第1章''普通''の高校生
「……君って本当に馬鹿だね。」
なんでそうな悲しそうな顔するの?
なんでそんなに平常心を装うの?
なんでそんなに泣きそうで、辛そうなのに誰にも頼ろうとしないの?
「原くん、ごめん。…私、原くんのこと何も知らないのに、こんなにズケズケと聞いて。でも、これは信じて欲しいの。私、原くんの事心配なの。」
「……うざい。ッ」
そう言って原くんは走って行ってしまった。
その後の授業に、原くんはいなかった。
大きな物音がして、子供の泣きわめく声。女性の怒鳴り声。男性が止めに入る声。目を閉じればいつもこの光景。
痛い、痛い。僕は何もしてないよ。お母さんなんで僕の事ぶつの?ごめんなさい。ごめんなさい。
でも段々成長するにつれて理解した。
僕は生まれてきたらダメだったんだ。
元々生まれないはずだったんだ。
怒られないように、いつも大人しく過ごそう。
それだけだった。
生きる気力も初めからも無かった。
高校入学の時から一人暮らしをする事になって、親と呼んでもいいのか分からない人達は海外へ行った。僕は初めから1人だった。
「…………。」
いつの間にか家のソファーで寝てしまっていた。
「はぁー。最悪な目覚めだ。」
しばらく考えないようにしてた幼い頃の夢を見ていた。
部屋に腹鳴が鳴った。
「生きる気力は無いくせに腹は減るんだよなー。」
家にある適当なものでパスタを作って食べる。
そういえば前に担任に進路聞かれてたな。高校生活で人生終わらせようとしてる人間に進路聞くとか笑えるよな。
「はぁー。どうすっかな。」
その日は適当にご飯を食べてお風呂に入って眠りにつこうとしたが、日向に言われた事が頭から離れなかった。なんなんだあいつは。
---やっぱり馬鹿だ。---
「お父さん、ただいま。」
お父さんの写真に向かって話しかけるのが普通になっていた。お父さんは、私が小学生の頃に自殺した。
だから、人がいなくなるのは怖い。
「愛ー!帰ったのー?」
「あれ?お母さん今日遅いんじゃなかったの?」
「予定してた会議が無くなったのよ〜、ご飯まだだからそれまで勉強しなさいよ〜。」
う、今はそんな気分じゃないよ。お母さん。
「はーい。」
返事をしつつ、部屋に戻った私は、わけも分からず泣いた。怖い。原くんが居なくなっちゃったらどうしよう。お父さんの時みたいになったらどうしよう。
「明日……謝らなきゃ。」
「愛ー!ご飯できたよー!」
やばっ、絶対目腫れてる。
「はーい!今行くー!」
ドタドタと階段を降り、リビングに行き食卓テーブルに座る。
「あれ?愛、目腫れてるけど、泣いたの?どうした?」
「あー、映画見てて感動した」
私はそう言って笑った
「あら、勉強するんじゃなかったの?」
あ、やばい、逆に墓穴掘った。
「いや、ちゃんとやってるよ!」
「そう、それなら良いけど、映画面白かったなら今度お母さんも一緒に見たいなー」
「うん、今度一緒に見ようね」
今日の晩ご飯は私の好きなグラタンだった。
原くんは何を食べたのかな?ちゃんと食べてるかな。
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