玉虫色の慕情
トウヤ・ウナム
Folge1「好奇心、地球に及ぶ」
「ねぇねぇ、お父さん。」
「どうしたんだい?」
「お父さんとお母さんはどうして一緒に暮らしているの?」
「それはね、【愛】だよ。お互いがお互いの事を思い慕ったんだ。」
「へぇー!愛かー!」
幼い頃、お父さんにそんな事を聞いた自分は、愛と言う物に俄然興味が湧いていた。然し、自分の住む惑星には愛に関してみんな無頓着で、断片的な事しか分からなかった。他に出来る事も無かった自分はモヤモヤしていた。
「もー!愛って何なのよ!」
数年が経ち、自分もかなり成長して、年頃の娘と言われ出した頃、沢山の花が咲き乱れる自分のお気に入りの丘でウトウトしていた時、お父さんが満面の笑みを浮かべ、息を上がらせながらもの凄い勢いで走ってきた。
「おーい!リーベ!」
「どうしたの、お父さん。もの凄く疲れてそうだけど。」
すると、お父さんは少し間を置いてから嬉しそうに話した。
「遂に手に入ったんだ!地球へ向かう為のチケットが!」
「何?それ。」
「このチケットを使えば、地球と言う惑星に行けるんだ!」
「地球って?」
初めて聞く場所の名前に自分はキョトンとした。
「この星に行けば、恋について学べるかもしれないぞ!」
「えっ!そうなの!」
嬉しすぎて思わず自分は叫んでしまった。辺りを走り回り、お父さんの目の前に来た時に、足を滑らせて転けてしまった。少し泥のついた顔を上げて、自分はお父さんの方を見てこう言った。
「自分、地球に行きたい!」
お父さんは何も言わずにただゆっくりと首を縦に振った。
「なら、これを常に首に巻いておきなさい。これはどんな言語でも自動で翻訳して異星人でもコミュニケーションをとれる。向こうで何があっても説明は出来るだろう。」
「うん、ありがとうお父さん!」
自分は急いで地球へ向かう用意をした。最低限地球で生活できる程の用意はして、もう夜は遅かったのでその日はそのまま寝た。
次の日の朝、自分は張り切って起きた。いつも朝に弱い自分は、目覚ましをいつもの5倍置いていたのですぐに起きる事が出来た。急いで階段を降りようとしたら、勢い余って下の階まで落ちてしまった。
「イテテテ・・・。おはよー!お父さん!お母さん!」
「おはよう!朝から元気だなー!」
「おはよう!怪我して行けなかったとかは辞めてねー!」
「アハハ・・・。」
朝ごはんを食べてから、身じたく、そしてカバンを持ってお父さんと家を出た。
「じゃあ少し送って来るよ。」
「お母さん、行ってきます!」
「頑張ってね!リーベ!」
その後、お父さんに発進所へ送ってもらい、そこでお父さんに見送って貰った。
「それじゃあ、行ってきます。」
「また帰ってくる時は連絡しろよ!」
「はい!分かってますよー!」
お父さんに手を振り返しながら、改札を通りホームへ向かった。
「頑張って来いよ・・・。あれ、何かいい忘れてた気がするな・・・。」
乗り場へ着いたらキッチリとした服に身を包んだ男性が自分の所へとやって来た。目の前まで来ると、男性は自分をある所へ案内した。
「あなたはこちらへどうぞ。リーベ様。事情はお父様から聞いております。」
「あ、はい。」
すると、乗り物では無く、薄平べったい青い円形の板の様な物が置かれた宇宙空間の様な部屋へ着いた。
「ここに立ってください。この装置を使えば、地球まで一瞬で着くことが出来ます。」
「わ、分かりました・・・。」
「それでは、スイッチオン!」
男性がスイッチを押すと、青い板が光だし、空気が渦を巻いて、身体が宙を浮く様な感覚に包まれた。気付くと目の前が真っ暗になっていて、男性の「いってらっしゃい」の声が徐々に小さくなって聞こえている。
次に目の前が明るくなった時には、自分は自然豊かな星に一人で立っていた。周りを見たら、ピンク色の可愛い花を咲かせた大きな木があり、丈夫そうな乗り物も走っている。突如目の前に現れたからなのか、周りの人達は少し驚いた様な顔をしていた。
「そうだ、翻訳できるらしい装置を首に着けないと。」
その装置はプラスチック製の首輪みたいで、着けたらすぐに自分の首にフィットした。
「あー、あー。」
自分にはいつもの様に聞こえる様だ。すると、スーツに見を包んだ女性に話しかけられた。
「もしかして、『
「こ、木春愛?自分、リーベって名前なんですけど・・・。」
「その鞄の中、少し見てみて下さい。」
そう言われたので仕方無く鞄の中を見てみたら、一枚のメモ紙が入っていました。
『親愛なる娘が地球で過ごすかもしれない事を見越して、予め通う学校と住む家を用意してあります。学校は、[
(我が父親の圧倒的用意周到さ・・・!)
父の用意周到さに感服しながらも、色々用意してくれてた事に物凄く感謝した。
「本当でした!」
「ですよね!こちらへどうぞ!」
女性に連れられてやってきたのはメモにも書いていた九蘭村高校だった。
「ここが・・・。」
「もう入学手続きはしてありますので、ご心配無く!」
中に入ると、鏡の様に光が照り返すほどピカピカな廊下、照明は優しく室内を照らし、風に揺れるカーテンはまるでドレスの様に綺麗だった。
「ここの教室で授業を受けてもらいます!」
「はい!」
この学校で日々学び、自分はいつか必ず「恋」というもの、「愛」というものを見つけると改めて心に誓った。
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