文庫官篠原友美の奔走

奏條ハレカズ

第1話 前文

 皇国において公族とは、二千年の前より朝廷に仕える七七の家を指す。 

「臣家、篠原の第二女子、篠原友美。貴殿を久城家御文庫管理官くしろけおぶんこかんりかんに任ず」

 皇国中部、永山えいざんの麓は祿穣ろくじょうの街にある久城の屋敷。その最奥にて、公族の一人である久城公、久城祿穣守宗徳くしろろくじょうのかみむねのりは厳かに告げた。

「大命、謹んで拝受いたします」

 張り詰めた空気のなか、友美は精一杯自然に聴こえるように言葉を紡いだ。

 安済あんざい二四年の晩秋、ひどく冷え込む日であった。


 久城の屋敷の一角に建つ古蔵。そこに所蔵されている、歴史的、文化的価値の計り知れない古書や史料。旧きを納め、新しきへと繋ぐ。

 人々はその場所をこう呼んだ。久城御文庫と。

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