私は三歳で母親が癌で亡くなり施設で育った、顔も覚えて無い施設の子供達は愛に飢えている

最高のイマジン

　男性の審査員が聞いた

「今日は誰と来たんですか？」

　応える男性

「お母さんと叔母とお兄さんです」

　審査員は続けて聞いた

「年齢は？」

　男性は躊躇（ためら）わずに応える

「ちゃんとした年齢は分かりません」

　その言葉を聞いたその場にいた観客と審査員を沈黙（ちんもく）させてしまった

男性は両腕の肘（ひじ）から先が無い、それと片足も折れ曲がってがいる

そのまま男性は続けた、自分の話を・・・

「最初、イラクで見つけられ孤児院で今のお母さんが

僕を見つけてくれた時、出生証明書はありませんでした

パスポートもありませんでした

僕は戦争中の激戦地で生まれました、お兄さんと僕は

修道院近くの公園で、ダンボール箱にに入っていたのを

見つけられました、それから孤児院に連れて行かれました

その時から既（すで）に両腕はありませんでしたお兄さんも同じです

僕達が理解出来ない様な雑音（ざつおん）が聞こえる所で

今のお母さんが孤児院のドアから入って来て時

彼女が天使のように見えました

彼女は当初、手術を受けさせるために僕達をオーストラリア

まで連れて来ましたそして彼女は僕達に恋してくれたそうです

僕のヒーローはお母さんです

彼女は僕達の人生を大きく変えるために、とても、それはとても

苦労して来たんです。

僕達のはアイデンティティが無いと言う人達もいます

だけどお母さんとそしてお兄さんと一緒だから僕はここに

来れました」

　審査員

「それは本当に良かったと思います」

　二人目も

「良かった」

　と下を向いて言った、それから観客も笑顔が戻った

彼に微笑んでくれた、審査員は聞いた

「ところで今日は何を歌ってくれるんですか？」

「ジョン・レノンのイマジンです」

　それを聞いた審査員は思わず下を向いてしまった

その理由はイマジンの歌詞に答えがある

観客の女性が両手を祈るように口の前で組んでいた

そして歌い始める

想像してごらん、天国なんて無いんだって

ほら、簡単でしょ？

地面の下には地獄なんて無いし

僕達の上には青い空があるだけ

さあ想像してごらんよみんなが

ただ今を生きているって・・・

想像してごらん、国なんて無いんだと

そんなに難しくないでしょ？

殺す理由もなく命を捧げる理由もなくそして宗教も無い

さあ想像してごらんみんながただ平和に生きてるって・・・

僕の事を夢想家（ゆめみるただのひと）だと言うかもしれないね

でも僕一人じゃないはず

いつかあなたもみんな仲間になって

きっと世界は一つになるんだ

想像してごらん、何も所有（もたず）しないって

あなたなら出来ると思うよ欲張（ひとりじめ）ったり

飢えることも無い、人はみんな兄弟だって

想像してごらんみんなが世界を分かち合うんだって・・・

僕の事を夢想家（ゆめみるただのひと）だと言うかもしれないね

でも僕一人じゃないはず

いつかあなたもみんな仲間になるって

そして世界は一つになれる

　彼の歌声にはしっかり生きている感情が込められていた

彼には憎しみも無く今生きてるそれだけで幸せだよって

言う気持ちが伝わってくる、身体は不便かもしれないけど

心は豊かだった、戦争中の激戦地でダンボール箱に入っていた子供が

今、目の前で歌っているしかも

イマジンなんて説得力（これいじょう）が半端ない、審査員も思わず涙を流すほど

彼の歌う姿はカッコ良かった、袖にいる家族はみんな涙を流して

喜んでいた、ステージで彼が歌う事、そこに意味があり

世界中の人々に伝えたいという思いで全員が魅了（みりょう）された

彼の今までの人生とイマジンがこんな奇跡を見せてくれたのは

私にとって、一つの一ページの思い出のアルバムから消えること

は無いだろう、それほど感動した。