余命六か月生存率2%が起こした奇跡

「私の名前はジェインです、ステージネームはナイトバードです」

 審査員

「ナイトバード?」

「そうです」

 彼女は笑顔で応える

「歌手が仕事ですか?」

「最近は違いますがオハイオ州出身です、年齢は三十歳です」

「三十歳ですね、夢は歌手になる事ですか?今夜は何を歌って

くれるんですか?」

「『大丈夫』というオリジナルソングを歌います」

「OK 、それは良いね!」

「内容は、昨年の私私の人生を歌った曲です」

「今日は誰と来たんですか?」

 彼女は笑顔で応える

「一人で来ました、多分大丈夫」

「何のお仕事をしてますか?」

 それから彼女の事がその場にいる全員が知る事になった

「何年もがん闘病とうびょうで仕事をしてません」

「それは、君にする質問としては正しくなかった申し訳ない」

 一番厳しい審査員が言った

「問題ないよ、分かった私は大丈夫だよ、質問してもいいかな?

今はどんな状態ですか?」

 彼女はそれでも笑顔で応える

「前回の検査では、肺と脊髄せきずい肝臓かんぞうに癌が広がってました」

 審査員は少しおいてから言った

「嗚呼、それは大丈夫じゃないよね」

 それでも彼女は笑顔で応える

「全く大丈夫というという訳ではないです」

 最初に申し訳ないと言った審査員が言った

「君は素晴らしい笑顔で輝きがあって、聞くまで誰も気がつかないよ」

 彼女はそれでも笑顔で応える

「ありがとうございます、闘っているという辛い事だけじゃない

私を知って貰える事は大切なことです」

「そうだね!じゃあ歌を聞かせてください」

 彼女は一度上を向いて集中してる、それから歌い始めた。


夏の季節、私はカリフォルニアに引っ越した

名前を変えた気持ちも変わると思って

私の全ての問題を置いてきたと思った

私はダイナマイト、それは時間の問題だった

ダメだわ、もう隠れられな自分の事は分かってるって

言ったけど嘘だったみたい

大丈夫もしもあなたが道を失っても

誰もがちょっとは道に迷うもの

大丈夫よ、そう大丈夫もしもあなたが道を失っても

誰もがちょっとは道に迷うもの

大丈夫よ、大丈夫百ページ書いて、全部燃やした

一枚も残らず全部燃やした

黄色信号を駆け抜け続け振り返らない

ダメだわ、もう隠れられない自分の望みは分かってるって

言ったけど嘘だったみたい

大丈夫もしもあなたが道を失っても

誰もがちょっとは道に迷うもの

大丈夫よ、そう大丈夫よ道が失う事があっても


 彼女の声は大きく無かったけど、絞り出している感じが伝わってきた

歌は丁寧でそして透き通っていた、身体はボロボロになっているのに

どこからそんなエネルギーが彼女から出てるのかは私は理解出来ない

くらいに凄かった、魂がこもっていた、歌い終わり声は小さくなって

いた、一度厳しい審査員の男性が言い出した、その前に彼女が最後

歌い終わりその時その審査員は驚きを隠しきれない表情だった

そして言った。


「ええっと・・・でも今年は素晴らしいシンガー達を見てきた

YESを上げる事は出来ない・・・他のものを送ろう」


 彼女はYESをあげられないと言われてから、そんなに甘く無いよねと

思いながら二回少しだけ首を縦に動かした、絶望と言うより半分は

覚悟してきたから、そこまでは落ち込まなかったでもそれで

終わりではなかったそれぞれの審査員にはシーズンで一人一度だけ

押せるボタンがある、それは目の前にある赤いボタンでは無い

赤いボタンは途中でやめさせるボタンだ、だが審査員の真ん中

には一つだけ金色のボタンがある例え他の審査員がノーと言っても

逆転出来る特別なボタン、そこに一番厳しい審査員が手を伸ばす

彼女はすでにYESはあげられないと言われていたので下を向いていた

そのボタンが押された瞬間に彼女の両脇と上から

金色の紙吹雪が降り注ぐ舞い落ちる彼女が見えなくなるくらいに

沢山の金色の紙吹雪が、そのボタンを一番厳しい審査員が迷わず

押した、彼女がダメだったと思ったほんの数秒後に・・・


 彼女はひざから崩れ地面にほぼ座っている状態で嬉しくて

それと込み上げて、今まで元気なふりをしていた彼女は

両膝の間に顔をうずめて、立ち上がれないくらい驚いたのだと思う

その後直ぐに一番厳しい審査員がステージに上がって

彼女を立ち上がらせ、ハグをした、その時彼は彼女にささやいた

みたいだが、彼女は後で聞いてもそれは秘密と笑って応えた。


 2020年の11月の記事に彼女は語った

大晦日のの日、末期癌の宣告を受けました、私の肺、肝臓、

リンパ、助骨、脊髄に複数の癌が見つかりました

頭を抱えながらリビングルームの床で、その検査結果を

読んでいました、余命六か月生存率2%でした

過酷な闘病の末奇跡的ににも2020年7月に一度

寛解かんかいしたが、再発を繰り返したそれで挑んだオーディション

彼女が最後に言ったのは


『生き残れる確率2%だと言われましたでも2%はゼロじゃない

2%には意味があります、それがどんなに素晴らしいものか

知ってもらえたと願ってます、会場を飛び出すと彼女は

夜空を仰ぎ歓喜の声をあげた』




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