幼女好きの異世界幸求記

闇統王様

序章

第1話 はじまり

 それは出来心だった。


 その日は珍しくも大抵の物は通販で済ませる私が、コンビニの限定スイーツを入手する為に外出していた。


 通勤にも使っている、コンビニへと向かうその道には、寂れた公園があった。


 かつてはニュータウンと呼ばれていた団地の、その寂れた公園の前を通る都度、幼女が遊んではいないかと眺めては、その度に人っ子ひとり居ないことに落胆する日々を送っていた。


 だがその日、その寂れた公園に……いたのだ、幼女が。




 その幼女は絶世のロシア美幼女……という訳では勿論無く。それ程特徴の無い平凡な容姿だったと思う。


 ただ、公園で一人ぽつんと、錆び付いたシーソーを見る瞳がとても寂しげで、一目見た瞬間愛しさが抑えきれなくなったのだ。


 それまでは、幼女を遠くから自然を装って観ていたり、動画や二次元物を鑑賞することで充分満足していたんだ。


 同性だからといって下手に接触したら事案になりかねない。今はそういう世の中だ。


 だからそれは本当に出来心だったのだろう。そう、声を掛けてしまったのだ、その幼女に。


「お姉ちゃんと遊ぶ?」


「ひゃっ!」


 びくっとして可愛らしい声を上げて飛び退きながら振り返る幼女。私の接近に気付かず、突然背後から声を掛けられたから驚いたのだろう。


 その寂しげだった瞳は驚愕に見開かれ、追って怯えと警戒の色を強めていく。


「あ、いや、その、怪しい……あ~怪しいだろうけど、そんなつもりは無くてね? えっと、その、あなたが……その、寂しそうだったから、一緒に遊んだら楽しくなってくれるかなって?」


 ははは、やっちまったなこりゃ。怪しさ大爆発ですよ。事案確定、即防犯ブザーかな? なんだ今の、最後疑問形だし。


「……いいの?」


「えっと、何卒なにとぞ防犯ブザーだけは勘弁頂けないかと居無くなれと言われれば即居なくなり……へ?」


 目を閉じつつ両手を合わせて、頭の前に掲げながらのご勘弁をポーズをとりながら弁解しつつも、先程耳に届いた音声を脳内で再生してみる……


『……いいの?』


……ん?


「いなくなっちゃうの?」


 その寂しげな声音こわねに、恐る恐る目を開くと……そこには八の字に眉を下げた困り眉に潤んだ瞳のコンボを決めた幼女がいた。


「いいえ! 居なくなりません! 遊びましょう!」


 その幼女を見た私は一気にテンション振り切って、そう叫んでいた。


「うん!」


 と満面の笑みで答える幼女……いや、天使がそこにいた!


 そこからはテンションのおもむくまま幼女と遊んだ。幼女があれをしたいと言えばあれをし、これがしたいと言えばこれをした。


 そして気が付けば辺りは夕闇に包まれようとしていた。これは流石に幼女は帰宅の時間だね。名残惜しいが……暗くなる前に帰してあげないとね。


「そろそろ帰ろうか?」


 私が幼女にそう言うと、


「やー!」


 と言いながら私に抱き着いてくる幼女!! 今まで節度を保って最低限の触れ合いしかしてなかったのに!! これはOKってことですよね!? じゃあ遠慮無く私からもと、ぎゅっとした瞬間——


 バーーーーーン!!!!!


 ——と背後で爆音がしたと思ったら背中に激痛が走った。

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