ピクシーさんの、悩みごと。
──それは森に三日三晩の雨が降り続いたある日のこと。
この日、森で一番大きな木の下にはモンスターさん達が次々と集まって来ていました。しろうさぎさんとピクシーさん、それにリリパットちゃんとそのお仲間さん達、あとはスライムさん達とゴブリンさん達、つまりはこの森に居るモンスターさん達全員です。
「もう、こんな日に雨とか、うさぎ、あんたの日頃の行いを疑うわ……」
「いや、そんな事言われても……」
「大丈夫ですよ、しろうさぎさん。私はちゃんといつも見ていますから」
「う、うん。リリパットちゃん、ありがと」
「あ、それなら、ボクもそうですよ、しろうさぎさん」
「うん。スライムさんもありがとう」
「しろうさぎさん、ボク達も忘れないで」
「大丈夫、忘れてないよ。ゴブリンさん達もありがとうございます」
こぞってしろうさぎさんの肩を持つ一同を見てピクシーさんは呆れた声で愚痴を溢します。
「ったく。どいつもこいつもうさぎを甘やかして、これじゃ私が悪者みたいじゃない」
「そんなことないですよ。私、ピクシーさんの事もちゃんと見ていますから。本当はどのモンスターよりもすっごく優しいんですよね」
「ボ、ボクも、それ知ってます」
「だね。私もそう思うよ」
「な、何よ、急に、あんた達。そんな事言われたって私は別に嬉しくも何とも……って、ゴブ!! あんた達は何で何も言わないのよ!!」
「ゔぁゔぁゔぁゔぁゔぁ。(ボク達、それ、よくわからない)」
「都合の良い時だけ自分達言語使うんじゃない!!」
「あはははは!!」
そんな和気あいあいの雰囲気の中、これからここで行われるのはお茶会という名の就任式典です。それを始めに提案したのはピクシーさんで、最近のこの森の躍進劇の立役者でありそのきっかけを作ったしろうさぎさんをこの森の
司会進行役のピクシーさんが人参ジュース片手に音頭を取ります。
「じゃあ、みんな用意はいい?」
「おおーー!!」
「では、この森に新しい可能性と、希望をその手に持ってやって来た動物、しろうさぎ。彼女の、そしてこの森初めての
「かんぱーい!!」
そうしてモンスターさん達は全員で祝杯をあげました。それからピクシーさんに促されるかたちで、しろうさぎさんは大きな木の前にある小さな切株の上に立つと挨拶をします。
「ほら、うさぎ。早くして」
「う、うん。それじゃあ、コホン。……え、えぇと、モンスターの皆さん。私がこの度この森の始めての
──ぺしっ。
「って、へ?」
「ちょい、うさぎ。あんた話長い。もうちょっとまとめて話せない訳、みんな飽きちゃうでしょ。あんたはもうこの森の
「あ、ああ、そっか。そ、そうだよね。それじゃあ、兎にも角にも、みんなで一緒にこの森を盛り上げて行けたらと思っているので、これから宜しくお願い致します!!」
「おぉおぉおーーーー!!」
──パチパチパチパチ。
そうして盛大な拍手と共に祝福されたしろうさぎさんはそれからみんなと一緒に人参ジュースを飲んで楽しみました。すると、それからしばらくして人参ジュースを飲んで酔っ払ったピクシーさんがしろうさぎさんに自身の胸の内を告白します。
「──うさぎ、あんたは本当にみんなに愛されていて良いわね。ヒック。それに……ヒック。みんなと違う動物だからって何一つ自分に対して卑下することもないしさ」
「それは、まぁ、動物なのは変えられないし。それに、それならピクシーさんだって同じでしょ?」
「……ヒック。同じ? 私が? あんたと?」
「……うん。ほら、さっきだってみんなに優しいって言われてたし……」
「……ふん……どうせ私はイタズラ好きじゃない……ピクシー失格の優しいピクシーさんですよ……ヒック」
「え?」
「うさぎ、ヒック。この森にピクシーって私しかいないって気づいてる? ヒック」
「そ、それは、確かに。言われてみれば……そうかも」
「要は、そう言うことよ……私さ、捨てられたのよ、仲間に……ヒック。妖精とピクシーのクォーターで、みんなと同じ純粋でイタズラ好きなピクシーじゃないからって……本物じゃないんだってさ……それで、血筋だから言い返す事も出来ない訳じゃん。だから、メソメソとこの森に逃げるようにやって来てさ……ヒック。今だって何一つ変わることも出来ないで相変わらずお節介ばかり……だからね、うさぎ……私はそんな私が大嫌いなの……ヒック」
「……ピクシーさん」
【ピクシーさんの悩みごと】
・ピクシーは本来イタズラ好きなのに、自分はクォーターで世話好きなピクシー。
・みんなと同じじゃないからという理由で過去に仲間に捨てられた。
・何も言い返せなくてこの森に逃げて来て変われないでいる自分の事が大嫌い。
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