし、このあたりで松本が敵に回ることのないよう、完全に自分の側に寄せてしまおう。
それには松本と共演することが望ましい。自分を立てている松本を見せて、視聴者に自分の大きさを植え付けることもできるし、一石二鳥だ。
収録中、松本の言うことはいちいち天才的で面白いが、後輩のボケで笑いすぎると視聴者に自分が上だと植え付けられないから、あまり笑わないように我慢しないと。
引退の日が来た。
さんまはライバルだから、さんまに自分の引退を伝えることはできない。あいつがいて、あいつが自分以上に芸能界の先頭で突っ走ってきたから、この厳しい芸能界で生き抜く励みになった。
芸人としてそんな笑いにならないことをさんまには言えないし、あいつも言われたくないだろう。
あいつに引退を告げたら、きっと言わなくてもいいことまで言ってしまう。だから、さんまには自分が引退することを言えない。
松本は自分にとって、さんまと同じ、いや、それ以上に特別な存在だ。
奴によって自分の漫才は終わりを告げ、奴によって芸人としての自分に止めを刺された。
本来憎しみを抱いてもいいはずだ。
だが奴は、それ以上に自分を常に感動させ続けてくれた。
時には一人の芸人として。
時には一人のお笑い好きのあんちゃんとして。
自分は松本の笑いに感動していたのだ。
だからこそ、奴には、奴だけには、自分の引退を告げなければならない。
思えば自分の芸人人生は、松本がいない場所を探し求める旅だったのかもしれない』
全て筆者の妄想だが、いかがだっただろうか。
真実は紳助本人にしかわからないが、ひょっとしたら、案外当たっている箇所もあったりなかったりするのかもしれない。
前置きが非常に長くなったが、採点の解説に移ろう。
既に書きたいことは書き尽くしてしまったような感もあるが、最後までやり切りたいと思う。
まずボケの評価であるが、紳助は漫才師時代自分でボケを考えていただけあって、ボケの能力は高評価である。
惜しむらくは、松本の存在によって自分のボケの才能に蓋をしてしまった感のあるところ。
本来松本に匹敵するほどのボケの才能を備えていたはずだが、松本には勝てないと可能性を自ら封印し、スタイルを変えてしまったため、評価は90のSランクとした。
ツッコミはさんまと同等の高評価。長らく司会業で鍛えた、他者からネタを引き出す技術は著しく高いレベルにある。
トークは松本、さんま以来三人目の最高評価。『陽』の最強トークマスターがさんまなら、『陰』の最強トークマスターはこの島田紳助である。
漫才は前述の通り、途中で完全に辞めてしまったため、評価は少し落としたが、それでもSランクの高評価。漫才能力は極めて高いレベルにある。
コントはさんまとの比較で評価したが、役に成り切ろうとしないさんまより、どちらかと言えば紳助の方が役に成り切る才能があるだろう。コントも途中で完全に辞めてしまったが、紳助の能力であれば、続けていればとても良いコントを作れたはずである。
たけしと並び、毒舌最高評価は言わずもがなだろう。人の弱点や欠点を面白く仕立てるセンスは、芸能界広しといえど紳助の右に出る者はいない。
最後の『ツッパリ』最高評価について。
これまで多くの芸人が生まれ、消えていく中で、良くも悪くも紳助ほど最初から最後まで『ツッパリ続けた』芸人はいないのではないか。
良い意味でも悪い意味でも、『ツッパる』という言葉がこれほど似合う芸人は、紳助をおいて他にいないことを確認して、本文を締めたいと思う。
吉本は紳助を早く復帰させたいようだが、本人にその気はないらしく、果たしてこれからどうなるか。
紳助が復帰することがもしあるならば、それは松本の呼び掛け以外には有り得ないのかもしれない。
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