リリパットちゃんの、悩みごと。
「まぁ、ピクシーって言っても厳密には妖精とピクシーのクォーターなんだけどね」
「へぇ。そうなんですねぇ」
途中、軽い自己紹介を挟んでピクシーさんはしろうさぎさんに言います。
「で、わかったでしょ?」
「え? 何がですか?」
「いや、だからぁ。あの場所はリリパットの練習場に近接してる場所だってことよ。いつ流れ矢が来たって不思議じゃないし、もし私が偶然通りかかっていなかったら今頃あんたが的になってた頃よ」
「そ、それは……はい。ごめんなさい。私、知らなくて……」
「ま、わかれば良いのよ、わかればね。でも、今度からはちゃんと周りを見てから寝場所を選びなさいよね」
「は、はい。わかりました。本当に、ありがとうございました」
それから二匹は練習場で一人練習するリリパットの女の子を眺めながら世間話をします。気づけば辺りもすっかり夕暮れ時になっていて、その頃にもなると二匹はもうとっても仲良しになっていました。
「でもさぁ、うさぎ。あの娘もよく飽きずに頑張るわよねぇ」
「好きなんじゃないかな、弓。ほら、やっぱりリリパットさんですし」
「ふぅん、そういうもんなのかなぁ。って、帰るみたいよ、あの娘」
「本当だ。って、あれ? 何か落とし物したみたいです、彼女」
「あの娘、全然気づいてないわね。……はぁ。しょうがない、私達で拾って届けてやるかぁ」
「はい。そうですね、そうしましょう」
そうして二匹はリリパットの女の子が居た場所に行くとそこに落ちていた一枚の紙を拾います。
「紙? うさぎ、もしかしてそれただのゴミじゃないの?」
「うーん。あ、でもピクシーさん。何か紙に文字が書いてありますよ」
二匹はその紙を覗き込むとそこには可愛いらしい文字でこう書かれていました。
【弓の射法について】
・弓をしっかり持って
・弓の手元をしっかり固定して真っ直ぐ構える。
・矢を持つ手は震えさせないで、だけど最後にちょっと捻って離す。
そしてその更に下には先程のリリパットの女の子の今日の出来について書かれてあって、その言葉はまるで彼女の心の叫びのように二人の目には映ったのでした。
【リリパットちゃんの悩みごと】
・今日も私の矢は山なりでした。
・今日も私の矢は的に一つも
・いつか私もみんなみたいに矢を射れるようになりたいです。
「ちょ、ちょっと、うさぎ、これって……」
「……うん。……ピクシーさん、私達で助けてあげられないかな? あのリリパットの女の子を……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます