冢中枯骨

@tabmbow

第1話 風俗嬢 2008/12/28

大切な友人が特別な理由により、AV嬢になった事を以前、本人から聞いた。

彼女なりに悩んで悩みぬいて選んだ結果だ。

私は最初はそのリスクについて、彼女に伝えたが止める権利も無いし、

彼女なりの事情が有って、覚悟を決めて、期間限定で・・・という意思を強く持っていたので応援する事にした。

そして、「何かあればすぐに言って」と伝えた。


その彼女に久しぶりに会って話しをした。

AV嬢の他に風俗嬢も始めた・・・と。


正直、彼女の体が心配になった。

だって久しぶりに見た彼女は、以前より遥かにホッソリとしていたから。

「疲れているんだな」

これが最初に抱いた気持ちだった。


職種を聞いた時に「"本強"とか客にされるでしょ?」と言ったら、

彼女は「有るけど、ちゃんと断ってる」と話した。

確かに彼女の性格なら、出来ているだろうと思った。

だが、何か心に引っかかるものが有った。


話しの途中で性病に罹った、と聞いた。

引っかかりは当たっていた。

"本強"されて、本指名が欲しいあまり応じていた、と彼女は帰り道、泣きそうになりながら話した。


"本強"ってのは、文字通り、「本番強要」の事だ。

ゴムをつけてくれる客は殆どおらず、生で中出しまでされた事が何度も有る・・・・と言うのだ。


一瞬、唖然とした。

このままでは彼女が心身共に壊れてしまう、と。

昼間はOLをし、休みの日はAV嬢か風俗嬢になっているという。

つまり、休み無しでリスクを背負いながら働き続けているのだ。


期間限定と言っていたが、仕事を選ばなくなった事や、体を壊した事、

その他諸々を聞いて、思わず抱き締めてしまった。

あまりにも切な過ぎる。

なぜ彼女はそんなにまでしなければならないのか?


彼女は「こんなこと誰にも言えなくて、辛かった。あなたしか話せる相手は居ないよ」と

小さな声で言った。


ただ黙って抱き締めて頭を撫でるのが精一杯だった。

私には話しを聞くだけしか出来ない。

だけど、彼女にこれだけは伝えた。


「"本強"はキッパリ断ること。いざとなったら"大声出しますよ"でも"私、病気持ちですよ"とでも何でも良いから理由をつけて断れ。」


(↑本当のプロならもっと上手なかわし方が有るのだろうが・・・・)

「OCを飲む事、そしてどうしても"本強"を断れない状況に陥ったら何が何でもゴムを着けさせろ」と。

性病、望まぬ妊娠・・・そんな事になったら彼女の本来の目的は途中で果たせなくなってしまう。


何より、彼女自身が壊れてしまうのが怖い。


本来の目的、これから自分の背負うリスクについてもう一度考えるように話した。

そして話はいつでも聞くと。


帰り道、彼女と約束をした。

「プロ意識を持つこと。目的を達成したらキッパリと足を洗うこと。そして流されたり変に染まったりするな」と。

彼女は、「解ってる、大丈夫」と言っていたが、悲しそうな目をしていて顔色は良くなかった。


心配になったが、駅まで見送りこの日は別れた。

とにかく彼女には元気で居て欲しいし、守れるなら守りたいと思っている。

だって、向日葵のように明るくて、私の半生を話せた数少ない大人になってからの大切な友人だから。

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