第5話 初めての……?

 映画を見た後は、ハンバーガー食べて、カラオケ行って、ファミレスでメシ食って、と暗くなるまで遊んだ。


 恭との初めてのデートは、なんていうかめちゃくちゃ楽しかった。


 頭良いし顔良いし、俺とはスキルが全く違うのに、全然気取らないし気さくだし、素直だし、恭っていいやつなんだ。こんなに気が合って一緒にいて楽しいんだったら、もっと早く恭と友だちになっておけば良かったな。


「恭はあっちじゃないの?」


 楽しすぎて時間も忘れて遊んでしまったけど、さすがに明日も学校だから帰ろうとなったのに、いつまでも恭がついてくる。恭の家は、こっちじゃないよな?


「家まで送るよ」

「いいよ別に。女子じゃないし、送ってもらわなくても一人で帰れる」

 

 心配してくれてるのか?

 もう夜だからだいぶ暗いけど、女子よりも痴漢やひったくりに遭う確率も少ないだろうし、明日もバスケ部の朝練がある恭を付き合わせるのも申し訳ない。


「そうじゃなくて、もう少し一緒にいたいなって」


 ……!! 

 はっきり断ったはずなのに、予想外の返しにズキュンときた。ちょっと照れたような恭の顔がくっそ可愛い。可愛いしかっこいいし、何なの?


「そ、そう……。じゃ、今日は送ってもらうけど、次は俺がお前の家まで送る」

「ほんと? いいの? 良典も俺と一緒にいたいって思ってくれてるんだ?」

「そりゃ……まあ……思うだろ……」


 分かりやすいぐらいに笑顔になった恭に戸惑って、どもってしまった。


 別に俺はそういう意味で言ったわけじゃ……、もっと一緒にいたいって言うのは、恭と一緒にいて楽しいからで、別にそういう……、あれ? 何も違わないか? ああああああ!! でも、恭が言ってる意味とは何か違う気がする!


 一人で葛藤しているうちに、俺の家についてしまった。駅前からそこまで距離ないからな。


「今日はありがとう、楽しかった。また明日、学校でな」


 助かったようなもう少し恭と一緒にいたかったような複雑な気持ちになったけど、着いてしまったものは仕方ない。またなと恭に別れを告げたけど、恭はその場に立ちすくんだまま帰ろうとはしない。


 どうかしたのか恭に声をかけようとした瞬間、恭が一気に俺との距離をつめ、身をかがめてきた。何が起きてるのか理解する前に、俺の唇に恭の唇が一瞬だけくっつく。


「……また明日!」


 唇を離した恭は、俺と目を合わせることがないまま、猛ダッシュで帰ってしまった。呆然と去っていく恭の背中を眺めていたけど、恭が見えなくなって、ようやく何が起こったのか理解する。


 い、いま、キ、キス〜〜〜!?!?


 ◇


 キスされた。恭とキス、してしまった……。


 家に入ってシャワーを浴びた後もまだ余韻が消えず、俺は一人ベッドでのたうち回っていた。


 もう明日学校なのにどうすんだよ。どんな顔であいつと顔合わせればいいんだよ。考えれば考えるほどテンパってきて、マジで収拾がつかない。


 ピロリン♪


 ベッドでウダウダしていると、スマホが鳴る。もしかして恭、か……?

 なんとなく恭からの予感がしてたけど、スマホを見ると、やっぱり恭で。


『今日はすっごく楽しかった』


 ニコニコマークのスタンプと共に送られてきた恭からのメッセージは、キスのことには触れられていなかった。それにほっとしたのも束の間、すぐにまた恭からメッセージが送られてくる。


『さっきはいきなりキスしちゃったけど、嫌じゃなかった?』


 こ、これは……! どう返すべきか……。


 どう返すか悩んでいると、恭から『ごめんね』と頭を下げている犬のスタンプが送られてきた。ペコリと頭を下げている犬を見ているうちに、なんとなく恭が不安そうな表情をしている気がしてきて、即座に俺はメッセージを返信する。


『いきなりだったから驚きはしたけど、嫌じゃなかったよ』


 何が起きたのか分からなかったけど、実際嫌ではなかった……と思う。


『ほんと? よかったぁ。初めてだったから、超緊張したけど、思いきってしてみてよかった』


 恭からメッセージがくるのとほぼ同時に、投げキッスをしているスタンプが送られてくる。


『今日デートして、もっと良典のこと好きになったよ。早く会いたいし、またキスしたい』


 そして、とどめがこれ。だ、か、ら、さぁ〜! 何で思ったことそんなに直球で言えるかなぁ! ったく、もう……ダメだ、こんなん好きになるなって言う方が無理。


 ほとんど間を開けず、『好き!』とハートマークをいっぱい抱えた犬のスタンプが送られてきて、ますます俺を悶えさせる。ひとしきり悶えた後、恭にメッセージを返信する。


『俺も早くお前に会いたい』

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