魔女と世界の隠し事

空薇

プロローグ

「魔女、気は変わらない?」


「変わったら、困るでしょう?」


「困らないよ。変わらない方が困る」


「そう。でも、私は変わった方が困るのよ」


 小さなお部屋に、魔女がひとりと、少女がひとり。

 ふたりはいつも変わらぬ会話を繰り返す。カップに注がれた紅茶一杯がタイムリミット。飲み終われば、少女は帰り魔女は眠る。

 こんな日々を、一年は繰り返して、魔女は少女が諦めるのを、少女は魔女が諦めるのを待っている。

 ふたりの関係は、少々言葉じゃ表しにくい。

 義母ははと娘、魔女と王女、秘密を隠すものと、秘密を暴くもの。このどれもが正しくて、どれもが間違っている。



 これは、そんなふたりの悲しい優しい物語。

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